新たな勇者編

異世界からの来訪者

「ここ····は?」


俺の名はあかつきかける。さっきまで友達と遊んでいた、ただの高校生だ。俺は今凄い暗い感じの部屋にいた。そして俺の目の前には怪しいローブを羽織った人間が数人いた。


「おぉ!せ、成功だ!」


その人たちは大声を上げて喜んでいた。


「あの!いったいここは?」


俺は恐怖を押し退けて聞いてみる。すると返事はすぐに帰ってきた。


「ここは、ラッシュ····ラッシュ王国だ」

「え?」


つまり俺は世間でいう、異世界転移をしてしまったのか?俺はスマホを確認するが圏外だった。


「まぁいいや····それで俺を呼んだのはなぜだ?」

「この国は魔王によって滅ぼされかけている····」

「何もしなかったのか?」


魔王が攻めてきたのなら王国側が何かをするはずだが····


「勇者様6人が魔王討伐に行かれましたが····未だ帰ってはおりません····」

「ほう····」

「なので····今回はその魔王を倒すためにあなたを呼びました····」


俺はただの高校生だぞ?何かできるとは思えないが····


「俺には魔王を倒すための力があるのか?」

「その右手が証拠です····」

「右手?」


俺は右手を見ると鳥のような形をした、タトゥーの様なものが刻まれていた。


「それは勇者の証····魔王を倒せる唯一の力····」

「これが····ねぇ····」


つまり俺は魔王を倒さなくてはいけない「呪い」のようなものを掛けられたというわけだ。

俺は一つ気になったことがあったので質問してみることにした。


「そういえば····他の勇者が魔王の城に行ってからどれくらい時間が経っている?」

「だいたい····1ヶ月程かと····」

「もう死んでるんじゃないか?」

「いいえ····まだ死んではいないかと····」

「なぜだ?」


魔王の城に行って1ヶ月帰ってこなかったってことはもう死んでいるに違いないのに····


「彼らは····不死なのです····」

「何?」


不死だって····そんな事が有り得るのか?もしそうだとすれば俺も不死という事になるんだが?


「とにかく今は····聖剣を手に入れてもらわねば····」

「聖剣?そんな物があるのか····」

「はい····今ある7本の聖剣を除いて、もう1本隠された聖剣があるのです····」

「隠された?」

「はい····その聖剣はあまりに強すぎて····封印されてしまったのです····」


封印される程強い聖剣····か。それさえあれば魔王を倒せると····その人はそう踏んでいるんだな。


「それで、その聖剣とやらは何処にあるんだ?」

「この国周辺の洞窟のどれかにあると思うのですが····残念ですが····見つかっておりません」

「····仕方がない····俺が自分の目で確かめてくるよ」


俺は剣を貰って腰に提げる。


「どうか····お気を付けて····」

「分かった!」


俺は部屋から出る。すると眩しい光が俺の目に入って来た····


「眩しい!あの部屋めちゃめちゃ暗かったからな····」


目が光に慣れてくると衝撃的な光景を目の当たりにした。そこには····人が全くいなかったのだ。


「ここは確か王国だったはずだが····」


俺の前には大きな城、そして後ろにも大きな城があった。しかし、前の城からは怪しいもやが出ていた。


「あれが魔王の城····か」


俺は、魔王の城とは反対方向の王国の門から平原に出た。その時、不思議な声が聞こえた。女性の声だ。


「新た····者····我····聖····」

「俺を····呼んでいる?」


俺は声の聞こえる方向に向かうと、光る石を見つけた。


「この石から声が?」


その石に触れると他の石と合体して剣の形を成した。


「新たなる勇者よ····我は主なき聖剣····」

「剣が····喋っている?」


俺はその剣を手に取る。すると剣が俺の中に吸い込まれて行った。


「何だこれ!?」


次の瞬間、右手の勇者の証が光り始めた。それと同時に俺の頭に単語が思い浮かんだ。


「『聖剣召喚』」


そう俺が言うと右手に聖剣が現れた。そして俺が聖剣を手放すと聖剣は俺の体に戻って行った。


「これから宜しくな!」

「はい····」


それ以降、聖剣は声を発しなくなった。


「さてと····洞窟に向かうか····」


この辺りの洞窟はひとつしかなかった。この洞窟をくまなく探せばあるんじゃないか?なんで見つからなかったんだろう····


「よし!入ろう!」


こうして俺は洞窟探検に出た。

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