魔王の魂
「結局····全然、探索できなかったな~」
「そうですね····でも!不思議な体験が出来たのでよかったです!」
(本当に不思議だった····まさか、あのダンジョンのダンジョンマスターと話をすることになるなんて····)
「あの~、何か忘れてるような気がする····です」
「あ····防具を作るための素材!忘れてた····どうしよう」
「ゴォォォォ!」
その瞬間、龍の咆哮が辺り一帯に響く。
「今のは!」
「きっと龍の鳴き声ですわね!」
「それじゃあ、一狩行きますか!」
咆哮が聞こえた方に向かうと、全身が銀色の龍がいた。倒しに行こうとするが、アリスに止められる。
「あれは、ダメです!」
「どうして?」
「あれは····」
「あれは?」
「絶対ダメです!」
「えぇ····絶対とか言われると····倒したくなっちゃうじゃん····」
好奇心だけで龍を倒そうとする俺をみんなが止めに入る。
「あれは銀龍····上から2番目のランクの龍ですよ!」
「あれは、ラッシュ王国の最終兵器で、かすり傷も付けられなかった相手なのですよ!」
「もしそうならラッシュ王国が危ない!もし、俺が本気を出さなければならなくなったら、アリスたちは逃げろ····でも!俺が大丈夫だと思ったら、そう言う!だから····」
俺はカーマに必死に訴えた。
そしてカーマは俺の思いに答えてくれた。
「わかったのですよ····でも、無茶はしない欲しいのですよ?」
銀龍の前に立った俺は聖剣を召喚し構える。
すると銀龍は俺の持つ聖剣の聖の力に反応し、こちらを向いた。
「いくぞ!」
まずは、銀龍の懐に入り込み、聖剣を突き刺そうとする。しかし、その一撃は銀龍の体に
「今の手応えは····」
聖剣は銀龍の鱗に弾かれたのではない。何か、別のものに弾かれたのだ。
「そういうことか!」
『聖剣解放』
俺がそう唱えると聖剣の光が増した。そして、再度龍に聖剣を振り下ろす。
「はぁぁ!」
すると、銀龍の体は真っ二つになった。銀龍は自らに防御魔法を張っていたのだ。だから、その魔法を貫通させることができれば簡単に倒せる。しかし俺はその術を持っておらず。結果的に力で押してしまうこととなった。
「ふぅ··ようやく····終わった··か····」
俺は魔力の使いすぎで倒れる。そしてすぐにアリスたちが駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「あぁ····少し····魔力を使い過ぎた····ようだ··」
「ゴォォォォ!」
「あれ····は!そん····な··」
俺たちの目の前に咆哮とともに現れたのは黒龍だった。
「私たちじゃ、黒龍は倒せない····どう····すれば?」
「考えてても仕方ない!戦うしかありませんわよ!」
「ダメ····だ··逃げろ····」
俺は遠退いていく意識の中で叫び続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お前にはなにもできない」
少し大人っぽい男の声が聞こえる。
「誰だ!お前は!」
「お前は弱い。だから何も守れない」
「そんなことはとっくに理解している!」
「我はお前に力を与えることができる····しかし、今のお前ではその力を制御することはできない····」
「なぜだ!」
「その力は魔の力····人間には過ぎた代物だ」
「俺は力が欲しいんだ!」
「たとえ····人でなくなってもか?」
「それでも良い!」
「良いだろう!お前に魔王の魂を与える!」
その瞬間、俺の右手に王の証が刻まれる。
「なんだ!この膨大な魔力は!こんなの····」
「慣れるには少し時間が掛かるだろう····だが!お前には勇者として、魔に抗える力がある...強き心を持って叫べ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『
そう唱えると、俺の体に激痛が走る。
「こんな痛みなんか!どうってことはない!」
少しすると、痛みが引いていく。
「アリスたち!大丈夫か!」
「仁····体はもう大丈夫なのです?」
「あぁ!もう大丈夫だよ····あとは、任せろ!」
俺は、黒龍に向かって走り出す。
『聖剣召喚』
俺は黒龍に、聖剣を振り下ろす。すると黒龍はそれを避け、尻尾で俺に攻撃を仕掛けてくる。俺はそれを避けきることができなかったが、かすり傷程度で済んだ。
「コイツ····ただの黒龍じゃないな!」
魔物の中にも、いくつもの戦いに勝ち続けたものがいる。それをみんなはこう呼ぶ。
「歴戦種!」
歴戦種は、通常個体とは別の魔物として扱われる。その危険度は通常の数倍にもなるという。
この黒竜には傷が以上に多い。それが幾千もの戦いを物語っている。
「だが!銀龍に比べれば!」
『聖剣解放』
銀龍との戦いの時のように聖剣の力を解放する。
「ふっ!」
聖剣を振り下ろすと光の斬撃が飛ぶ。
そして、その斬撃は歴戦種の黒龍の首を切り裂こうとする。
「ゴォォォォ!」
黒龍は咆哮を放つと、斬撃を右に避ける。
その瞬間、光の斬撃は2つに分かれる。
「お前が避けることは分かっていた····ならば、どちらに避けてもいいように、左右両方に斬撃を飛ばせば良い」
黒龍は分かれた斬撃を避けきることができず、焦る。
「グッ!ゴォォ····」
「チェックメイトだ!」
黒龍の首は光の斬撃によって切り裂かれた。そして、そこから大量の血が溢れ出る。
『
俺はアストラル・バーストを解除する。先程のように、魔力切れで倒れることはなかったが····
アストラル・バーストは、無理矢理魔力上限を引き上げる。
体が慣れていないため少し体が痛い。
「よし!それじゃあみんなで龍の素材をちゃっちゃと剥ぎ取ってしまおうか!····って」
俺はアリスたちを見る。しかし、全員が疲れ果てて眠ってしまっている。
「仕方ない····俺ひとりで素材を剥ぎ取ろう」
俺は、「はぁ····」と溜め息を吐いて龍の鱗やら、牙やらの採取を進める。
そして、採取を終え、少し経つと3人が眠りから目を覚ます。
「あれ?黒龍はどこに行ったんですの?」
「俺が倒したよ」
「でも····死骸が見当たらない····です?」
「俺がバラバラにしたからな」
「私、どのくらい寝てたのですか?」
「だいたい、30分くらいかな?」
「あれ?1人足りなくない?」
俺はまだ1人、夢から戻ってきてないやつがいることに気付いた。そして俺は点呼をとる事にした。
まず、カーマの名前を呼ぶ。
「えーっと····カーマでしょ?」
「はい!起きてるのです!」
次にリーのことを呼ぶ。
「で、リーでしょ?」
「起きて····ます」
そして、マナ。
「マナは起きてるよな?」
「もちろんですわよ」
最後に残ったのは····
「アリスか····」
アリスに声を掛けようとするが、とても気持ちよさそうに寝ていたので、起きるまで待つことにした。
「もう待てれ····ない」
俺たちは1時間もの間ずっと待ったが、アリスが起きることは無かった。
待っている間に体の痛みが増してきた俺は、その場に倒れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます