第7話『空の話』

 CAは誰も皆、赤い制服にブロンドの髪がきれいだった。

 ウイーンへは成田から直行便で約12時間。

 僕は震える彼女の手を引いてブリッジを渡った。


「大丈夫?」

「大丈夫。ごめんね、私、飛行機乗るの怖いくせに『行くなら海外』なんて」

「いいよ別に」

 こんな時、僕は口下手な自分が嫌になる。

 怯えているパートナーを上手く励ますこともできない。


 もやもやしたまま、座席についてすぐだった。

「ねえ、それって?」

 彼女が窓辺を指差した。

 赤いハート型の紙が一枚。メッセージカードだ。


 それと気付いたCAの誰かが書いてくれたものらしい。

 たどたどしい平仮名で『すてきなはねむーんを!』とあった。

「わあ! 嬉しい!」

 彼女がようやく笑顔を見せた。僕も気持ちが晴れるのを感じた。


 ありがたい、暖かい心配りに支えられて、僕たちはこれから空に飛び立つ。

 思い出に残る素晴らしい旅にしよう。

 そう言葉にする代り、繋いだままの彼女の手に、僕はそっと力をこめた。

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