ここから前へ進みたい

星海空太

高校1年

第1話 高校1年秋

やっと秋らしい季節がやってきた。

去年は一気に冬のような気候だったが今年は例年通りの秋だった。


今は午後7時、辺りはすでに暗くなっている。

10月の終わりは少し肌寒く僕は首をすくめていた。

街頭に照らされた道を一人で歩く。

何もしたくない。人と関わりたくない。そんな気分が僕を襲っている。


僕が今歩いているのはレンガが敷かれている大通り。

この道は落ち着いた雰囲気があり、僕がこの街で一番好きな場所だ。

今年の四月から高校の制服を着て毎日この道を歩いている。

高校の制服はブレザーで中学の頃の学ランと比べるとおしゃれに感じる。

実は今歩いているこの道は正式な通学路ではない。

通学路は細くて狭い道だが、こちらは少し遠回りだが広くて歩きやすい道だ。


そして何より僕の学校の生徒でこの道を利用する人が少ない。

そのため、ゆっくりと一人の時間を堪能することができる。

僕はさっきまで学校の図書室で本を読んでいた。

でも、お腹がすいたので僕は家へ帰ることにした。


ふと、上に目をやるともみじやイチョウの葉が色づいてきていることに気づいた。

綺麗だなぁ…そんなことを考えていると、いつの間にか駅に着いた。


駅は多くの人が行き来していた。

ちょうど帰宅時間で電車を利用する人が多いのだ。

僕と同じ高校生や大学生、社会人たちが駅を忙しく歩いている。


定期券を取り出しいつものように改札へ向かう。

毎日毎日、このマンネリ化した生活を繰り返している。


高校に入学して半年、

僕が想像していた華やかな高校生活とは真逆の生活を送っている。

僕は電車に揺られ家路へ向かった。


「ただいま。疲れたー腹減った。美代みよなんかない~?」


学校から家に帰るといつも、どっと疲れてしまう。


妹の美代に声をかけるが返事がない。


「美代さーん」


僕は美代を見つめた。美代と目が合った。


「は?腹減ったとか自分で何か買ってこいよ。私はもう部活で疲れたんですー。」


そう言って美代は階段を勢いよく駆け上がり自分の部屋に閉じこもった。

何か良いことでもあったんだろうか。何となくいつもより機嫌がいい気がする。

僕はリビングのソファーに倒れこみ、ぼーっとしていた。

なんで生きてんだろ。なんて壮大な考え事をしてたらいつのまにか寝てしまった。


少し寝て目が覚めた。いい匂いがする…夕飯だ。


「母さん、おかえり。帰ってきてたんだ。」


僕は眠い目をこすりながら、母さんに話しかけた。


「とっくに帰ってきてるよ。それより晴斗はると!制服かけとかないと皺になっちゃうでしょ!眠いのはわかるけど帰ってきたらちゃんと着替えないと!」


母さんは僕と話しながらも手際よく料理を作っている。


「あ、そうだった…、制服着たまま寝てた。着替えてこよ…」


「じゃあ晴斗、美代も二階から呼んできて!もう夕飯できるから」


「おっけー」


僕は部屋着に着替え美代を呼んだ。


「美代~。ご飯だってー」


美代はスマホを見てにやにやしている。


「ちょ、勝手に入ってくんな。分かったから先行ってて。」


「はぁー生意気だな。」


とりあえず先にリビングへ戻った。


美代と母さんと僕の3人で夕飯を食べ始めた。


「あれ、武斗たけとと父さんは?」


僕は夕飯を食べながら質問した。


「武斗はサークルの子たちと食べてくるって。父さんは飲み会。」


母さんは少し不満そうに、ご飯をもぐもぐ口に含んだまま答えた。


「ふーん」


美代は片手にスマホを持ちながら興味なさげに返事する。


「ちょっと、美代!食べるときはスマホしないでって、いつも言ってるでしょ。

 食べるとき、食べちゃって!母さん片付けるの遅くなっちゃうから!」


美代は少しむっとしてスマホを机に置き黙々と食べ始めた。


僕はスマホは最低限の連絡手段とゲームとか動画見るとかの暇つぶしに使っている。


だけど美代はどうやらネットに絵を投稿しているらしい。

それに知らない人ともメッセージのやり取りをしている。

兄として、ちょっと心配ではあるけど今時はそれが普通らしい。


美代は美術部に所属していて中学二年生。

最近中二病を発症したらしく色々と心配だ。


小さい頃はもっとかわいかったのにな…


美代はほとんど家にいる。

そういう僕も最近はほとんど家にいるようなもんだけど。


僕は高校一年生。部活は園芸部に所属している。

部活は週1だし植物を見守るのが好きだから苦ではない。


夕飯を食べ終えると同時に父さんが帰ってきた。


「ただいま~!ほら、タルト買ってきたぞー」


父さんは酔っぱらているようで顔が真っ赤だ。


「お帰りー!え、おいしそう!じゃあ、食べちゃお!」


さっきまで父さんの飲み会に対して不機嫌だった母さんがお土産のタルトを見たとたんにあっという間に機嫌が良くなった。

母さんが机の上に皿を並べタルトを取り出した。

うちは5人家族だけどタルトは4個しかない。


「父さんはたくさん食べてきたからいらないよ!みんなで食べちゃって!」


僕たちは遠慮なくタルトを食べた。


武斗はまだ帰ってきていなかったので武斗の分のタルトをラップで包んで冷蔵庫にしまった。


僕はリビングでテレビを観てからお風呂へ入った。


時間が経つのは早い。もうあっという間に寝る時間になった。

母さんと父さんと美代は先に寝てしまっていて僕は一人でテレビを観ていた。

すると武斗が帰ってきた。


「ふー疲れたー。はぁー」


そう言ってソファーに倒れこんだ。武斗は大学一年生。

サッカーサークルに入っていて結構遅く帰ってくる。僕の兄貴だ。


「おかえり武斗。あ、父さんがタルト買ってきたから冷蔵庫に入ってるよ。

 僕はもう寝るよ。おやすみー」


そう言って二階へ行こうとすると武斗は僕の肩をがしっと掴んだ。


「いや、まって。お茶、お茶ちょうだい!あとタルトもってきてー」


武斗は僕を見つめる。ああ、僕ってなんて優しい弟なんだろう。


「しょうがねーなー。」


そう言って僕はお茶とタルトを武人に持っていった。


「ありがとう!さすが、俺の弟!」


そう言って武人はタルトを頬張った。


そして僕は二階の自分の部屋に閉じこもった。

はあ、やっと一週間が終わった。今日は金曜日。明日は学校がない。

土曜日も授業がある高校もあるけど僕の学校はそのぶん平日に長く授業をしているため土日は休みだ。


僕はとりあえず今日は夜更かしをすることに決めた。

好きなアーティストの歌を聴いてから寝るんだ。


僕はヘッドフォンをして歌を聴く。ああ、いいな。かっこいいな。


僕もこんな風に歌えたら、どんなにいいだろう。


そんなことを考えるうちに眠くなり僕は布団に飛び込み眠っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る