嘘のような本当の話

@nn2778

第1話

これは会社の後輩のJ君から聞いた、嘘のような本当の話である。


多少記憶のあいまいな所があるが、話の流れは概ね次のようなものであった。


その日J君はひどく酔っ払っていた。


会社のサッカーチームに所属しているJ君は、幹事となってサッカーチームの忘年会


を企画、調整していた。しかし当日、本人は仕事の都合で忘年会に遅刻して


しまい、忘年会の半ばごろに到着して、周りの盛り上がりに合わせ、ハイペースで


お酒を飲んでいった。


お店をでる頃にはすでに出来上がっていたJ君であったが、その後、二次会、三次会


と場所を変えてお酒を飲んでいった。その記憶も、後日チームメイトからの話を聞


きそういえばと思い出しながら話であった。



J君はその日ひどく酔っ払っていた。



翌朝、どうやって帰ったかも分からないままJ君は自宅のマンションで眼をさまし


た。隣を見るとそこに見慣れない人が眠っている。


はっきりと思い出せないが、サッカーの後輩(I君としよう)と最後まで


飲んでいて、I君の終電がなくなったから仕方なく家に泊めてあげたような


気がする。


こんな顔だったかなとも思ったが、同じ部署でもなく、サッカーでたまにしか会わ


ない後輩であり、まぁ寝起きの顔なんて違って見えるからそんなもんだろうとJ君は


思っていたそうだ。


I君が眼をさまし声をかけてきた。「おはようございます」。J君は「お~、おはよ


う、気分はどうや?」「だるいっすねー」と先輩、後輩の会話をしていたそうだ。


I君は帰る準備をしているが、どうやら携帯が見つからない。しばらく探していたが


諦めたらしく、「すみません、俺の携帯に電話してもらっていいですか?」と声を


かけた。


J君は、幹事をしていたので、携帯に全員のメモリーが入っている。掛けると呼び出


し音はなっているが周りから聞こえている様子は無い、I君も耳をそばだてて自分の


携帯が鳴るのを待っている。


どこかに落としたか?と思った、、、、が!!「はい、もしもしIです


けど」?? I君はまだ耳をそばだてている。「お前なんででるとや?」


「え、なに言ってるんですか?」「お前が携帯無くしたから今かけたん


だけどよ???ちょっと待って、後で掛けなおす」、、、


「お前誰よ!!!」


話を整理すると、その侵入者(H君としよう)も昨夜ひどく酔っ払っていて、朝起


きた時、知らない所で寝ていて驚いたそうだ。しかし、普通の会話が始まった


ため、よく覚えてないが、酔った勢いで仲良くなって泊めてもらったのだろうと判


断したそうだ。


話を聞くとどうやら家は近所らしい。携帯は見つからずしかも財布までないとの


事。とりあえず、二人は携帯と財布を捜しながら、H君の家まで歩いていったが結局


見つからず、見つかったらお互い連絡する、Jさんご迷惑おかけしました、と行って


別れた。


J君が家に帰っている途中、H君からすぐ電話があった。携帯と財布が玄関にあった


そうだ。


どういう事か聞いてみると、H君の母親曰く、いったん家に帰ったH君は、財布と携


帯を玄関に置き、すぐ家を出て行ったそうである。それっきり、連絡のとれなく


なったH君が数時間後にまたひょっこり戻ってきたと言う訳だ。しかも後日後輩のI


君に話をきくと、確かにあの晩、I君はJ君と最後まで飲んでいて、終電がなくなり、


J君の家に泊まったそうである。もちろん、その時は二人しかいなかったと言ってい


る。つまり、朝、始発が出る時間にIくんは家を出て行き、鍵の開いていた


J君の家にH君が忍び込んでいたと、まさにミラクルな展開になっていたのである。


J君は家に入ってきたH君をすごい奴っすね、と言っていたが、いや君も十分にすご


い奴です。


書いていて自分でもありえないと思ってしまうが、これは嘘のような本当の話であ


る。

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