第9話 アニメ化取り消されちゃう!

「『いいことをしているとは思うけど一緒になると苦労しそう』

『人々を救うよりまず自分のことをなんとかしろ』

『人助けとか言う前にやることがあるでしょう』

『加齢臭がとてもキツい』

 といったところが主な投票理由のようですね。

 全国冒険者ギルド調べの調査結果です」


「ぐぬぬ」



 いや、言われるのもしょうがないけどさあ!

 てか最後のはリンかサマンサだろ!あいつらふざけんなよ!



 まあ実際この歳で所帯も持ててないからなあ。

 富も名声もない。権力も人望も家も安定も将来も。

 あかん、心が死んでいく。



 しゃあないだろう。

 富や名声は冒険者ランクに比例するし、冒険者ランクはギルドへの貢献度で決まる。

 貢献度ってのは要はクエスト達成時にギルドに抜かれるマージンのことで、採算度外視で人助けばっかやってた俺のラン クはC止まりだった。



「まあそんなことはいいや。とにかく冒険者として再登録をお願いします」


「ええ。退会時点でCランクでそれから四年経過しているので、規定により、1番下のFランクからの登録となりますがよろしいでしょうか?」


「はい。大丈夫です」



 規定だから仕方ない。

 退会から1年経過するごとに再登録時のランクは一つ下がる。

 現役冒険者が高ランクを維持するにはギルドに貢献し続ける必要 があるので、わざと退会してランク維持するのを防ぐ措置だ。



 俺の場合は最低のFランクからのやり直しだ。

 おっさんのやり直し2周目冒険者ライフって奴だ。


 やり直しというか、追試というか落第というか。

 何のメリットもないね! 過ぎ去った時間は戻らないからね。仕方ないね。


 そうして粛々と登録手続が進んでいく。



「はい。では登録は完了しました。

 申し遅れましたが、私の名前はエイミと申します。

 ハーフエルフの19歳です。今後ともよろしくお願いします」


「ええ、よろしく」


 やっぱりハーフエルフだったのか。年齢までは言わなくていいのに。



「覚えにくければ、『ダンまち』の受付嬢と同じ外見同じ種族で一文字違い、と覚えてください」


「随分なぶっちゃけ方するね君!?」


 何言ってるのかサッパリわからんけどね!?

 大体元ネタもよく覚えてないぜ。大した出番ないやろあれ。



「ところでよろしいのですか?」


「ん、何が?」


「お連れの方がチンピラに絡んで連れ去られてしまったようですが。

『私は超越的美少女だ』『貴様らの年収はいくらだ』『お前の人生、私の2秒』

 などと意味不明の供述を述べている内に激昂した冒険者に路地裏に連れ出されたようです。


 彼らは外見は真面目そうですが中身は性根が腐っています。

 おそらく散々陵辱された上で非合法売春組織に売り飛ばされることでしょう。

 周りの冒険者もギルド職員もそれを知った上で見て見ぬフリをしておりました」



 あのバカ!っていうかロクな奴がいねえなマジで!



 ーーー



 路地裏に駆けつけてみると、ムゥが6人の男に囲まれて羽交い締めにされていた。



 ムゥの様子はというと、心底面倒臭そうな、不貞腐れたような態度でダランと身体中の力を抜いている。


 羽交い締めにしている男に全体重を預けてぶら下がりやがって。

 ちゃんと自分の足で立て。

 一体どういう精神状態なんだよ。



 俺の姿を見付けたムゥは、思い出したようにジタバタと暴れ始めた。



「嫌ぁ!めちゃくちゃにされちゃう!

 エロ同人みたいに!エロ同人みたいに」


「随分余裕がありそうじゃないか」



 何が同人誌だ。

 2次創作が作られる程人気が出るとでも思っているのか。

 って俺もなに言ってるんだ。



「ところで私は特定半島地域の方々の言動に遺憾の意を持っています」


「唐突なヘイトスピーチはやめろ」



 その割には表現が日和っているな。



「嫌ぁ!アニメ化取り消されちゃう!

 あの作品みたいに!あの作品みたいに!」


「超えちゃいけないライン、考えろよ」



 こんな作品がアニメ化されてたまるか。

 てかホントに消されるわ。

 こういうのはちゃんと怒られろと思った。



「なんだテメェは!?邪魔すんのか!?」


 チンピラがいきり立って来る。

 仕方がない。ちょっと俺の実力を見せてやるか。

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