いやその勇者パーティを追放された善人おっさん、実はSSSSSSS級の治癒士兼召喚術師ですから! ~自分でも気づいてない能力で陰の実力者としてやり直し2週目復讐建国スローライフ~

ジュテーム小村

第1話 悪いなぁ、34歳童貞ニートだった俺が、折角異世界転生したんだ

「オメェ臭えんだよ!パーティ追放な!」


「加齢臭が酷すぎるのよね......。本当にサイアク。顔も見たくないわ」


「お前のような役立たずをこれまで面倒見てやっただけで土下座して感謝して欲しいところだな。

もちろん所持金と装備品は没収だ。

最低限の路銀だけは残してやるからありがたく思え」



勇者アレスト、魔導師サマンサ、盗賊リン。

仲間だと思っていた彼らに辛辣 な言葉をぶつけられ、俺こと治癒術士ケビンは激しく動揺した。



「な、なんでだよ!

今まで上手くやってきたじゃないか!」


「はっ!何言ってるんだ!

役立たずの治癒術士が!

そもそも最強のオレ達はほとんどダメージなんか負わないから、お前なんかいらないんだよ!」


「あんたの地味ぃーな召喚術も荷物運びぐらいにしか使えないしね。

あたしが転移魔術を使えるようになったから、いよいよ用済みなのよ」


「何の役にも立たない癖に、一丁前に飯は食う。酒は飲む。作戦に口は出す。

おまけにいかがわしい目で私達を見ているだろう。汚らわしい。

こちらは悪臭による威力業務妨害で処刑してやりたいのを我慢してやっているのだぞ?」



そりゃ人間なんだから飯も食うし酒も飲むさ。

作戦だってイケイケ過ぎるこいつらを諫めるために仕方なくだな。

結局大体俺が言った通りになってたし、責められるのは納得いかない。


いかがわしい目ってなー……。

ほら、盗賊のリンはさ。

その、あんまりにも大き過ぎるから、時々目が行ってしまうのは認める。

仕方ないだろう。男なんだから。不可抗力だよ。



彼らの言い分はこうだった。


勇者アレストの光の加護はパーティメンバーで 按分される。

なので役立たずを飼っていては彼らの加護は4分の3になって しまう。

だから出て行け、と。


くそう。

みんなレベルが低かった頃は、俺の回復魔術のおかげで何度も窮地を脱してたってのに。

俺が召喚したゴブリン達に回復薬や替えの装備を大量 に持ち込ませて、美味い狩場で経験値を稼ぎまくってた時期もあったのに。



まあ、アレストの本音は別だろう。

要は自分のハーレム作りに男は邪魔って ことだ。

こいつらできてるからな。


女達も俺をかばう理由がない。

10代後半の子達には38才の俺は鬱陶しいんだろう。



「わかったよ。

でも、次に戦うポイゾナスヒュドラ戦までは参加させてくれ。

状態異常回復と、傷口を焼く人手がないと危険な相手だから....」


「ウゼェなあ!消えろっつってんだろ!」


「ねえ、こいつもう殺した方がいいんじゃない?」


「名案だな。こんな奴でも多少は経験値になるだろうしな」



恐ろしいことを言い出した連中から、俺は逃げるように離脱した。



別れ際にアレストが、俺にだけ聞こえる声で囁いた。


「悪いなぁ、34歳童貞ニートだった俺が、折角異世界転生したんだ。チーレム無双生活のためにゃ、お前みたいのは邪魔なんだよ」


言葉の意味はほとんどわからなかったが、なんとなく最低の事を言っていることだけは伝わった。

今まで、若いからと目を瞑ってきた言動が多々あった が、根っからのクズだったってことか。



なんにせよ、これで俺も晴れて住所不定無職って奴だ。

どうなる、人生。



ーーー




追放されてしまったものは仕方がない。

とにかく生活費を稼がないと。

あいつらが残してくれた路銀も、贅沢しなくとも一週間も持たないだろう。


クソ、 金に困ってるわけでもないくせに容赦なくむしり取りやがって。

俺から取った金は女どもにブランドの鞄でも買うのに使うんだろう。



とりあえずこの街道を渡って街に着いたら、フリーの冒険者家業でもやって日銭を稼ぐか。

今までは国家公認の勇者ご一行ってことで安定収入があったが今はそれもない。


まあ元々アレストに出会うまでは冒険者やってたんだ。

パッとしなかったけどね。


しかし問題は、今の自分がどのくらい冒険者として通用するだろうかってことだ。

一応勇者パーティでバリバリやってた位だから(追放されたけど)弱くはないんだろうけど、色々事情があってその辺判断が難しいんよなーー。



「キャアアっ!」



突然、遠くから女性の悲鳴が聞こえた。

慌ててそちらに向けて駆け出す。


街道の外れで、みすぼらしい格好をした幼い姉弟が1匹のオークに襲われていた。

この辺りは良質の薬草がとれるが、魔物もよく出現する。

欲をかいて採取しているとことを狙われたんだろう。



「召喚!兵隊ゴブリン×3!」



すぐさま得意のゴブリン召喚を放つ。

アレスト達には散々バカにされた魔法だが、オークの1匹ぐらいは余裕だろう。

槍を持った3体の小鬼が、えっちらこっちらオークのもとへ駆けつける。


数分にわたる一進一退の攻防を経て、 無事オークを打倒した。



「危ないところだったね。もう大丈夫だ」



姉弟になるべく優しく語りかける。

怪我はないだろうか。もしあれば治癒術をかけてあげなくては。

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