No.078 怒りのホコサキ



 所変わり、ドリー・テグリュー邸。


「さて、兄は行っちゃったけどいいのかい?」

「うん。僕にはやることがあるから」

「そうかそうか。これは餞別だよ、っと言っても葛のだけどね」


 透は大金の入ったお金を貰った。

 これで新しい家でも買えって事だろう。


「ありがたく頂きます」

「誰か付けるか?」

「いえ、必要ないです。では」


 透は逃げるようにしてドリー邸を出る。

 お金を貰ったはいいものの、今の時代キャッシュだからな。

 銀行に行くか。



 近くの銀行に入り、お金をカードに入れて貰う。


「おらー! 動くな!」

「死にたくなかったら今すぐしゃがめ」

「……」


 「イー、イー」鳴くどっかの戦闘員のマスクを着けた3人組が銀行強盗をしに来た。

 銀行の店長らしき人がうまーく話を聞き出していて、


「ダンジョンが無くなったから仕事がないんだ。これは、これは生きる為に仕方ないんだ!」

「イーー、イーー」

「……イーー」


 おいおい、後ろの2人は本当に戦闘員になっちゃったよ。

 でも、そうか。

 ダンジョンが無くなったから元々それで稼いでた人は一気に仕事が無いのか。

 それに、人一倍力があるからこんな横暴に出ちゃったのか。

 けど、武器も貧弱だし、明らかに弱いダンジョン攻略者だったんだろうな。


 「なら、やりよ うがあるな」

 僕はとことん弱そうなモブキャラのフリをする。

 すると、


「そこのお前でいいや。こっちに来い」


 僕ではなく、お母さんと来た小さな女の子が指名された。

 許せない、許されざる行動だ。


 「宝玉の力よ。 嫉妬して」


 空間を歪ませる指鉄砲で武器を持つ手を撃ち抜く。

 もちろん3人にも、ここにいる人たちにもバレないように。


 「バキュン、 バキュン、 バキュン」

「ギャアーー」

「イーーー」

「イーー、イーーー」


 3人は無様にその場で転げ回る。

 それを見た近くでしゃがんでいた人たちが拘束していく。

 これにて一件落着だな。

 なんか、ヒーローみたいでワクワクするな。



 銀行強盗が起きてから数時間後、ダンジョン攻略者の横暴が目立つようになってきた。

 ダンジョンが無くなったという危機感から、レベルの低いダンジョン攻略者のみ動き出す。


 それに比べ、稼ぎのよかったダンジョン攻略者たちは正義の味方として、事件の鎮圧をするようになる。

 が、稼ぎのいいダンジョン攻略者など、2割にも満たないせいか、日本は段々と荒れていく事になる。


「これは酷いな」


 ビックなカメラの電気屋でニュースを観ても、人質をとる立て籠りや、狂気に満ちた殺人、様々な事件が起きている。

 現に後ろでダンジョン攻略者だった人がテレビを盗んでいるのだから。


「嫉妬して。バキュン」


 心臓を撃ち抜く。

 そのまま持てる限りの早さでテレビをキャッチして……テレビって結構重たいんだ。

 あー、死んじゃったよな。


「輪廻回生」


 窃盗未遂の犯人を蘇らせる。


「大丈夫ですか?」

「あ、れ? 俺は死んだんだ。三途の川でじっちゃんが手を振ってて」

「盗みはよくないよ」

「あっ、そうだ。邪魔をするなガキが――ッ」


 デコピンをお見舞いしてやった。

 人も商品も無いところに飛ばしたから被害はゼロだ。


「さーて、片っ端から捕まえていくぞ!」



 ※



 はてさて、1日くらい経過しただろうか。

 ざっと東京内の悪いヤツは倒したつもりだ。

 宝玉の力が強くて、間違って殺しても大丈夫っていうのが最高だ。

 それにしても、警察に引き渡すでもいいのかな?

 あんまり警察は機能してないだろうし、どっちかと言ったらダン高に預けた方が現実的だよな。


「そうと決まれば、すみませーーん」

『はい、こちらダンジョン専門国立高等学校です』

「元ダンジョン攻略者である犯罪者たちを捕まえたんですが、警察じゃ荷が重いかな? って思って連れてきました」

『えっ、は、はぁ。えーと、それでしたらダンジョン協会に連絡します。ちなみに何人くらいですか?』

「100人くらい」

『か、かしこまりました。少々お待ちください』


 待つこと数分、トラックがやって来たから気絶した犯罪者たちをトラックに入れていく。

 綺麗に綺麗に入れていく。

 それは、もう起きたらトラウマになるように唇と唇を合わせるように。



 ※



「終わったー。これで、とりあえず東京は問題ない」


 やっぱり強い人たちも東京に来ていたのか、思ったよりも事件が少なかった。

 もっと、地方とか田舎の方がヤバいだろうな。

 または、地方とか田舎から東京に来るパターンもあり得るけど。

 まぁ、今は山の中だから関係ない。


「さぁ、嫉妬して」


 紫色宝玉が僕の後ろでフワフワと浮かんでいる。


「輪廻回生」


 ある人物を蘇らせる。


「空間断絶結界」


 逃げられないようにしてから、


「ほーら、起きろー」

「……zzz」

「チッ。混沌陰法 水玉」


 顔に水をかけて無理矢理起こす。


「こ、ここは?」

「お目覚めかな? 北星渚」

「お前は!」

「そう。鬼灯透」


 別に親は結局殺されてなかったけど、殺そうとした事には違わないから、それ相応の地獄を見てもらわないとね

 (*´・ω-)b


「動かないでしょ。体を空間に固定したから抵抗出来ないよ。まぁ、出来たとしても僕には勝てないだろうけど」

「あ、あ、ぁ」


 死を体験したからか、それを思い出してまた殺されると思ったからか顔が恐怖に染まる。

 それと少し痛そうな顔をしている。

 けど、まぁいいや。

 髪の毛を1本抜いて血をつける。


「陽法 鞭」


 髪の毛は鞭に変化して、それを力一杯叩きつける。


「グァォァァァァ」


 空間が固定されているせいで、腕が吹き飛んでもおかしかない威力なのに吹き飛ばない。

 代わりに強烈な痛みだけが北星を襲うい、のたうち回れないのが、辛くもなる。


「次は左手ッ」


 もう1度。


「た、頼む。殺して、殺してくれ」


 案外壊れるのが早いんだな。

 または、殺されれば逃げれるとでも思ってるのかな?


「まぁ、わかった。バキュン」


 心臓を撃ち抜いて数秒、北星は動かなくなる。


「輪廻回生。おはよ」

「な、な、お、俺は1回死んだはず」

「違うよ。2回だよ」


 相手からしてみれば数なんてどうでもいいだろうな。

 さて、鞭を捨ててもう1本髪の毛を抜いて血をつける。


「陽法 苦悩の梨」


 これは中世ヨーロッパで使われていたとされる拷問器具の1つ。


「はーい、口を開けましょー」

「……」


 何をするのか察しがついたのか、口を横一文字にして睨むばかり。

 その瞳の奥には恐怖が宿っていて、なんとも面白い。


 鞭を拾って連続で右手右足左手左足を打つ。

 流石にその痛みに耐えられなかったのか、


「ガァァァァァ」


 口を開いて悲鳴をあげる。

 のたうち回れない分口から痛みを逃がそうとしている。

 口に「苦悩の梨」を突っ込んでネジを回す。

 グルグル、グルグル回すと口の中で「苦悩の梨」が花を咲かせるように開いていく。

 そのままグルグルと回し続ける。

 北星は耐えられなくなったのか、顎が外れる音がする。


いやいいやいいやいいたいいたいいたい


 更にグルグル、グルグルと回し続けて花は完全に咲いて赤い色をつけた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る