4章 遊戯者編

No. 075 始まりのモノガタリ



 って思ったじゃん?

 終わったと思ったじゃん?

 普通に終わると思うじゃん?

 なんかおかしいけど終わる流れじゃん?

 じゃあなんで終わらないのか。


「そっか、世界は元に戻ったのか。けど、それでめでたしめでたしにはならないよね?」

「なんでですか? ドリーさん」

「だってそうだろ? 考えてもみなよ。世界は元に戻った。けれど他の大陸に行った人たちはそのままなんだよ」


 言われてみればそうかも。

 って事は宮野たちA組のみんなは今グロンダントにとどまっているっていうか、軟禁状態って事だよね。


「それを助けに行けって? まぁまぁ主人公っぽい行動してきたけどまだ足りないと、ドリーさんはそう言いたいって事?」

「そう、そうなんだよ。だって鬼灯くんの、葛くんの行動は今まで生きてきたなかで1番面白いんだもん!」


 なるほどなるほど。

 まだまだ僕の物語は続いていくようだ。

 いや、続けさせられる・・・・・ようだ。


 さて、助ける方法だけどそんな物なんてない。

 ならどうするか。


 僕は思い付いた、閃いた。

 方法なんて物がないなら作ればいいと。


「宝玉の力よ。錬金術 “世界を渡る鍵”」


 今僕が持っている全ての魔石から鍵が、摩訶不思議でいびつで神々しい鍵が現れる。

 これで繋がるはずだ、多分。

 だって魔石を20kgも使ったんだよ?

 繋がってくれなかったらマジで泣くよ?

 高校2年生(見た目:中学生)が大人げなく泣くからね。


「さーて、どこの大陸に繋がるかな」


 僕は空中に鍵を使い世界を渡る。



 ※



 ――――ガヤガヤ ガヤガヤ


 騒がしい音と共についた場所。

 周りには人、人、人。

 って事はユリエーエのどこかだろうな。

 鍵は光の粒子を残して消えた……。


「失敗だ」


 失敗以外の何物でもない。

 それに、周りの声に耳を傾けると何て言ってるのか分からない。

 完全に言葉が通じないって事は紫色の太陽は本当に言葉を統一させてたのか。

 これも神の力……力?


「宝玉の力よ。理を喰らえ、僕に言語、言葉という壁は一切存在しない!」


 もう1度周りの声に耳を傾けると次はなんて言っているのかわかる。

 「見かけねぇ顔だな」「自慢かよ」「どっかのご子息様かな?」と声が聞こえる。


「てか、ユリエーエって1回僕のせいで壊滅したよね?」


 なのに、復興は完了しつつある。

 いや、復興されている。

 道は整備され、人々の顔には安堵の表情が浮かんでる。


「まーずは、情報収集からだな」


 こういう時はギルドに行くのが手取り早いけど、お約束・・・が起きそうで怖いんだよな。

 だって、僕の顔ってここの、ユリエーエの人たちからしてみれば物珍しいから。


 適当に町を散策する。

 路地裏には絶対・・に入らないように、大通りだけを選んでいく。

 少しばかり、周りの目が気になってしまう。

 どこか胡散臭い者を見るような目を向けてきているから。

 何がいけないのだろうか?

 服か、やっぱり服がおかしいのか?

 これって、所謂いわゆる貴族みたいな服装だけどそれが原因だよな。

 けど、無駄にこっちの服ってカッコ悪いから着たくないし。


 とか思いながら無意識の内に近くにある、庶民的な服やに入る。


「いらっしゃいま……」

「あのー」

「……はい?」


 なんだろう?

 凄い気だるそうに対応されてる。

 そんなにこの服のせいで嫌われるのかな?


「この服っておかしいですか? やっぱり」

「貴族さまだろ? おかしいって言わせて不敬にさせたい算段か?」


 うん、わかった。

 今の復興しているこの町の貴族は相当嫌われているらしい。

 なら、誰がここまでの復興を支援したんだろう?

 貴族じゃないとお金ってそこまで出せないよな。

 とりあえず、


「このローブください」


 黒を貴重として、赤の刺繍がオシャレなローブ。

 いかにも魔法使い、魔術師って感じのローブだ。

 それを上から羽織るだけである程度は違ってくるだろう。


「お金ってこれで大丈夫ですか?」

「ん? 問題ないよ」


 どうやらダンジョンが無くなったにも関わらずダンジョンカードは使えるらしい。

 やっぱり、魔法がある世界、硬貨や紙幣じゃなくてこういう魔法的なキャッシュの方が現実的だよね。



 さて、ギルドを探すかって思ったけど、普通に考えてダンジョンが無くなったのにギルドの必要性って無くなったよな。

 けど、THE・冒険者って感じの人たちは見かけるんだよな。

 ダメだ、早く他の世界にいかないと。

 その為には鍵を作る素材がとことん必要だな。



「道が分からない」


 ギルドがあると思って冒険者についていくと外壁につく。

 そこから外に皆行くばかり。

 帰って来た人たちについていくとその内見失ってしまう。


「てか、人が多すぎるよ」


 道の端で愚痴を溢す。

 そんな僕に、


「大丈夫?」


 おぅ、なんという爽やか金髪碧眼美青年!

 困ってる僕に声をかけるって紳士かな?

 将来、絶対凄くなるよ、この人。


「あー、えっと迷っちゃって」

「やっぱり! そうだと思った。私は――――」


「――――シャルさま。あれほど勝手に行かないでって言ったのに」


 すると、美青年の後ろから可愛らしい女の子が、美少女が現れた。

 これはあれだね、美男美女だから爆ぜろとは思わないな。


「聞いてよ、チル。この子も同じなんだって。それで道が分からないらしくて」

「あら、そうなの?」


 何やら話が勝手に進んでいく。

 てか、同じって何が?


「私はシャル・ユリエーエ。でこっちがチル・デガード」

「えっと、僕は鬼灯葛」

「ホーズキ・カズラ。よろしくね、ホーズキ」


 うん、やっぱりここではホーズキなんだな。


「そんな事よりホーズキ。遅刻しちゃうから行こ」


 2人に手を引かれて連れていかれる。



 連れて来られたのは大きな建物。

 よく、ファンタジー物で見られる学校だ。


「よかった、間に合ったみたいだね」

「シャルさまが勝手に行くから。それにしても、ユリエーエ学園の入学試験に間に合ってよかったですね」


 ユリエーエ学園の入学試験?

 それって、僕も入学試験を受けるって事?

 てことは、シャルの同じは同じ入学試験を受ける人って事か。


「行こ、ホーズキ」

「あのー」

「自信ないの?」


 なんだろう。

 言うべきなんだろうけど、楽しそうなんだよな。

 よーし、ここは欲望に忠実に。

 多分、皆はまだ大丈夫だろうから。


「ううん。行こ!」


 僕はシャルたちとエントリーする。


 エントリーしている時に思ったけど、シャルって名前にユリエーエがついてるから王族だよね。

 また、とんでもない人に見つかったもんだ。

 ユリエーエ、か。

 たしか、和紗かずさの本名もユリエーエってついたよなー。


「では、先ずは剣術からいきます。5人ずつ、あそこにある藁人形に攻撃してください」


 その先生らしき人の合図で名前が呼ばれた人から始めていく。

 至急された剣を使う人もいれば、持参した剣を使う人もいる。

 ってか、剣術って言ってたけど普通に槍とか使ってる。

 斬れる物が剣術に分類されるのかな?


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