No.042 行方フメイ



 2年生になった!


 まずはクラスメートが少し替わった。

 と、言うのも姫山がBクラスに落ちてBクラスの生徒が1人上がってきたのだ。


「元Bクラス1番のクリス・シュトールです。よろしくお願いします」


 ヨーロッパ系の顔立ちでまぁまぁなイケメン。

 ヨーロッパ、か。

 今は亡き大陸で夢の場所だな。


「今日皆に来てもらったのはクリスの紹介と健康診断があるからです。じゃあ男子は体育館、女子は保健室に行ってね」


 それから渡り廊下などを通り体育館に向かう。


「よろしくね、鬼灯さん」


 クリスは他の人に見向きもせず僕に挨拶してきた。

 面識は特にないし僕が1番って理由かな?


「よろしく、クリス。それとかずらでいいよ」

「わかったよ、葛。そういえば最初に見た時から背が変わってない? それとも俺が伸びすぎたのかな?」


 そういえば気になってなかったけど僕って身長伸びたのかな?

 クリスが言うには伸びてないらしいけど、最初に見た時っていつだ?


「僕を見たっていつの事?」

「最初の授業で決闘したじゃん。それに紫ちゃんとも決闘してたじゃん」


 紫ちゃんって……あぁ、2回目の女の子の名前か。


「なるほど、Bクラスだったから見てたんだ」

「そういうこと」


 クリスは他の人にも挨拶しにいき輪に溶け込んだ?


「そういえば俺も気になってた。鬼灯は背が伸びないのか?」

「葛でいいよ。それと一松ってそんなに背が高かったっけ?」

「俺も文鷹ふみたかでいい。ただ単に葛の背が伸びてないだけだろ」

「な、なるほど」


 やっぱりそうなのか?

 吸血鬼になったから成長止まったのか?


「次、鬼灯さん」


 順番が来たので身長体重を測る。

 そして、渡された紙には身長150cmで体重43kgと書かれていた。

 ちなみに中学3年生の時から1mmも伸びていない。

 薄々気がついていましたよ、はい。

 僕は吸血鬼になって容姿が変わらず背も伸びない、体重の維持は楽だけど悲しくなる。

 それに比べて和紗は日に日に可愛く、それでいて綺麗になっていくのだから不思議だ。

 いや、それだけじゃない。

 少しだけ和紗の背が高くなってたような?


 まて、このままいけば僕は弟に背を抜かされる事に。

 そうなると兄としての威厳がなくなってしまう。


「葛、決闘をお願いしたいんだけどいいかな?」

「うん、いいよ。いつにする?」


 悩んでいたら、クリスは終わったのか決闘を申し込まれた。

 決闘とか久しぶりだな。

 このクラスの人たち順位にそんな興味がないみたいだし。


「やった。じゃあ今から行きましょう」


 今からか、結構唐突だな。


「なになに、また葛が決闘するの? 見に行く」

「俺も見に行く」


 義宗と文鷹は見に来るようだ。

 そのまま4人で大修練場に移動する。


「どうする? Bクラスの友達でも呼べば」

「いえ、大丈夫です。始めましょう」


「それでは、ただいまよりクリス・シュトール 対 鬼灯葛の決闘を開始します。始め」


「黒夜叉」

「黒炎刀 火之迦具土ヒノカグツチ。同じ黒い刀、ですね」


 相当レアな武器だろうか。

 かっこいいし強そうだ。


飛炎ひえん


 まず最初に動いたのはクリス。

 クリスは炎の斬撃を飛ばしながら突っ込んでくる。

 その炎を斬り裂きクリスの刀と唾競り合いになり、力いっぱい押し返す。


「陽法 紺の太刀 戯れ」


 不可視の斬撃はクリスの体に傷をつけていくが致命傷には至らなかった。

 運も持ち合わせているんだろう。


「炎よ」


 体を一瞬燃やす事により無理矢理止血させたクリス。

 これだけでも使い方が上手いと思う。

 さて、武器を壊すのは嫌だから、


「陽法 灰の太刀 朧月・峰打ち」

「その技は知っています」


 クリスは後ろを振り向き刀を振るうが空振り。

 その背後から峰打ちで首を一突きして気絶させる。

 そう、やっと出来るようになったんだ。

 と、言うのもコアルさんに教えてもらったと言う方が正しいか。


「そこまで。勝者、鬼灯葛」


「葛、峰打ち出来るようになったんだな」

「その節は本当にごめんなさい」

「あははー。いいって」


 その後男子だけ、という事もありみんなでご飯を食べに行った。

 どこに行ったか、それは値段がソコソコの焼肉屋さん。

 みんながダンジョンを探索なりクリアしているからお金が普通の高校生より多く入る。

 だから普通に高いお店でも入ることができる。

 もちろん店員にはいぶかしげな顔をされるけど。



 ※



 昨日は楽しめた、と言うのも焼肉屋さんで普通は頼まないであろう高級なやつから頼んでいったからだ。

 それを運ぶ店員の顔は本当に面白く結局1人20,000円くらいになった。


「ほら、鬼灯聞いてるか?」


 あっ、ホームルームでボーッとしてた。


「すみません。もう1度お願いします」

「はぁー。これならみんなはレベルSダンジョンの富士山ダンジョンに潜る許可が下りた。そこでは5人パーティーからじゃないと入れないから注意するように。それとここ最近殺人が多いらしい、けどここの生徒なら問題ないよな」


 殺人事件が多いのか?

 ニュースはちょくちょく観るけどそんな事は聞いたことないな。


「ココナ先生、その殺人ってどういうのですか?」

「なんだ、南条。気になるのか? まだ発表されてないから大きな声では言えないけど愉快犯の可能性が高いらしい。なんでも死体はどれも血が少なく首にお伽話の吸血鬼が噛んだような跡があるらしいからな」


 その吸血鬼の言葉で和紗と僕はビクンッとなった事だろう。

 まさか吸血鬼が殺人を犯してる?

 しかも人をたくさん殺す……レベルが上がりやすくて下手をすると手に負えなくなる可能性すらある。

 ここは早めに狩りをしないとだな。


「あぁ、そうだ。もう1つ報告があったんだ。クリスは知らないかもだけど他のみんなはテラって覚えてるか?」


 テラって京ダン高の天神族の事かな?

 また殺人でも犯して捕まったとかそんなかな?


「そのテラが行方不明らしいんだ。もし見つけたら報告してくれると助かる。以上、解散」


 行方不明ってあの行方不明か?

 流石に迷子になる歳ではないからな。

 もしかしたらテラなのか?

 テラは吸血鬼の事を少し知っていたし。


 寮に戻ってから作戦会議をする。


「和紗、その愉快犯を捕まえようと思う」

「うん。私も手伝うよ」

「なら手分けして探した方がいいかな?」

「でも探すってどこを探せばいいんだろう」

「もしかしたはまだ発表させてないって言ってたからそろそろ発表されてたり」


 TVをつけてニュースを観る。


『続けて次のニュースです。昨夜未明に何者かにより殺害された死体が発見されました。同様の事件が1週間ほど前から起きており、連続殺人として捜査を進める方針です。犯人は被害者の血を抜き取り、その上で首に歯の跡を残しており、吸血鬼を模した愉快犯と思われております。えー、たった今入ってきたニュースです。埼玉県新座市で同様の被害が起きたそうです。犯人は北へ逃げていると思われるので、近辺にお住まいの方は注意してください』


「和紗」

「うん」


 急いで準備をしてタクシーを捕まえる。

 そして急いで犯人の足跡を探しに行く。


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