No.018 気持ちのアリカ



 ~~498階層~~


 次もまた迷路が続き……なに?

 497層のボスがどうなったのか気になるって?


 なら、



 ~~497階層~~


 ボス部屋、相手は8割方ドッペルゲンガーだと、戦っていてわかった。

 ドッペルゲンガーの特徴として人間を真似るから、僕の動きについてこれてない。

 それに、


「混沌陰法 風刃」

「だからなんなんだ、その技は」

「君は僕なんでしょ? 言わなくてもわかるよね」

「お前、人間じゃないのか?」

「人間だよ。ダンジョンカード見てみる?」


 という感じで、魔法ではなく陰法で攻撃すると面白いくらいに抵抗できず、いいまとになっている。


「そろそろ終わりだね。黒夜叉」

「なんなんだよ。その武器の出し方も」

「陽法 黄の太刀 一閃」


 ドッペルゲンガーの身体を刀で突き刺す。

 コロン、と魔石が落ちてドッペルゲンガーは消えた。

 そして後ろの扉が開き階段も現れる。


「お疲れ、葛くん」

「葛、敵ってなんだったんだ?」

「和紗ありがと。 敵はドッペルゲンガーだったよ」

「ドッペルゲンガーってマジかよ。だから1人だけなのか。それでも凄いな。ドッペルゲンガーって1対1ならランクAだぞ」

「そんなに強いのか。弱く感じたけど(僕が吸血鬼だから)」


 と、この階層のボスも呆気なかった。



 ~~498階層~~


 さて、次も迷路が続き、1時間くらいでボス部屋前に到着した。

 流石にお腹が空いてきたが、ここにはまだ飲食店は来ていないのでどうするか、と言うことで、ここのボスが食べれる事を祈る事になった。


 ボス部屋に入ると特に何もなく、次の階層が現れてしまって、食べれるもなにもなかった。



 ~~499階層~~


 ここの階層はサービスなのか辺り1面芝生で、中心には1本の林檎の木が。

 その林檎の中に銀に光る林檎、[白銀林檎]が実っていた。

 黄金林檎は怪我や病気を完全に治し、寿命を伸ばすと言われている。

 白銀林檎は魔法威力上昇などの強化系林檎と言われている。

 黄金林檎よりは沢山あるとされるのが白銀林檎だ。


 ここは、皆の総意で僕が白銀林檎を食べることになった。

 甘く口の中で溶けるように美味しかった一口目。

 それ以降は味が一切せず、味気ない感じだが、皆がくれたから全部食べた。

 

 すると、体から力が溢れるのが感じられて、魔力の流れが見えるようになった。


「葛くん、目が」


 そう言って和紗ら鏡を見せてきた。

 その鏡に写っているのは右目が紅く光る僕の顔だ。


「それって魔眼ってやつ?」

「魔眼って突如貰える神からのプレゼント?」

「そう考えるのが自然か」


 僕は[魔力眼]を手にいれたのだった。


「よし、次の階層に行こっか」

「おい、葛。テレポート魔法陣があるって事はここが最下層なんじゃ」

「私も竜介と同じ意見」

「僕もだ」


 少し進んだ所に魔法陣がある。

 それを全員で踏むと、



 ※



 ネズミダンジョン扉の前に飛ばされた。


「ココネ先生、終わりました」

「お疲れ、リタイアかな?」

「いえ、突破しました」

「ならなんで連絡をしないのかな?」

「わ、忘れてました」

「それで、何階層だった」

「499階層です」

「わかった。確認する。君たちはあそこのホテルで待っていていいよ。棄権した生徒やギブアップした生徒たちがいるから。それと部屋は2人で1部屋だから男同士、女同士でちょうどいいね」

「ココネ先生。何を言っているんですか? 僕は和紗と一緒です。そして竜介はローヌと一緒です」

「なっ、それはローヌくんと竜介くんが可哀想だろ」

「大丈夫です。あそこも付き合っているので」

「なっ、死ねばいいのに」


 初めて真っ黒なココネ先生を見た。

 少し意地悪し過ぎたかな。



 ※



 ホテルは広くもなく狭くもなく、THE・普通だった。

 まだ半数以上の生徒がダンジョンに入っていて、制限時間まで後1週間。

 ダンジョンの実習では1週間が基本なのだろうか。


「流石に1日歩き続けると疲れるね」

「私は大丈夫だよ。葛くんがちゃんと守ってくれたから」

「それは良かった。でもあのモンスターハウスは面倒だったね」

「そう、モンスターハウス。はい」


 そうして、あの時と同じように首を傾げて手を広げている。


「じ、じゃあ遠慮なく」


 優しく首元を噛んで吸血する。

 和紗は一瞬ビクンッ、となったがすぐに落ち着いて体を預けてきた。


 そのまま10秒くらい吸血したら、和紗は気を失っていた。

 それにしても美味しかった。

 なんとも言えない優しい感じで、包まれているようで、とにかく最高だった。

 和紗をベッドに寝かせて僕もベッドに入る。

 5分もしない内に2人は寝息をたてて眠っていた。



 ※



 次の日、僕は朝1番にココネ先生に呼び出された。

 僕が何をしたのか、と思いながら行くと、聞かれたのは、


「ネズミダンジョンのクリア報酬はなんだったの?」

「多分ですけど白銀林檎です」

「いや、白銀林檎があるならそれ以上の物はないよ」

「そうなんですか?」

「うん。白銀林檎は強化系林檎なんて言われているが、あれは真っ赤な嘘だ。本当は特殊能力が開花する魔法の林檎で、黄金林檎よりも価値があるとされている」

「でも、聞いた話だと黄金林檎の方がレアって」

「それは売らせる為だよ、白銀林檎をね」


 なるほど、確かに納得だ。

 それで安く買い取り特殊能力を得る。

 なんとも良くできた作戦だ。


「次の質問いいかな?」

「はい」

「ダンジョンボスはなんだった?」

「一般的な赤と青のミノタウロスと」

「Bランク」

「ドッペルゲンガーを1人でと」

「Aランク」

「あと、モンスターハウスがありました」

「広さは? 敵の強さは?」

「迷路をなくしたくらいの広さで、魔物はよくてDランクくらいです。数は100から先を数えていません」

「Bランク」

「さっきから何をしてるんですか?」

「いや、あのダンジョンはレベルDと言ったがレベルBに引き上げるべきだなと思ってね」

「DからBにですか?」

「そうだよ。いつドッペルゲンガーやミノタウロスが復活するかわからないし、迷路の難易度も合わせるとそのくらいが妥当だよ」

「な、なるほど」

「質問は以上だよ。鬼灯くん、ありがとうね」


 それから僕は部屋に戻って、今の事を簡単に和紗に伝える。

 そして、時間は過ぎていった。



 かに思えたが事件はおきてしまった。


 ――――ブブブブブブブブブブブブブブ


 和紗のスマホに1つの電話がかかってくる。

 そこまでは良かったが、電話をかけてきた人が問題だった。

 和紗はそれを確認すると、怯えて僕に抱きついてくる。


「和紗、確認するね」

「う、うん」


 和紗が怖がっている、怯える相手は謎の第二始祖以外にはあり得ない。

 そこにかかれていた名は「ロサイン・ルーラー」という文字。

 僕はこの文字を、ここ人を知っている。

 同じA組の1番の姫山ひめやま快斗かいとの親とパーティーを組んでいる人で『人外のルーラー』と呼ばれるほど強いと記憶している。


 ここで僕がとれる行動はいくつかある。

 1つ、直談判。

 絶対と言っていいほど相手にされないし、会えないだろうから却下。

 2つ、ドリーさんに手伝ってもらう。

 ドリーさんはそんな面倒な事はしないだろうし、その為に案の3があるから却下。

 3つ、コアルさんと協力する。

 それが1番よくて、ドリーさんの命令もあるからそれを採用。


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