No.016 見当たらないコタエ



「この子は私よりも遥かに強くなるでしょう」


 僕でもわかるが、このコアルさんは物凄い強い。

 それを僕が越えるだって?


「お心当たりはありませんか?」

「あぁ、ある。今思い出した。鬼灯くんを吸血鬼にするとき久しぶり過ぎて血の量を間違えたんだ」


 あっ、僕の才能とかじゃなくてドリーさんの血のおかげなのね。


「なるほど、それで私を起こした理由は?」

「第二始祖が殺された。その犯人の始末とそれだけだと面白くないだろう。コアル、鬼灯に稽古も頼む。強くなるんだろ?」

「はい、それはもちろん。ドリーさまに嘘はつきません。けど」


 コアルさんは僕の事を睨み、動けなくなる。


「逃げたりしたら私の責任ではありません」


 はい、逃げません。

 なので解放してください、怖いです。


「それではドリーさま失礼します」

「ドリーさんありがと……ドリーさまありがとうございました」


 睨まれて、直せと言われた気がした。

 怖い、逃げれないだろうけど逃げたい。



 その後、特になにもなく寮に戻ってきた。

 コアルさんはなにか用事があると、行ってしまった。



 ※



 1週間が経ってもコアルさんは帰って来なかった。

 僕は和紗と一緒にダンジョンの構造に関する授業を受けている。

 て言うか、和紗のスキンシップが激しくなり、周りからしてみればイチャイチャしてるようにしか見えないだろう。

 周りいないけど。

 でも、僕にはわかる。


「ココネ先生がイライラしだしてる」

「葛くん、知らないの?」

「なにが?」

「ココネ先生ってあんな容姿じゃん。だからね、合コンとか行っても相手にされないらしいの」


 それはなんとも言えないはな。

 たがらイチャイチャを見てイライラしているのか。


「うるさいですよ。授業に出ないんだったら自習でもなんでもしてください」

「「ごめんなさい、ココネ先生」」

「あーもう。なんなんですか? 見せびらかして楽しいですか?」

「恥ずかしい」「楽しい」


 僕は恥ずかしいのだが、どうやら和紗は楽しいようだ。

 和紗が楽しいなら続けててもいいけど。


「では授業を続けます」


 それから30分授業をして、今日は終わりになった。

 明日は全員集合で、少し遠くのダンジョンに行くらしい。

 そこで皆の実力を試す、というわけだ。

 なので午後は和紗と一緒に新武器のテストをする。

 昨日の夜に届いたので、明日の為にも練習あるのみだ。


「いくよ、陽法」


 そして、僕は知らなかった。

 本当は陽法で、こんなに技を作る人はいないらしい。

 いても1人、ドリーさんだけだということ。

 普通は体に力を纏って攻撃するのが陽法らしい。


 と、ボーッとしてはいけない。

 和紗は器用に円刀を投擲してくる。

 それを1回1回黒夜叉で弾き返す。


 1時間くらい経ってから、お互いに疲れたので休憩をいれる。


「葛くん、凄いんだよ。この円刀使いやすくって、それでいて軽いの」

「よかったね、ローザスさんは凄いよね」


 そんな他愛ない会話をしていると、


「おい、俺と決闘しろ。そこの女」

黙れ・・


 僕は和紗が女呼ばわりされた事が許せずその生徒を睨んでしまった。

 すると、腰が抜けたのかへたり込んでしまった。

 そして股の所が黄色に染まる。


「行こっか、和紗」

「う、うん」


 それから少し歩いてから、質問された。


「葛くん、さっきのってなに?」

「さっきの?」

「あの睨んでいた時。葛くんから変なオーラがあの子目掛けて飛んでいたように見えたから」

「そ、そうなの? 咄嗟の事でわかんないや」

「そっか。その咄嗟の事ってなに?」

「和紗が女呼ばわり、された、から」


 最後の方は声が小さくなってしまった。

 よくよく考えると、和紗の事で怒った僕。

 一緒にいる内に好きという気持ちが芽生えたのだろう。

 だって今なら普通に言えるもん。


「和紗、好きだよ」

「な、な、なんで急に/// 不意打ちズルい」


 耳まで真っ赤に染めて下を向いてる。

 それより、和紗がさっき言っていた事だ。

 その睨むだけでって最近どこかであったような……思い出した。

 コアルさんのあれだ。

 どうやるんだろう?

 咄嗟だったからなにがなんだかわかんないし。


「葛くん、ボーッとしてどうしたの?」

「ん? なんでもないよ」

「そっか。ならさっきの仕返し」


 頬に唇が触れられた。


「えっ、ちょ、ちょっと」

「どうだー、参ったかー」

「やったな。混沌陰法 誘惑の霧。奴隷陰法 愛の拘束」

「ッッ///」


 認識阻害をして周りから見えなく、そして緩めの拘束技で動けなくしてからお姫様抱っこで寮まで戻る。

 解こうと思えば拘束を解けるのに、解かないのは嬉しいからだろう。


「はい、お姫様」


 ベッドに下ろすとそのまま和紗はベッドに突っ伏してしまった。


「ごめん、嫌だった」

「葛くんの馬鹿」


 な、なんで……。

 流石にいやだったのか。


「ごめんって、和紗」

「じゃあそのまま座って動かないで」

「わかった」


 和紗に言われた通り座ってみる。

 すると和紗は僕の後ろに回ってからカプリ。


「ちょ、ちょゥ」


 首元を噛まれて吸血されている。

 痛い訳ではなく、身体全体をマッサージされているような、優しいなにかに包まれているような感覚に陥る。

 そのまま僕の意識は遠退いていった。



 ※



「起きた、その、ごめん、やり過ぎた」


 和紗は僕が起きて開口一番にそう言った。

 僕は和紗に吸血されて意識が飛んだのか。


「大丈夫だけどどのくらい寝てた?」

「あと少しで日の出」


 やり過ぎたと反省していて、しょんぼりしている和紗も可愛い。


「別にいいよ。今度吸血するから」

「えっ」


 驚いただけで下を向いてる。

 耳まで真っ赤に染めて可愛いからズルい。


「集合まで後1時間か」

「どうする?」

「どうこうするって訳じゃないかな。適当に時間を潰す」


 1時間という暇な時間。

 いつもはすぐに時間が流れているように感じるが、こういう暇な時に限って時間が遅く流れていく。


「そうだ。結界陰法 時間短縮」


 この部屋は外と時間の流れが違い、10分が1分になる。

 これで10分耐えればすぐに集合時間だ。



 なんなく10分という時間が過ぎて集合時間になったので向かう。

 集合場所には皆来ていて、バスも到着していた。

 このバスは10人で乗るには広すぎるような。


「さぁ、席は自由だから好きな所に座ってね」


 バスは修学旅行などで使う、2人席が2つならんだバスで、僕はもちろん和紗と隣どうしに座る。

 


 そして、バスに揺られること1時間と少し。

 到着したダンジョンは『ネズミダンジョン』と呼ばれる場所で、ここには昔ネズミのいるテーマパークだったらしい。


「それでは今からこのネズミダンジョンに潜ってもらいますが、あまり無理をしないでください、って言ってもA組の皆さんは適正的に大丈夫なので問題ないか。それでは3人以上5人以下のパーティーを組んでから受付してください。それから制服は頑丈に作られているので着替える必要はありません」


「3人以上だって。2人で十分なのになのにね」

「まぁ、後1人か2人いれればいいだけだから」


 さて、仲間探しを始めるか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る