No.015 逃げ道がミアタラナイ
「次の日は全員学校に来てくれ」とココネ先生から連絡があり登校したのだが、和紗がこっちをチラチラと見ては顔を赤くして顔を合わせてくれない。
「よう、葛。君、八乙女さんになにかしたの?」
「いや、特になにかしたつもりはないけど」
席順は、教卓から見て、手前の左から1~5で後ろに6~10なので、前が義宗で、右が和紗なのだ。
「ねぇ、和紗。なにか悪い事をしたなら謝るから。ね?」
「べ、別に、葛くんは、悪い、事なんて」
最後の方は声がとても小さくなっていた。
「よーし、皆揃っているな。まずは順位の変更がある。9番と10番は決闘の結果入れ替えだ。が席はそのままな。面倒だから」
ふむ、ちゃんと決闘の結果は出るのか。
なら問題ないな。
「次に君たちにはバッチを配る。これはA組の証だから制服につけておくように。それと、紛失は罰則だから無くさないように。それでは解散」
「葛、葛。君って八乙女さんと仲が良かったの?」
「うん、まぁそんな感じ」
「か、葛くん。ち、ちょっといい?」
「うん」
僕は和紗に連れられて、誰もいない教室まで連れてこられた。
そして、スマホを取り出して動画を見せてきた。
「……ッ」
「あ、後これも」
「…………ッ」
僕は自分の顔がどんどん赤くなっていくのが、手に取るようにわかる。
1つ目の動画では、僕が吸血鬼にする儀式のヤツの口づけのヤツ。
2つ目の動画は僕が和紗の頭を撫でながら言ったあの言葉が、動画として残っていた。
「これって、どういうこと? 和紗さん」
「そ、そういう事だよ、葛さん」
「いや、ちゃんと説明して」
「奏先生がくれたの。プレゼントって」
「それを消すつもりは?」
「ない」
「ですよねー」
わかってましたよ、消すつもりが無いことくらい。
だったらなんで見せてきたんだよ。
恥ずかしがらせたいのか?
「これって、私を好きって受け取っていいの?」
「待って、どうしてそうなる」
「えっ……違うの?」
あー、もう上目使いはズルい。
「まぁ、可愛いのは事実だし」
僕は目を逸らしながら言う。
相変わらず意気地無しだ。
「ッッッッ」
言わせておいて、和紗は顔を赤くして照れている。
うん、上手くすれば勝てるな。
「そう、本当に可愛い」
頑張って目を見てそう伝える。
「本当に? もう1回言って」
「可愛いよ」
「なら名前を呼んでからもう1回」
「和紗、可愛いよ」
「私の事は好き?」
「……」
「
「う、うん。好きです」
言わされた感が否めないが、勝てっこない。
「もう1回、名前も」
「和紗、好きです」
「もう1回」
「もう無理。ごめん、本当にごめん。恥ずかしくって悶え死ぬから許しね。お願い」
それだけ伝えて、僕は一目散に逃げ出す。
それから僕は寮に帰り、ベッドに突っ伏した。
※
日も暮れて頃、僕はどうやらあのまま寝ていたようだ。
と思っていたら、1つのLINEが届いていた。
ボイスメッセージが2つ。
1つ、「和紗、好きです」という僕が言った台詞だ。
録音されていたという新事実。
そして2つ、「助けてくれてありがとう。私もです」と、和紗の声が録音されていた。
これをどう捉えるべきか。
「助けてくれてありがとう」は、謎の第二始祖から解放した事だというのは容易に想像できる。
けど次の「私もです」というのは、好きですに対してなのか?
でも、それは自意識過剰な気がしてしまう。
ん?
もう1つLINEが来た。
「これからよろしくね?」ってどういう意味だ?
――――トントン。
「失礼しまーす」
「待って、なんで、ちょっと」
「なんでって、1人部屋らしいから来たの」
「僕男。和紗女。わかる?」
「両想い。わかる?」
「待って、わかりたくない」
「ならしょうがない」
「わかってくれた」
『和紗、好きです』
「ごめん、僕が悪いです」
負けた、負けた、完全に負けた。
「これからよろしくね? 葛くん」
「はい、よろしくお願いします、和紗」
僕は、僕は第二始祖なのに勝てないのか。
「それと、決闘の時酷いよ、私の武器壊して」
「怖い、とか無かったの?」
「あれの方がよっぽど嫌で怖い」
「ご、ごめん。そうだ、武器は新しく作ろうよ。いや、違う。作ってもらおう。明日って大丈夫?」
「大丈夫だけど」
「じゃあ武器を作りに行こっか」
「うん。そうだ、ここに来る途中寮母さんがご飯だって」
「ありがと。行こっか」
それから2人で夜ご飯 (キノコのクリームシチュー)を食べて各自でお風呂に入り、部屋に戻った。
「私、下ね」
「僕が下で寝てたから交換するよ」
「大丈夫、
「わ、わかりました」
ダメだ、僕の方が上だけど勝てる気がしないな。
※
次の日。太陽も昇っているので身体全体に日焼け止めを塗り、和紗と一緒に出かける。
が、
「もう無理。気持ち悪いよぉ」
「大丈夫? 和紗。おんぶするかお姫様抱っこかどっちがいい?」
「どっちも恥ずかしい」
「わかった。ちょっと待ってね。混沌陰法 誘惑の霧。これで認識阻害をかけたから大丈夫だよ」
「じゃあおんぶで。お姫様抱っこは見られてなくても恥ずかしい」
和紗をおんぶしてから人気のない路地裏に向かう。
僕は、後ろから可愛い女の子に抱きつかれていて、たまにいい匂いがする。
悶々とした空気のなか、なんとか路地裏につくと豪華な屋敷があった。
「失礼しまーす」
「お、お邪魔しまーす」
インターホンを押さずにズカズカと入っていく僕。
その後ろから袖を掴みながらついてくる和紗。
なにこの小動物みたいな可愛い娘。
「あっ、ドリーさん」
「鬼灯くんと?」
「僕が吸血鬼に上書きした第三始祖の和紗」
「そうか、鬼灯くんがとうとう吸血鬼を。それでなんの用かな? イチャイチャを見せびらかすなら帰ってくれ」
「ち、違いますよ。ローザスさんに和紗の武器を作ってもらおうと」
「なるほど、高くつくぞ?」
「えっとローザスさん。出世払いでいいですか」
「構いません、葛さま」
「ありがと、ローザスさん」
「それで、どのような武器を」
和紗に聞くと前のと同じでいいらしいので、それを僕が伝える。
相手が吸血鬼だからなのか、少し怯えている。
「ドリーさん。僕以外にも第二始祖は残っています」
「それは本当かい?」
「はい、それもドリーさんを狙っているらしく」
「しょうがない、眷属陰法 神秘の棺・開」
光輝く棺が現れて、そこから1人の吸血鬼が出てきた。
とても美人な男性で、THE・吸血鬼って感じの色白だ。
「お久しぶりです、ドリー・ネグリューさま。そして……はじめまして、私は第二始祖のコアル・スロスキーと申します」
「はじめまして、僕は第二始祖の鬼灯葛です」
「だ、第三始祖の八乙女和紗です」
「ドリーさま、あの鬼灯という方、私よりも強いです」
「本当か、コアルは第二始祖最強だろ」
「今なら私が勝てますでしょう。ですが、時間をかければ、この子は私よりも遥かに強くなるでしょう」
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