No.013 力をシメセ



 無事に決闘を2回終わらせた昨日。

 今日から暇になるし、なにかする事は……あった。

 八乙女やおとめ和紗かずさについて調べよう。


「そうと決まればスマホで検索っと」


 うん。

 やっぱり出てこないよね。

 なら図書室にでもいくか。

 あそこなら、高度なパソコンがあるから、それなら出てくるかもしれない。


 そう思い図書室に行くと、


「なんで八乙女がいるんだ?」

「ゥゲ、鬼灯」

「八乙女。聞きたいんだけど、君って何者?」

「それはどういう意味かしら?」

「そのままの意味だよ」

「そう、驚きなさい。私は吸血鬼の第三始祖の八乙女やおとめ和紗かずさよ」


 あっ、吸血鬼なのね。

 でも、名乗りでなくていいや。

 それと名乗るなら第十始祖くらいだな。


「吸血鬼……それっていつから?」


 それが1番気になるポイントだ。

 もしも最近だった場合は第二始祖が僕以外に生きている事になる。

 そうなると色々と思う所がある。

 例えば、その第二始祖が他の第二始祖たちを殺した、とか。


「フッフッフッ、聞いて驚きなさい。私は最近見出みいだされて吸血鬼になったのよ。そのおかげでここの合格も簡単だったし本当いいことだらけよ。それにしても、吸血鬼と言っても驚かないのね」

「えっと、うん。だってA組って色んな凄い人がいるじゃん? だから吸血鬼の1人や2人いてもおかしくないなーって」

「ふーん。気に入ったわ。私と勝負なさい。もしも私に傷1つでもつけれたらあなたも吸血鬼にしてあげる」

「いや、いいや。遠慮しておく」

「これは命令よ? 第三始祖である吸血鬼のこの私が命令しているのよ」


 あー、イライラしてきた。

 どうしても僕は煽り耐性が低いらしい。


「いえ、吸血鬼とか興味ないので」

「黙って私と勝負しなさい」


 それから腕を掴まれそのまま大修練場に連れていかれた。

 振りほどこうと思えば出来たが、もう我慢の限界だ。

 ここから僕は頂点を目指してやる。

 邪魔するやつらは楽しもう、うん。


「それでは、鬼灯葛 対 八乙女和紗の決闘を開始します。初め」


「来なさい、紅蓮華ぐれんげ


 面白い武器を持っている。

 円の刃で、持つ場所以外が鋭い感じ。

 それと、手首の所から紐が武器に繋がっているから、投げたりも出来るのか。

 よく考えてある。


「さぁ、あなたも武器を出しなさい。聞いた話、あなたは武器を持って戦うのでしょ? 待ってあげるから。もし、取りに行くなら先生と行ってきてどうぞ」

「黒夜叉。見て、綺麗な刀身でしょ?」


 一応決まり文句を作ったから言ってみる。

 でも、刀身が綺麗だから自慢したくなっちゃうんだ。

 こればっかりは仕方ない、不可抗力ってヤツだ。


「へぇ、あなたも面白い武器の出し方をするのね」

「1つお願いがあります」

「なにかしら?」

「絶対に逃げないでくださいよ」

「それはあなたの攻撃に当たれ、ということで?」

「違う違う。そのまま逃げないでって事」

「はぁー。それはこっちの台詞ですけど?」

「わかった。結界陰法 空間切断」

「そ、その技は」


 そう、自己紹介をするために空間を物理的に切断する。

 外からは、未だに僕たちが動いてないように見えているだろう。


「申し遅れました。僕は第二始祖の鬼灯葛です。以後、お見知り置きを」

「えっ、嘘、嘘だよ。第二始祖は先生以外にいないって言ってた。第一始祖にさえ気を付ければいいって言ってたのに。いや、待てよ。嘘をついているな、ハッタリだな。騙される所だった。第三始祖の八乙女和紗の名において、敵を葬る正義の炎を。混沌陰法 火炎地獄インフェルノ

「混沌陰法 火炎地獄」


 火球をお互いに放ち、それがお互いにお互いの炎を飲み込もうとする。

 そして、もちろん勝ったのがこの僕。


「なぜ、なぜ生きている」


 今はもう結界を解除したけど、あまり陰法を使うのはよくないな。

 早めに仕留めよう。


「陽法 の太刀 一閃・二連」


 相手の両の肩口に黄色く光る刀を突き刺す。

 これで武器を振るうことすら出来ない。

 それにこの武器なら、自動回復も出来まい。


「なんで、なんで。なんで治んないのよ」

「次は首をいくよ。陽法 黄の太刀 一閃・二連」


 相手の腱を斬り、動けなくする。


「ッゥゥゥ。なんで、首って言ったじゃん」


 八乙女は首を曲げて避けようとしていた。

 て言うか、素直に従いすぎでしょ。


「教えて、八乙女。君の先生は誰かな?」

「ココネ先生」

「そっちの先生じゃなくて、君を吸血鬼にしたという先生の事を教えてよ」

「それは言うなって言われている」


 そっか、言っちゃいけないのか。


「ほら、なら早く立ってよ。まだ終わってないよ」

「鬼ッ」

「口の聞き方がなってないね?」

「ヒィッ」

「君のその武器面白い形をしてるんだね」


 紐を斬ってから八乙女の武器を上に投げる。

 そして、


「陽法 黒の太刀 断絶」


 空間ごと武器を切断する。

 おかしいな、なかなか先生が止めようとしない。

 これって、考えられる事が1つだけあるな。


「吸血鬼の血って美味しいかな? どう思う?」


 今見ている先生の記憶は後で消せばいいや。

 確かそういう系統の陰法があった気がするから。


「や、止めて。お願いします。私が悪かったから――――」


 口を塞いでおく。

 もし、ここであの先生に命令されたらこの決闘が終わってしまう。


「八乙女、君が先生に決闘を止めるなって命令したんだよね? まぁ、いいや。頂きます」


 八乙女の首に牙をたてて、血を吸い出していく。


 初めて血を吸った感想としては、美味だった、最高だった。

 吸血鬼の血も悪くない気がするし、可愛い女の子から吸えてるから僕は満足だ。


「ありがと、美味しかったよ?」


 八乙女は顔を火照らせながら、下が濡れている。

 どことは言わないが、下が濡れている。


「流石に可哀想だな。混沌陰法 渦水かすい。混沌陰法 温風」


 まず、水と風で作った渦を巻く水で綺麗にしてから、火と風で作った温かい風で服ごと一気に乾かす。


「先生、止めてください。僕、本気で斬りますよ?」

「そ、そこまで。それで、鬼灯さん。今の――――」

「――――黙れ。眷属陰法 記憶の鎖。今見たことは忘れろ。先生は僕が一瞬で首を落とそうとしてたからすぐに止めた、いいね?」

「はい、仰せのままに」

「先生、なにボーッとしてるんですか?」

「あれ? お疲れ、鬼灯さん。できれば八乙女さんを保健室まで連れていってあげてね」

「わかりました」


 僕は八乙女に肩を貸して立たせる。

 そして、足を引きずるようにして、保健室まで連れてきた。


「保健のせんせーい、はいないからベッドに寝かせるか」


 お姫様抱っこに切り換えて、ベッドの上に、


 ガラガラガラ。


「あら、それは泥棒ですか? 変態ですか?」


 僕は優しく八乙女を置いてから保健の先生に言う。


「ただ単に連れてきただけです。どうしてその悪い二択しかないんですか?」

「あなたが鬼灯葛という、外道だって噂だから。入試で女の子に拘束魔法をかけて、そのまま他の受験者を受からないようにした。前代未聞なのよ?」

「1つ訂正を。相手がかけてきて、それを弾き返しただけです」

「えぇ、それも聞いてるわ」

「ならなんで」

「何となく?」


 ダメだ、僕この先生苦手だ。

 話のテンポが乱される。


「それじゃあ、先生とお話でもしましょうか」


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