第13話 夏の終わりに④

「るんたったー♪ ミルちゃんの唇は砂糖味ー♪」


 はい、私舞い上がっちゃってますね!

 これがま〇マギなら次回あたりマミる(※無残なことになるの意。魔法少女界の基礎用語)!


「はぁ、ミルちゃんとのデート、楽しみ♪」


 夏休み最後の日の、朝。

 私、宮野りりなは。以前ミルちゃんと約束したデートに備え、鏡の前で髪を整え中。

 ちなみに早百合も一緒する予定。これって、両手に花?


「うーん、いまいち前髪きまらないし……」


「……りりな、いつまで時間を掛けているんだい? 今日の君、浮かれすぎだよ?」


 少し呆れた口調でステファニー。

 やはり彼には、乙女にとってお洒落がどれほど重要か分からない模様。


「忘れてるわけじゃないだろうね、相手は悪魔の女王……。君はともかく、僕はまだ彼女を信用しきったわけじゃないよ」


「そんなこと言って、本音は?」


 ステファニー、ぐっと拳を握って。


「百合を見せてくれたら信用しよう! まずはキスすると良いと思うよ!」


「この淫獣!」


 そう。今日はミルちゃんとの「デート」。

 会うのは、彼女の正体を知った先日の夜以来。


 百合魔法少女になってから私が戦い続けてきた、世界をBLに染めようとする敵……悪魔達の首領。

 「腐界の女王」ミルダレーナ。

 銀髪でロリロリかわゆいミルちゃんの、それが真の姿。


 私達は、百合娘と腐女子は手を取り合えるのか。それとも、戦うしかないのか。

 人類の存亡を占う、重要な一日になるかも知れません。キリッ!


「はぁ、でもやっぱりミルちゃんとキスしたいし♪」


 もちろん早百合ともね!

 美少女二人に右から左から。ちゅっちゅとキスの雨をもらうの。うっとり♪


「緊張感無いなぁ、君は。まぁ僕も、百合さえ見られればそれでいいけどね。百合は世界平和より重し!」


 もしかしたら、ミルちゃんの方はわりとシリアスに悩んでるかもだけど。

 私とステファニーは平常運転でした!

 ……頭の中、百合色でごめんなさい。


 持ってる服の中から、わりと動き易くて、それでいてお洒落なお気に入りに着替えて。

 玄関で、靴を履く私。

 ……我ながら、私服でもスカートの丈が短くなってきている。


(常在戦場。魔法少女として、変身前も可能な限りパンチラを怠らないようにしないとね!)


 とは、ステファニーの念話。

 いや、色気づいてるわけじゃないからね?


 でも、ミニを好むようになった気はする。ステファニーに毒されたかな……。


「ん、出掛けるのか、りりな?」


 パックで牛乳飲みながら声を掛けてくるのは、大学生で私より夏休み長い、我が姉るりか。


「えへへー、今日はデートなんだ♪」


 ぶぴゅるぅっ! 牛乳を噴き出す姉!


「げぇほ、げほぉッ!!」


 あれ、なんかすっごくむせてるし。


「で、デートだとぉ!? ど、どこのどいつだ! うちの妹に手を出す男は!! 許さんッ!!」


 あ、お姉ちゃんてば、ノンケの振りしても妹は特別なんだね。照れるし♪


「やだなぁ、お姉ちゃん。私が男の子とデートするわけないし。もちろん、相手は可愛い女の子だよ」


「そ、そうか。それならいいが。……いや、いいのか世間的に?」


 むむむ、と考え込むお姉ちゃん。

 ちなみに噴いた牛乳は、唇から垂れ、私に似ない豊かな胸に零れ落ちて。シャツを濡らして。

 その……ちょっとエッチです。


「ああ、お姉ちゃんオトナ……♪」


 やば、今日の私! いつも以上に発情中!!

 こ、これはもう、お出かけ前に一度鎮めてもらわないとね!?


「ね、ねえお姉ちゃん?」


 瞳のキラキラが早くも止まりません!

 お姉ちゃんの手を引っ張り、私。


「い、妹を見送るなら! することがあるよね! ね!?」


 ほら、どうぞ!


「……なぜ目を閉じる。そして唇を突き出す?」


 もう、分かってるくせに!


(もちろん、行ってらっしゃいの百合キスさ! 仲の良い姉妹なら、当然の家族愛だよね!)


 ほら、ステファニーも言っている。


 と、そこへ、


「あら、だめよ。可愛い娘を送り出すのは、母親の役目だもの♪」


 お、お母さん!? 宮野せりな乱入!!

 三十路後半、でも見た目若くてゆるふわな我が母!


「行ってらっしゃい、りりな。ちゅっ♪」


 お父さんともやらない、オトナの濃厚キスで私の唇に吸い付きます!

 あわわ、これはこれで♪

 お母さんの百合キステクニックに、私はごろにゃん状態!


「は、はぁい、お母様ぁ♪ 私、ん、ちゅ♪ 行って、あん! 来まふぅ……♪」


「ちゅるっ、ちゅぱ♪ ふふ、遅くならないようにね、ぬるちゅ、ふむぅ、可愛いりりな♪」


 母娘の会話ですが、何かおかしな所でも?


(うんうん、仲良きことは美しきかな! 麗しい母娘愛だね!! 全国の美人母娘は見習うように!!)


 ほら、ステファニーもこう言ってるよ!


「私、もうこの家やだ……」


 おかしいなー? なぜかお姉ちゃんだけが、脱力した顔で呟くのでした。

 家族愛なのに、ねぇ?

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