第13話 夏の終わりに②

 さて、悪魔会議の続きである!

 過激な(男性同士の)Hシーンで人気を博す優良ホモゲーメーカー「悪魔のつばさ」。


 その首領たる「腐界の女王」ミルダレーナ(シナリオ担当)は! 苦悩していた!

 彼女の悲願「人類総BL化計画」の為にも、ホモは書き続けねばならない。

 しかし。百合も書いてみたくなってしまったのだ!


「ホモか、百合か。選ばなければならないというの……?」


 突き付けられる、重大な選択。

 世の乙女たちとガチホモの皆様に、夢と希望を届けてきた悪魔女王。

 そんな彼女が。腐女子界の星が。百合ん百合んなシナリオを書くなど!!

 重大な背信行為なのではないか!?


「そうよ、私を信じて付いてきてくれたホモ達を、裏切るなんて……!」


 ミルダレーナ、円卓に集う自らの騎士達を、忠勇なる臣下たちを見回す。

 アルダ=ギルズ、レギルレイスら、魔界に名だたる悪魔貴族達。

 彼らの燃えるホモ魂を、裏切ってなるものか。


「いや、だから俺はホモじゃ……」


 アル君が口を尖らせるが、もちろん抗議は受け付けない!


(考えなさい。考えるのよミルダレーナ! ホッモホモなシナリオで乙女のハートを掴みつつ! 百合の要素も入れられる……そんな新しい何かを!)


 葛藤、二律背反。

 思考の迷路の果てに、苦悩の暗闇の先に。


「……見えたッ!!」


 悪魔にも、天の啓示が下される時があるのだ。それが今、この時!

 ミルダレーナは、己の閃きに、その天才的な発想に、自らを恐れた!!


「男の娘×男の娘を! 書けばいいんだわッ!?」


「……あんた、業が深いな」


※ ※ ※


 ……で、こうなった。


「きゃー♪ アルちゃん可愛い! 次はもっと上目遣いで! きゃるるん♪ってポーズをお願いね♪」


「ううっ、なんで俺が……」


 これは、次回作のイメージを具体化するためのコスプレ撮影会である!

 主役は……金髪美少女アルちゃん!


 さらっさらの金髪に、ワインレッドの瞳で肌は真っ白!

 腰は細く、華奢で可憐。女王に写真を撮られ、羞恥に赤くなる姿、萌え!!


「つ、次はメイド服で! ほらスカートを! めくり上げてみましょう♪ ほら、ほらほら♪」


「み、見ないでぇ……」


 女王の命令に、涙目になりつつ従うアルちゃん。

 なんだこの美少女は!? 新キャラか!?

 メイド服も良いが、豪奢なドレスも似合いそうだ! あえて日本の制服や体操着を着せてみるのも悪くない!!


 大興奮のロリ女王! 彼女もメイド服を着て百合ん百合んすると完璧なのだが。

 金髪アルちゃん×銀髪ミルちゃん! りりなが感涙間違いなし!!


「こ、これは予想以上に萌えるわね! 照れを隠せてないのが、初々しくて最高よ♪ 貴方もそう思うでしょう?」


 女王、横の悪魔執事レギルレイスに問いかける。

 だが、幼女性愛イケメン悪魔レギルレイス。眼鏡をくいっと上げて。


「いや、私、男には萌えないのですが?」


 ……。


「アルダ=ギルズ君。女装して興奮とは、君は本当に変態ですね」


「好きでやってんじゃねぇェェェッ!!」


 残念! 新キャラの美少女かと思いきや、男の娘だった!!

 「腐界の女王」麾下の悪魔で一番女顔な美少年悪魔アル君、女王が男の娘のイメージを膨らませるための生贄モデルに選ばれてしまったのだ!

 可愛いが男! 男だが可愛い!

 「それでもいい!」という猛者は挙手!!


「ハァハァ、アル君たら女の子の格好似合いすぎ! 今後の出番は、全部女装でいきましょうか♪」


「断固、断るッッ!?」


 ……百合魔法少女と悪魔男の娘。どちらが萌えるか、決着の日は近い?

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