第12話 愛輝く星の天使の剣⑧

「ふははははははははっ! せいぜい地べたで足掻くがいい!!」


 戦闘機の上に立ち、上空から高みの見物を決め込む悪魔ブライファルケ。

 彼の魔力に操られた乗り物達が、鋼のモンスターと化して私達に襲い掛かる!


「完全に、囲まれてるッ……」


 大小様々の車やバイク……魔力の影響か、やたらトゲトゲ、ゴツゴツしたデザインに変貌した鋼鉄の殺戮兵器。

 その数……数千台!!


 血も凍る凶暴なエンジン音を上げて、私のいる狭山市駅前広場を包囲する!!


 ここで、戦闘状況を判断。

 私の取るべき選択肢は二つ。


 1番。いくらなんでも多勢に無勢。遮蔽物の多い商店街側に誘い込んで、少しずつ仕留めるか。


 もしくは2番。上空の悪魔が何か仕掛けてくる可能性だってあるし。

 見晴らしのいいこの広場から動かず、自らの火力を信じて迎え撃つか。


「ねえ、ステファニー。あの車達、人が乗ってるか分かる?」


 少し待ってね、とステファニー精神集中、魔力感知。


「いや、全て無人だね。中に生体反応は感じないよ!」


「オッケー、ステファニー!!」


 ならば! 存分にやっちゃいます!!

 選択肢は2番よ!


「『絢爛たる魔剣舞踏会ソードダンス=フルバースト』ッ!!!」


 私の18番、千本の黄金魔剣乱舞による、広域殲滅魔法!!


「いっけぇぇぇぇーッ!!!」


 魔を断ち邪を穿つ、聖なる閃光!

 一体一体が神話級兵器の破壊力を秘めた、剣のミサイル!

 魔力の余波でアスファルトをえぐりながら疾走する光の刃は、一瞬! 一瞬で鋼鉄のマシーン達を貫通、鉄屑にするなんて生温い、分子レベルで塵も残さず消滅させる!!


 光、光、光の乱舞!! 千本の魔剣による蹂躙のショータイム!!


「あ、圧倒的じゃないか我が魔法少女は!?」


 ステファニー、ガッツポーズ!


「やっぱり、魔剣を次々飛ばすのって強いよね! 某英雄王は言うまでもないけど、FF4でもよくエッジに包丁投げさせてたよ、僕は!」


 いや20年以上前のゲームをたとえに出されても。私産まれてないし。


「気を付けてマジカル☆リリィ! まだまだ敵はいるわ!」


 撮影しながら早百合。ちなみに彼女は、私が地面に付き刺した数本の魔剣で張った、魔力バリアの中。


 彼女の注意通り、黄金魔剣の破壊の旋風を掻い潜り、暴走してくる鋼鉄モンスター!

 魔トラックに魔バスに魔タンクローリー! 魔バイクに魔自転車、魔スケートボード!

 ……スケボーって、乗り物?


「こんなモノぉっ!!」


 私は更に魔力を集中。宙を翔ける魔剣がスピードアップ!!

 風を追い越す速度で3次元を踊る黄金魔剣が、悪魔のマシーン達を切り刻む!!


 爆発! 夜の狭山市は、戦いの火花で眩しいくらい!!


 その爆炎の中から、次に襲い掛かってくるのは!?


「……装甲車ッ!!」


 近隣の自衛隊基地から奪われたと思しき装甲車。

 他のマシーンとは違い、初めから戦闘の為に造り出された兵器!

 邪悪な魔力を注ぎ込まれたその姿は、さながら鋼鉄のべヒモス! 感じるプレッシャー、威圧感も桁違い!!


 けど!


「負けない! 百合魔法少女は、無敵よ!!」


 私は拳に魔力を集中! 私のこの手が、真っ赤に燃える!!

 その掌に輝く、キングオブ〇ートの紋章!!


「聖拳突きィィィィーッ!!!」


 流派東〇不敗かと思った? 次元覇〇流でした!

 違いがわかるかな、皆?

 うち、お父さんがガノタなのよね!


 ……てか今回、伏字多いわね。


「次元〇王流、聖槍蹴りィィィィーッ!!」


 限界なんてない! 百合魔法少女の力に限界なんて無いのだから!!

 限界なんて無いって君の言葉に憧れてこの手を伸ばす私の、必殺の一撃!

 無限の魔力で、最強のパワーで、魔強化装甲車を粉砕ッ!!


「やるねマジカル☆リリィ! 徒手空拳でもこの強さ!! それでこそプリ〇ュアだよ!!」


 待て私はプリキ〇アじゃないし。

 もしかして、私をこっそりプリ〇ュアオールスターズ映画に混ぜる作戦、まだ進行中?


 とか言ってたら、まだまだ来るよ魔装甲車!!


「一気に行くわよ! 次元覇〇流、旋風ッ、竜巻蹴りィッー!!」


 風を呼ぶ魔法少女な私! 黄金の竜巻となって、敵のマシーンを吸い込む、吸い込む、ダイ〇ンの掃除機のように吸い込む!!

 破壊のサイクロン、破壊のハリケーンとなった私の前に、数千の悪魔兵器、次々と爆散ッ!!


「ちなみに足技が多いのは! パンチラをアピールする為だよ!」


 ステファニーの余計な解説!

 べ、別に私はパンツ見せたいとか思ってないからね!?


「どーよ、これで! 次は変質者! あなたの番ね!!」


 悪魔の車軍団は、ほぼ全滅。私は、上空のブライファルケをビシッと指さす。


「ふん、少しは美しい戦いだったが……まだ、奴がいるぞ?」


 旋回する戦闘機の上、腕組みする全裸悪魔。

 嘲笑う彼の言葉に合わせるように、近付く地響き、更なる轟音!?


「なにか……来るッ!?」


 轟音、迫る破壊圧。

 その正体は!!


 ……列車ッ!!


「急行、飯能行き……ッ!?」


 なぜ!? 狭山市駅は西武新宿線! 飯能行きは通らないのに!?

 そうか! 池袋線の稲荷山公園駅から奪ってきたのね!?


 あ、そこはどうでもいい?


 レールを無視して、駅の建物をブチ破り現れたのは、悪魔の邪悪魔力に汚染され、漆黒に染まった列車!!

 10両編成!!

 装甲車等と同じく、トゲトゲしたデザインに変貌し、生物のように荒れ狂う姿はまるで! 鋼鉄の大蛇!!

 神すら食い殺すヨルムンガンド!!


 こ、これはちょっと! 他と質量違い過ぎない?


 たじろぐ私へ、ステファニーが叱咤する。


「負けるなマジカル☆リリィ! 百合の力を信じるんだ! プリ〇ュアの皆さんなら、こんなの片手で止めるよ! あの子達豪華客船とかだって止めるんだから!!」


 だから私はプリ〇ュアじゃないってば。

 ……でも、まぁ。


「上等ッ! これくらい止めずに、宇宙最強は名乗れないッ!!」


 腰を入れ、構える私。パンツすっごい見えるけど、羞じらうのは後!


 炎に包まれた夜の町、迫る暗黒の鋼鉄大蛇!

 さながら神話の戦争ラグナロク、神々の黄昏の再現!!

 でも、恐れない!

 私は百合魔法少女、神話の英雄たちにも負けない、人類の希望、理想の具現なのだからッ!!


「どすこぉぉぉーいッ!!!」


 ガッシーンと!

 土煙上げて、数百メートル押されながらも! 正面から暴走列車の巨重を受け止めて見せる!!

 どう、ステファニー? これならキュアブ〇ック先輩にも負けないよね!?


「掛け声が可愛くないので減点!!」


「なんですとぉッ!?」


 ま、まあ、どすこいはおかしかった? 魔法少女の掛け声として。


「まずは見事! だが受け止めただけで終わりと思うなッ!!」


 上空で観戦する悪魔ブライファルケ。

 その言葉通り、私に止められた列車は、全身から触手状の機械を出す。先端にはドリル!

 機械機械してるので、エッチな触手ではなさそうだけど。


 もちろん、黙って見てたりしません!!

 気合一発! 全身全霊、渾身の力で!

 超重量の鋼鉄大蛇を、10両列車を天空へ! 投げ飛ばす!!


「Wasshoi!!」


 気合の雄叫び! 日本人が困難を乗り越えるとき叫ぶパワーワード!!


「カッキェー! 分からない人は『ニンジャス〇イヤー』を読もう! でもやっぱり可愛くないから減点だ!!」


 上空でじたばたする魔列車を、私は指差す。

 追撃の黄金魔剣達!


「『嵐の夜の魔剣舞踏会ソードダンス=ブレイドストーム』ッ!!」


 天空を舞う千本の魔剣が、巨獣を食い殺す狩猟者となって、鋼鉄大蛇の巨体を切り刻む!

 斬! 斬! 斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬ッ!!


 爆発! 処刑完了ッ!!


 夜空を彩る破壊の花火を背に、私はポーズを決めます! 飛び散る汗!!

 こんなにストレートに暴れたの、久しぶりかも?


 ……か、快感☆


 撮影してる早百合が、目をハートマークにしてキャーキャー言います。


「素敵よマジカル☆リリィ! 戦う姿カッコよすぎ! 結婚しよっか♪」


 て、照れるし。

 私達、もう結婚してるようなものじゃない♪ 毎日毎晩、キスしてるのだもの♪


「戦う美少女の汗って綺麗だよね!」


 とは、ステファニーの談。


「舐めたら寿命伸びそう! 三国時代、魏の明帝曹叡が宮殿に美少女の汗集めて日夜飲んでたのは、有名な話だけど!」


 え、三国志ってそんな話なの!?

 うわ、逆に読みたいかも。


 ……いや待て落ち着け私。絶対、ステファニーに騙されてるし!


「ふはははははははははははは!! いいだろう、認めてやる!!」


 と、天空より降り注ぐ邪悪な声!!

 戦闘機の編隊を引き連れ、大空の王を名乗る悪魔ブライファルケ!!


「貴様は! 俺様が直々に戦うに値する! さあ、美しい戦いを始めるぞぉぉッ!!」


 遥か上空から迫る圧倒的オーラ、大悪魔の脅威!!


 でもやっぱり、全裸なんだよね……。

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