第12話 愛輝く星の天使の剣

第12話 愛輝く星の天使の剣①

 もはや存在自体が罪人!

 全裸でフル〇ンに、鎖を巻き付けた姿の美男子悪魔ブライファルケ!


 夜の自衛隊入間基地に現れた、恐るべき闖入者チンにゅうしゃに、


「服を着ろ貴様ァァァァァァッ!!」


 基地警備隊員の怒りの絶叫がこだまする!


「ふん、愚かな! この俺様の美しい肉体を隠せだと!? それこそ、美への冒涜ぼうとく! 許されざる大罪であろうがッ!!」


 ちん〇んを揺らしながら、堂々と語る悪魔ブライファルケ!

 その顔に、羞恥の色など微塵みじんも無し!

 自らの美貌、鍛え上げられた筋肉に絶対の自信を持つ彼にとって、宇宙最高の芸術作品たる己の裸体を隠すなど!

 わらうべき愚行なのだ!!


「さぁ、俺様の美裸体に酔いしれなぁッ!!」


 ……アホである。イケメンなのは疑いようがないだけに、あまりにも残念であるッ!!


 動揺する自衛隊員達。彼らはノンケだった! ホモなら魅了されたかもしれないが!


「落ち着け村田! とりあえず射殺するんだ!!」


 なかなかアグレッシブな隊員である。

 だがやむを得ない! 基地に全裸で侵入するなど、テロリストもびっくりの危険な相手と認識するしかないではないか!!


 次々と駆け付ける警備隊、悪魔に拳銃を、機関銃を向ける!


「撃てぇぇぇぇぇぇーッ!!!」


 炸裂! 炸裂! 炸裂!

 稲荷山公園の夜闇を切り裂いて、機関銃から火花が乱れ咲く!


 しかし!?


「おのれ貴様らぁぁッ!! この俺様の、美しい筋肉に傷がついたら、どうするつもりかぁぁッ!!」


 怒れるブライファルケの前に、これは、何としたことか!?

 装甲車が駆けつけ盾となる! 銃弾を防ぐ!?


 しかも、おお、これはいったい!?


 装甲車は無人なのだ!!


「美を解さない人間どもめ! 貴様らも、あの貧弱なロリロリ女王と同じ! 救いようのない愚か者だなァァッ!!」


 更に現れる装甲車、装甲車、装甲車! 否それだけではない!

 トラックに乗用車にバイク、自転車に三輪車と西武線の列車まで!?

 しかも全て無人である!


 あらゆる乗り物が、悪魔に仕える兵隊たちのようにブライファルケの背後へ!!


「これが、俺様の魔法! 鋼鉄のマシーンたちを下僕に変える能力だ!!」


 三輪車は鋼鉄のマシーンだろうか!?

 それは置いておくとして、訓練された自衛隊員達も。この非常識な襲撃者には、戦慄するしかない!


「……な、何者なんだ貴様?」


 呆然と呟く言葉に、悪魔は邪悪に笑い、


「さあ、恐怖と共に! 俺様の美しさを記憶に刻んで果てろォォォォォォッ!!」


 ……そして。蹂躙のショーが始まった。

 阿鼻叫喚の悲鳴、銃声、爆発音を、涼しい顔で聞き流しながら。

 男爵級悪魔ブライファルケは、航空自衛隊基地の格納庫へ向かう。


「さて、では天空の王たる俺様に、相応しいモノを頂くとしようか?」


 ※ ※ ※


 私、宮野りりなは。

 自衛隊基地があるとはいえ平和な町、私たちの狭山市でかつて聞いたこともないサイレンに。


「……なに、この音?」


 眠りを妨げられた。

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