第10話 鮮血の死闘! ただしその鮮血は鼻から出る!!④

「水よ、我が意思に応えよ! 求めに従い、顕現せよ魔の眷属けんぞく!!」


 ちょっとごつめだけどイケメンな貴族服悪魔、アハートヴァール!

 力強い詠唱とともに、片手を天に掲げる!


 ゴゴゴゴゴ……と川越水上公園が揺れ、プールの水が波打つ、逆巻く!?


「水が! 悪魔の元に集まっていく!?」


 超常の力に導かれ、、悪魔の頭上に集まる水塊。

 やがて、それは!


「見せてやろう、大海を統べしヴァールの力! 水の支配者たる我の、美しき魔法を!!」


 悪魔アハートヴァール、邪悪に唇を歪め、天へ掲げた掌を、ぐぐっと握る。

 すると!? 空に浮かぶ水塊が爆裂!

 飛散した水は、何かの形を取り始める!?


「そう、これが我が魔法。水を媒介に、我が忠実なしもべを具現化させる能力!! さあ、たたえよ、仰ぎ見よ! この世で最も美しく、力強い我が魔軍の勇姿を! そして恐怖と絶望に、震えるがいい!!」


 彼の邪悪魔力が水に溶けあい人型を成し!

 そして現れる闇の軍勢!!


 その姿は!!

 ああ、その姿は!?


「ふはははははは! これぞ我が大魔法! 我が理想の具現、『ホモの軍勢』よぉッ!! どうだ、水で作った半裸のイケメン美青年軍団は、美しかろぉぉぉぉぉッ!?」


 ……うーわー。


 あんまり気が進まないけど、一応解説するね。

 悪魔アハートヴァールが水を元に創り上げたのは、ブリーフ姿の半裸イケメン軍団、その数、数百。


 彼の趣味なのか、細マッチョっていうの? すらっとしてて、それでいて引き締まった肉体美。

 でも、なぜだろう! 爽やかさよりホモホモしさを感じるよ! ブリーフ一丁だから!?


 てか! こんなにストレートにガチホモの悪魔って初!?


「「ホ、ホモキター♪」」


 早百合と、そして!

 またまたホモと聞いて飛び起きたミルちゃん、瞳をキラキラさせて夢見る乙女モード!?


「ナイスホモ!! いちいち筋肉がエロティックなのがガチっぽくて最高よ!?」


「ホモハーレム! 魔法でホモハーレム作成!? なんて素敵な魔力の使い方なの!? これはばっちり撮影するしか!?」


 楽しそうね二人とも! てかミルちゃんは避難して!?


「おお、わかるか娘たちよ! この素晴らしい魔法の価値が! そうだろうそうだろう、これぞ地上で最も華麗にして優雅、美しき魔技よ!!」


 腰に手を当て、得意げ悪魔。


「って、あの方が目覚めておられるぅぅ!?」


 なぜか突然慌て出す!


 と、とにかく! ホモに夢中できゃーきゃー言ってる早百合とミルちゃんには悪いけど!


「……来たれ、魔剣よ」


 私も空に手を掲げる。雲を斬り拓くように、空へ。

 そして、私の魔力が光の粒子となり、天に複雑な紋様を描き出し!

 次元の壁を越えて、魔方陣より姿を現すは!


 我が魂の具現、聖なる百合魔力から創造された、千本の黄金魔剣!!


 で、この剣で何をするかというと、もっちろん!!


百合魔法剣ホーリー☆ラブキャリバー一斉掃射!! 『怒れる嵐の魔剣舞踏会ソードダンス=レイジングストーム』ッ!!」


 このマジカル☆リリィ、男に容赦せず!!

 神話級の力、暴虐なまでの力を宿した千本の魔剣が、刃の雨嵐となって、水の魔軍、半裸イケメン軍団をずたずたに切り刻みますよ!!


「「ああっ、せっかくのイケメンたちが!?」」


 もったいない、と叫ぶ早百合とミルちゃんを見て。


「……む」


 百合娘として、むっとしちゃうのはしかたないよね!

 マイエンジェル二人の視線を奪う悪魔、許すまじ!


「殲滅せよ、黄金魔剣!!」


 いつもより念入りに! 徹底的にプールを絨毯爆撃です!!

 水のホモ軍団、欠片も残しはしないし!


 殲滅、殲滅、殲滅殲滅殲滅殲滅殲滅殲滅、男殲滅!!

 はい、全滅!!


「な、な、なななななな……!?」


 自慢の魔法を破られ、青ざめる悪魔アハートヴァール。


「か、顔色も変えずに、この美しい軍団を滅ぼすなど!? 貴様、美的センスゼロか!?」


「余計なお世話だし!?」


 でもホモ悪魔、まだ心折れず!


「そ、そうか! わかったぞ! 今の細マッチョ、私の好みにはどストライクだったが! 貴様は、こっちだったのだな!?」


 再び悪魔、水を集める! そして再生、水で創られた魔の軍勢!

 でも、さっきとはデザインが違って!?


「どーだッ! 純粋無垢なショタッ子美少年軍団だ! 可愛いだろう、ペロペロしたくなるだろう♪」


「……殲滅ッ!!!」


 はい、黄金魔剣一斉掃射!

 女の子と見まごうショタっ子軍団、私の求めるモノに近いけど、惜しい!

 性別がね! 決定的に違うんだよねー!!


「ま、また全滅……」


 呆然とする悪魔。


「だ、だが、まだあきらめんぞ!! 必ず! 貴様好みのホモを見せてやる!!」


 いや、あきらめていいですよ?

 でも悪魔、次々と水を呼び寄せ半裸男の軍団を創り続ける!


「次はこれだッ! ダンディ戦国武将ズ、ブリーフでなくふんどしなのがこだわりよ!」


「殲滅ッ!!」


 はい魔剣で爆撃ね!


「な、ならばメガネ男子! 半裸でメガネはエロかろう!?」


「殲滅ッ!!」


「くっ残虐な! ならばワイルド系イケメンはどうだ!?」


「殲滅ッ!!」


「大人の魅力あふれるハードボイルドダンディ!」


「殲滅ッ!!」


「アニキ!!」


「殲滅ッ!!」


「男の娘!!」


「う……!? せ、殲滅ッ!!」


 ……そして。ついに悪魔は膝をつく。敗北の現実を受け入れまいとするかのように、憎々しげに私を睨みながら。


「お、、おのれおのれおのれぇぇぇッ!! 貴様には! 我が魔法の素晴らしさがわからんのか! 男の肉体美が! ホモの美しさがわからんのかぁぁーッ!?」


 いや、百合魔法少女に、そんなコト言われましても。


「くっ! ホモの矜持きょうじに賭けても! これだけは避けたかったが……!」


 ふらふらしながらも、悪魔アハートヴァール、まだ立ち上がる。


「まだやる気? いいかげん諦めなさい! 私、男に興味無いし!」


 うわ、自分でアブノーマル発言しちゃったし!?

 い、今のはついだからね! ノリだからね!?


「く、くくく、わかっておるわ! だからこそ貴様には、この禁断の技を送ろう! 我が信念に反する邪道の極み、この命すらも縮めるであろうが……」


 悪魔、悲壮なまでの決意を瞳に込めて!


「だが、すべてはレギルレイス様のため! あの超絶イケメンな方に喜んでいただくためなら!! この命捧げるもホモの本懐なり!!」


 水を集める!! 今までより多く、プール中の水を!!


 そして!!


「これで! どうだぁぁぁぁぁぁーッ!!」


 悪魔アハートヴァール、その全身全霊を燃やして、水から生成させた魔軍の姿は!?


「は、裸の女の子キター!?」


 やられた♪ やられました♪ 裸の女の子を何百人も創るなんて♪

 私の鼻血が、プールサイドを染めるよ♪(血液ゲージ、70%に減少! 0で死にます!)

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