第9話 プールサイド、鼻血に染めて④

「あら、人間達の水着も悪くないわね! 涼しいわ♪」


 悪魔の首領「腐界の女王」ミルダレーナ、執事悪魔レギルレイスの用意してきたスクール水着に早速お着替え。


 ロリサービスシーンに視聴率が30%アップである!


「とても可愛いらしいですよ、お嬢様。やはり可憐なお嬢様には、可憐な衣装が似合いますね」


 にこっと微笑む悪魔レギルレイス。さすが美形、女の子を褒めるのも実に様になっている。


 だが、ここで考えてみてほしい。

 この男、よりにもよってスクール水着を買ってきて、ロリッ娘に着せているのである!

 ほとんど犯罪の匂い!


 くだんの褒め言葉も、「ハァハァ、つるぺたミルたんにスク水ぶひぃぃ!」というのと内容は変わらないのに! 彼レギルレイスがイケメンなせいでキモくならないのだ!

 なんたる卑劣!!


「せっかくですので、プールのチケットも取ってありますよ。お嬢様はここの所働きづめのご様子、羽根を伸ばされてはいかがですか?」


 侯爵級悪魔レギルレイス、女王にはとことん甘い。


「でも、我が社の新作ゲーム、完成が近いのよねー。社長として休むわけにはいかないわ!」


「シナリオは完成しているのでしょう? 元よりスケジュール管理は私の務め、一日くらいお嬢様が休まれても問題ないよう、私が調整しますので」


 うーむ、としばし考え込む女王。


「……そうね、貴方に任せるわ。プールでホモ観察するのも楽しそうだし♪」


 プールでホモ観察できるのか、疑問に思った方。

 それは、まだ女王ミルダレーナの恐ろしさを理解していないのだ。

 当然、見つけた男たちを脳内で強制カップリングである。腐女子の妄想力は無限なのだ。

 この一瞬だけでも女王の頭の中には、プールを舞台にしたホモシナリオが、10個は描かれている!


「ふふ腐、待ってなさいホモたち♪ この私が次回作のネタにしてあげるわ! じゃ、行ってきまーす♪」


 ゴスロリドレスに戻り、水着とチケットを持って女王ミルダレーナ様お出かけ。


 にこにこと笑顔で手を振り返しつつ見送るレギルレイスを、ようやく氷から抜け出たアル君が睨む。


「いいのかよ、女王を行かせちまって。〆切前で修羅場なんだぜ?」


「問題ありません。私のスケジュール管理は完璧です」


 眼鏡をくいっとしながらレギルレイス、


「お嬢様のお休み分を穴埋めする方法なら、ちゃんと考えてますよ」


 さも当然のように、恐ろしい暗黒企業的非人道発言を!


「お前たちが死ぬまで働けばよいでしょう。お嬢様のための犠牲になれること、光栄に思いなさい」


 そして帰宅禁止、睡眠および休憩禁止の命令が下される。「悪魔のつばさ」社内の全悪魔へ!

 まるでブラック企業、ある意味悪魔らしいが!?


「お、横暴だー!?」


 逆らう者、手を止める者は即氷漬け! 悪魔たちの受難が始まった!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る