第9話 プールサイド、鼻血に染めて③

「で、どうだ女王。このエッチシーン原画、過激すぎないか意見を聞きたいんだが?」


 「悪魔のつばさ」社の社長として、じっくりと吟味するミルダレーナ。


「す、素晴らしい! 素晴らしいわ、ナイスホモ♪ このホモたちの恍惚とした顔♪」


「そ、そうか?」


 褒められてまんざらでもないアル君である。

 彼がホモかは別として、ホモ絵描きとしては真摯にホモに向き合っているのだ!


「たださ、うちのゲームのユーザーって主に、ガチの人じゃなく腐女子だろ? ここまで生々しく描いちゃうと、女は引くかなーとか思うんだが」


「大丈夫よ! 我が社の18禁ホモゲーは、過激さが売りだもの! ここまで付いてきてくれた乙女たちなら、きっと喜んでくれる! 信じましょう!!」


 そして女王、つるぺたな胸を張り、


「迷わずゴーよ! 全ての責任は、私が負うッ!!」


 さすが悪魔の女王、貫録の一言である。

 こうして、エッチシーン(男同士)の方向性は決まった。


 だが女王、テンションが落ち着くと、暑さにダウン気味である。


「それにしても暑いわね……」


 漆黒のゴスロリドレス、そのロングスカートをめくり上げ、ぱたぱたしてパンツに風を送る!

 ぱたっ♪ ぱたぱたっ♪


 はしたなく思われるが、見た目10歳未満の女王がやると無邪気に見えてロリ可愛い!

 ちらちら見える白いおみ足の萌え破壊力は、もはや計測不能の領域だ!


「おまっ、ちっとは羞じらいをだな……」


 巨乳派のアル君はともかく、ロリペド紳士達なら、鼻血の海に沈むこと間違いなしのチラリズム!

 太ももに頭を挟まれたい!?


 もし、もしもである。

 彼女の野望が、「人類総BL化計画」でなく「人類総ロリコン化計画」であったなら。

 それは、彼女が人類の前に姿を現すだけで、一瞬で完了しただろう。

 おお、考えるだに恐ろしい!!


「もう、どこ行ったのよ、うちの冷房担当はー!?」


 可愛らしく両手を広げてぷんすかする女王。


 ……それに答える、新たな悪魔の声。


「誰が冷房担当ですか、誰が」


 新たな声の主はため息をつきながらも、指をぱちんと鳴らす。

 すると!

 なんと一瞬にして部屋は北極のごとき氷漬けに!? 涼しい!


「これでよろしいですか、お嬢様?」


 うやうやしく女王にお辞儀する、青年の姿の悪魔。

 眼鏡を掛けた、優雅なる氷の美貌の悪魔執事。


「レギルレイス、ただいま戻りました」


 悪魔たちのナンバー2、強大なる氷獄コキュートスの覇者。

 侯爵級悪魔レギルレイス。


 ……百合魔法少女マジカル☆リリィにとって、最凶の宿敵となる男である。


 ※ ※ ※


 髪は雪のように白く、瞳は凍てつくアイスブルー。

永久凍土が人の姿をとったような美青年。それが悪魔執事レギルレイス。


 執事服の上からでも、その長身は鍛え上げられているのが、よくわかる。

 甘いマスク、眼鏡の下の鋭くも理知的な瞳。

 ギリシャ彫刻的な均整美の体現者ともいうべき超絶イケメン!


 だが、やはり気になるのは!

 彼もホモなのかどうかだが!?


 一方女王様、彼が呼び出した抱き枕サイズの氷に、頬擦りしながらご満悦。


「冷たい♪ 涼しーい♪ さすが私の執事ね!」


「そ、それいいな!」


 アル君、提案する。


「〆切前で他の連中も死にそうなんだ! ぜひ開発室にも、その氷のやつ、やってくれよ!」


 仲間思いのアル君、やはりいい奴である。


 しかし。

 悪魔執事レギルレイス、とっても嫌そうな顔で、


「は? なぜ私が、お前たちのために?」


 眼鏡をくいくいしながら、きっぱり!


「私の魔力はお嬢様のためのモノ。お嬢様以外の悪魔など、蒸し焼きでも串焼きでも、勝手になればよいでしょう」


 女王ミルダレーナ命!なレギルレイスの発言に、アル君思わず禁句を口にする!


「こ、このロリコンめ!」


 次の瞬間には氷漬け!? レギルレイス容赦せず!


「ところでお嬢様、新作の宣伝のために街を回ってきたのですが」


 悪魔のナンバー2、侯爵級悪魔レギルレイス。

 彼の「悪魔のつばさ」社での仕事は渉外や広告宣伝など多岐に渡る。

 冷房担当はメインではない!


「街で、お嬢様にとても似合う、涼しそうな装束を見つけました。そのドレスでお暑いなら、こちらに着替えてはいかがですか?」


 クールなイケメン顔で、彼が差し出すのは。


 スクール水着。

 紺のスクール水着である! しかも「みるだれーな」と平仮名の名札付き!?


「やっぱロリコンじゃねーかッ!?」


 氷の中からアル君ツッコむのだった!

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