第8話 我が心、明鏡止水 ~されど羞恥は烈火の如く~⑨

「百合魔法少女め、魔力が上がってるな? 早く止めなければ……」


 子爵級悪魔ザフィーアヴォルフの最期を見届け、少年悪魔アルダ=ギルズは唇を噛む。


「……待ってろ。お前は、俺が必ず倒す!」


 ※ ※ ※


 夏祭りの花火も終わり、川原の土手には涼しい夜風。

 集まっていた観客も浄化されたスッキリ顔で去り、草むらで私は……早百合に誘惑されてます!?


「ふふ、やっと二人きりだね♪」


 肩を寄せてくるのは良いとして、浴衣をパタパタ、胸の谷間をアピールしてくる!

 こ、このエロ娘!


「あ、あのね早百合。二人きりって、ステファニーが見てるよ?」


 マリア様ならぬステファニー、ガン見です!?


「あ、僕のコトは石ころか何かと思ってね! 思う存分、百合百合していいよ! むしろして下さい!!」


「ですって。さぁ、りりな♪」


 きゃっ、と顔を赤らめながら早百合。


「レッツ狼! さっきの続きだよ♪」


 羞じらいながら、浴衣を脱ぎ脱ぎするのやめてぇっ!?


 し、刺激が強すぎるし!?


「ま、待って早百合、お願い待って!」


 うわ、我ながら顔真っ赤! 涙目で両手をぶんぶん振ります!


「わ、私達! 中学生よ!? その、そんな関係は早いと思うの!?」


 風紀の乱れは許しません、正義のヒロインとして!


 てか、やっぱり恥ずかしい! へたれと呼ばば呼べ!


「むぅー、これだけ盛り上がっておいて今更。りりなは、私のコト嫌いなの?」


 むくれる早百合、可愛い♪


 じゃなくて!


「……ずるいよ、そんな言い方」


 わかってるくせに。

 好きでない人と、キスなんてしないよ?

 たとえ、命がかかっていても。乙女の唇は、神聖ですから!


 ……ここで私は、ちょっと真面目に考える。


 百合に、えっちは必要か。


 ……うん、もっと触れ合いたい、一つになりたい気持ちは有る。


 でも、今夜の悪魔との戦いを経て、こうも思うの。


 私は、あんなエロ悪魔とは違う。エッチな気分に流されるんじゃなく、もっと心と心の繋がりを大事にしたい。


 まぁ、つまりですね?


「私は! えっちよりもキスが好き!! 私と、キスして下さぁい!!」


 こういうコトです!


 キスしたい!

 ちゅーしたい!

 接吻したい!

 口づけしたい!

 唾液の交換したい!

 熱いベーゼを交わしたいです!


 もちろん女の子同士で♪


「だって、キスの方が愛し合ってる感じするもん! 百合ん百合んだもん!!」



「わわ、落ち着いて、りりな! 泣かないで!?」


 うん、自分でもビックリ!

 泣いちゃってるし!?


 でも!

 これが今の私の答え!!


 もっともっと乙女同士で愛し合いたい!

 清らかな百合を追求したい!!


 そのためにはえっちよりもキス!

 カラダで愛し合うより、魂で愛し合いたいの!!


「お願い、キスして! 早百合お姉さまって呼ぶからぁっ!!」


 自分でも新発見!

 私には受けの願望、甘えたい願望があるみたい!?


 てか今の台詞、後で冷静に思い返したら、黒歴史になるかもね!


「……うん、わかったよ、りりなの気持ち」


 私を抱き締め、優しく唇を合わせて、早百合は微笑む。


「そうだね、キスが一番、百合らしいよね。カラダの本能に逆らって、男の子じゃなく女の子同士で求め合う。それが百合だもんね♪」


 ちゅっ♪

 ちゅー♪


 何度も何度も、何度もキスしてもらって、私の魂が喜びに震えるのを感じます♪


 そう、これこれ!

 この唇みたいに、甘く清らかなのが百合だよね♪


 とか思ったら!


「ふふ、なんて言うと思った?」


 わわ、早百合の目がキラーンてなった!?


「私は、両方好き! がおー! 狼さんになっちゃいまーす♪」


「きゃー! 食べられるー!?」


 早百合も狼、エロ狼だったのね!?

 草むらに押し倒され! 浴衣を脱がされる私!?


「ふふ、この期に及んで一線越えないなんて認めません♪ 視聴者の皆さんの期待に応えなくちゃ! さぁ、めくるめく官能の世界にレッツゴー♪」


「た、助けてステファニーッ!!」


 見守る彼に助けを求めるけど!?


「うんうん、やっぱり百合はいいね! えっちが有れば更に最高だよ!!」


 残念、百合えっち肯定派でした!


「!!!!!!♪♪♪♪♪♪」


 夏の星空に、私の声にならない声が吸い込まれていった。


 どんな声かって?

 ひみつ。


〈続くッ!〉

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