第8話 我が心、明鏡止水 ~されど羞恥は烈火の如く~③

 ノーパン魔法少女、はっじまるよー!?


「ウォォン!? その格好はカモンてことか!? 俺と子作りオッケーってことかぁーッ!」


 真の姿、人狼の姿を顕した悪魔ザフィーアヴォルフ、目をハートにして発情!


 さ、最悪だし!

 よりにもよって、こんなエロ悪魔が相手の時に、ノーパンとか!


 そもそもこの魔法少女コス、ありえないほどのミニスカ!


(ちなみに、パンツを隠せないスカートに意味は有るの? という私の疑問に、ステファニーは『スカートがあるから、パンチラになるんだよ! 僕らはパンツが見たいんじゃない、パンチラが見たいんだッ!』と力説)


 この短いスカートじゃ、立つことも出来ないし(泣)!


「は、謀ったわねステファニー! し、ししし知っててあなたは! 知ってて私に、『浴衣の下は穿いちゃダメ』なんて教えてきたのね!?」


「違うよ! 無実だよ僕は!? ホントだよ、さっきまで忘れてたんだよこの設定!!」


 悪魔少年アルダ=ギルズ、さげすんだ目で。


「な、なんて卑猥な魔法少女だ……」


 ち、違うし!

 このノーパン、私の意思じゃありませんから!?


「は、鼻血! 出血多量で早乙女早百合、命のピンチかも♪」


 げ、早百合は鼻血をどっくんどっくん噴き出して倒れてるし! でも嬉しそう!?


 びくびく痙攣けいれんしながらも、ビデオカメラは手放さない!


「でも! マジカル☆リリィのノーパン撮影、命を掛ける価値がある! この身萌え尽きようと、記録しきってみせるから!」


 早百合、もっと命は大事にしましょうね?


 とにかく私、戦う前からピンチです!


「負けるなマジカル☆リリィ、立て、立つんだマジカル☆リリィーッ!」


 ステファニーのエールに、私は前を隠しながら!


「立ったら、見えちゃうでしょうがぁーッ!?」


 その時だった!


『ホーッホホホホモ! いいざまね、百合魔法少女!』


「おわっ、女王!?」


 悪魔アルダ=ギルズ、慌ててポケットから小さな鏡を取り出す。

 高笑いは、その鏡からだ!


「なにその鏡、スマホ扱い!?」


 とにかく悪魔の手鏡から聞こえてくるのは、舌足らずのロリータボイス!


 この声、あ、甘い♪

 聞いてるだけで耳が、脳が萌え萌えとろけちゃいそう♪


 ……でも、どこかで聞いたような?


『初めまして、百合魔法少女さん。私は腐界の女王、悪魔を束ねし者』


 て、敵のボス!

 この声の主が!?


 鏡の中、その姿は影のヴェールに包まれ、今は見えない。


『ぷぷぷ、正義のヒロインさんがノーパンとか! やーらしいんだ♪』


 ほっといてよ!


『その恥ずかしい格好で、ザフィーアヴォルフと戦えるのかしら。言っとくけど、「爵位持ち」は強いわよ?』


「そう、俺は強いぜ! 特にベッドの上ではな! セッ〇スマシーンと呼んでくれ!」


 腰を前後に激しく振り、悪魔ザフィーアヴォルフが吠える!

 ……こいつ、去勢していい?


『ふふ腐、せいぜいがんばってね、百合魔法少女さん? もし負けたら、貴女、大変なコトになるから』


 どういう意味?


 鏡の中の影、悪魔の首領は、歌を口ずさむように、それでいて嘲笑うように言葉を紡ぐ!


『教えてあげる。貴女には、取って置きの呪いをプレゼントしたわ♪』


「な、何ですって!?」


「聞いてないぞ、俺達も!?」


 男悪魔二人も知らない様子!


 いったいいつの間に!?

 悪魔のボスは、呪いを飛ばせるとでもいうの!?


「……く、ぅっ!?」


 その時、私の胸の上、鎖骨の辺りに激痛が走る!


 見るからに禍々しい、恐怖を誘うような紋様が、妖しい輝きを放ち浮き出る!


「こ、これは!?」


「な、なんて邪悪な魔力! これは、世にも恐ろしい呪いに違いないよ!?」


 ステファニーに言われるまでもない、私の胸元に走る痛みが訴える!

 これは、この呪いは、あまりにも危険だと!

 どんな呪いか知ってしまうだけで、精神を蝕まれかねない、それほどに邪悪な呪いだと!


 でも、知らねばならないッ!


「くっ! 私に、どんな呪いを!?」


『ふふ腐、教えてあげるわ』


 鏡の中、悪魔は荘厳ささえ感じるほどに、重々しく告げる。


 まるで、死刑宣告のように。


『貴女が戦いに破れた時、我々悪魔に敗北を認めた時、その呪いは発動する。その時、貴女は……』


 ……ごくり。


『ちん〇んが生えるのよッ!!!』


 男達「「「な、なんだってー!?」」」


 ……ちょっと待て。


「あの、もう一度言ってくれます?」


『やん、悪魔といえど乙女の私に二度も言わせるとか、なんて羞恥プレイ! さすが百合魔法少女、恐るべき変態ね!』


 いいから! 言って!?


『ちん〇んが生えるのよッ!!!』


「なんじゃそりゃぁぁぁーッ!?」


「邪悪! 邪悪過ぎるぞ、その呪いは!?」


 この世の終わりのように、頭を抱えるステファニー、


「それじゃ、タイトルが『百合魔法少女マジカル☆リリィ』じゃなく、『ふたなり魔法少女マジカル☆リリィ』になってしまう! 語呂が悪いよ!!」


 語呂の問題か!


「そうだ、作品の根幹も変わってしまう! ふたなりとか男の娘とか嫌いじゃないけど! 百合とは別物だよ!! 僕らは純粋な百合が見たいんだよォォーッ!!」


『ホーホホホホモ! どう、恐ろしい呪いでしょう! そうなれば百合魔法少女もお終いよね!!』


 ……百合魔法少女、カラダの秘密。

 女の子とキスしないと死ぬ。

 キスするたびに、レズ度が進行。


 そして新たに追加。

 悪魔に負けると、おちん〇んが生える。


「あ、あんたらねぇ……」


 ステファニーといい、この悪魔といい!


「私のカラダで、遊ぶなぁぁー!?」

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