第8話 我が心、明鏡止水 ~されど羞恥は烈火の如く~②

 敵の魅了魔法とやらは不発に終わった。

 けれど、子爵級悪魔ザフィーアヴォルフ、余裕の表情で舌舐めずり!


「まぁいいさ、俺は悪い狼。嫌がるのを無理矢理喰っちまうほうが、趣味なんでね!」


「な、なんてスケベ……!」


 早百合を背中にかばい、悪魔を睨み付ける。

 けど正直、背中は冷や汗で濡れていた。


 感じる。

 この悪魔は、手強い。


 夜の川原、花火に照らされる獰猛な笑顔は、まさに狼。

 牙を剥き出しに、弱者を噛み殺すコトをためらいもしない、そんな狩人のオーラ。


 でも!

 私は負けない!


 私は百合魔法少女、こんな性欲全開のエロ悪魔に! 純潔を捧げるわけにはいかないッ!!


「いくわよ、早百合!」


「任せて、りりな!」


 互いに声を交わし、手を取り合って見つめ合い、うなずく!


 二人の絆で、想いの力で!!


 ……今ッ!


「変身……ッ!!」


 うん、するコトはキスなんだけどね?


「ちゅ、んっ、ちゅぅー♪ あぁっ、さっきエッチを邪魔されたせいか、歯止めが効かない!? ちゅぅー♪」


「わ、私も! りりなともっと、もっとキスしたい! 止まらない! ちゅっ、くちゅぱっ♪」


〈5分経過〉


「……あの、変身長くない?」


 私達の過激なキスに、男悪魔二人、顔を真っ赤にして聞いてくるけど。


「あと、あとちょっとだからぁ! ちゅにゅう、ん♪」


 いや、変身するための愛の力はとっくにチャージ済みだけどね?


 私も早百合も、浴衣の下はノーパン、ノーブラ!


 抱き合ってると、いつも以上に強く感じ合える、熱い鼓動!

 早百合暖かい! 早百合可愛い♪

 これぽっちのキスじゃ、ちっとも足りないし!


「はぁ、ん。早百合、早百合ぃ! ちゅーっ♪」


〈更に5分経過〉


 はい、私達はまだ唾液の交換中!


 少年姿の悪魔アルダ=ギルズの方なんて、諦めて土手に座り、花火見物してるし。


「ウォォォーン、もう我慢できん! 襲う!!」


 わわ、飛び掛かってくる悪魔ザフィーアヴォルフ!


 いつの間にか狼男の姿に!

 これが真の姿!?


「まだ物足りないけど、仕方無い! 最後にもう一回だけ♪」


 早百合と、魂まで吸い合うようなディープキス♪


「来たッ! キマシタワー!!」


 ステファニーの叫びと共に、大地に炸裂する黄金の花火!

 悪魔を吹き飛ばし、草むらを薙ぎ、溢れ出す聖なる魔力!

 そう、銀河の百合を、真実の愛を護るため! 今、降臨する私は!


「聖なる愛の護り手、百合魔法少女マジカル☆リリィ! 人類まるごと、百合ん百合んにしてあげる☆」


 凛々しく、可愛らしく、私はポーズを決める!


 ボリュームたっぷり、苺色の髪の毛!

 黒を基調にした、ノースリーブで動きやすい魔法少女コスチューム!

 そしてもう慣れた! パンツを全く隠してくれない、存在意義が不明の超ミニスカート!


 ……なのだけど。


「あれ、なんだかスースーする、よ?」


 悪魔達も、早百合もステファニーも、なぜか目を真ん丸にして、私のスカートを見てる。


 パンツ見えるのは諦めたけど、こ、これは……?


 スカートはある、ニーソックスはある。

 でも、その絶対領域に本来あるべきモノが、無い。


 お尻に、大事なトコロに直接触れる、夏の夜風。


 ……穿いてない。


「にゃぁぁぁぁぁぁッ!! ノ、ノーパン!? ノーパンなんで!?」


 く、草むらにペタンと座り込み、必死で前を隠す私!!

 でも、お尻は丸見えなんですけどぉッ!?


「ど、どどどどどどういうコトよ、ステファニー!!」


「ごめん! 説明してなかったね!」


 説明を求める私にステファニーは、


「百合魔法少女に変身した時、パンツだけは変身前と同じなのさ! で、今夜の君は浴衣ゆかた、パンツを穿いてなかったからね! だから変身後もノーパンになったという訳だよ! うん!」


 な、何をさらっと説明してくれやがりますか、このクマ公は!


 ノ、ノーパン魔法少女、はっじまるよー!?


「って、私は変態かーッ!?」

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