第3話 ダンジョン

「ダンジョンって、宝箱や魔物がいるあの?」

「それ以外になにがあるの?」


僕は答えを聞くやいなや、店を飛び出す。


「あれ?」


しかしそれっぽいものは特にない。

すると遅れて赤髪女性がやって来た。


「ダンジョンどこですか?」

「あれよ」


彼女の指さす方向には、小さな洞窟がある。ただの洞穴にしか見えないそれは、違うだろうと真っ先に視線を外したものだ。


「ウソでしょって顔ね。まぁ、無理も無いわ。あれは最近生まれたばかりの成長前のダンジョンよ」

「生まれる?成長?」


何?ダンジョンって生き物なの?違和感ある。


「えっと...あなたの国には無かったの?」

「お恥ずかしながら」

「恥じることでは無いわ。ただ、そうね、ダンジョンは成長し大きくなっていく。そう理解すればいいわ」


へぇ、面白い。どうやら成長の中で魔物や宝箱の種類が増えるらしい。


「最初、あの店もダンジョン目当てで来たのかと思ったのよね」


まだあなたの店が転移した話は信じきれてないけど。と彼女は言う。


「やっぱりダンジョンの周りに店を持つと稼げるんですか?」

「そうね、武器屋やアイテムショップはまず間違いなく冒険者が利用するわね」


まぁ、そこら辺は冒険者と切っても切れない関係だろう。


「あと冒険者がダンジョンで得た物を直接買い付けに商人が来たりするわね。あと大体ギルドが出張所を設けるわ。その結果お金の流れが生まれて、それを利用しようと色んな人が集まるわ。だからダンジョンの周りに街が出来ることも少なくないの」


今思ったんだけど、この人結構物知りだよね。経験から語られているのか、言葉に重みがあるような気がしなくもない。見た目は初心者冒険者なのに。


「だいぶお詳しいですね。実は相当ベテランの冒険者だったりします?」

「まぁ、そこそこかな?」


マジで?


「私は一応☆4の冒険者で、上から2番目のランクよ。この国では他に10人くらいいるけど」


冒険者のランク付けは、この世界では☆で表されるらしい。0の教習期間からこの国で2人しかいない5までの6段階だ。他にもチームでも順位が変わるらしい。


「私がリーダーのチームもあるのよ?後で合流する予定よ」

「あなたはこの新ダンジョンの調査とかですか?」

「まぁ、そうね。とりあえずそれぞれで周辺の調査をしているけど特に異常は無いわ」


この店以外は、とは彼女の言。


「ちなみにこれからこの周辺にも店ができていったりは...」

「するでしょうね。ダンジョンは誰の物でも無いって事になってるから、ここぞとばかりに色んな人が商売をしに来るわ」


ダンジョンが権力者の私物化を避ける為に、基本的にフリーらしい。つまりは僕が店を構えていても問題無いということ。ラッキー。


「ところで、あなたは...」

「アルシア」

「え?」

「あなたじゃなくてアルシアよ。アルシア・エント」

「あ、はいよろしくお願いします。エントさん」


急に名乗られても困るんだけど。なんて思ってたら、アルシアさんにめっちゃ睨まれとる。


「名前、聞いてない」

「ああはいはい。とうかです。ももはらとうか」

「トーカ、確かにここら辺では聞かない名ね」


名前を知られてもしかして、通報される?個人情報の取り扱い注意だった?


「それで、何?なにか聞きたそうだったけど」


僕が考え事をしていると、急に詰め寄られる。あ、この人美人だ。知ってたけど。


「その装備軽そうだけど、防御力が心配だなって思いまして」


彼女の装備は要所を守っているだけの軽装備に見える。防御力で考えてもやはり初心者冒険者といった感じだ。


「あ、大丈夫よ。これミスリル製だから」


ミスリルってあの、Theファンタジーの金属だよね。


「軽くて丈夫なあの?」

「そうよ」

「高価なんじゃ?」

「紙で紅茶飲むアナタよりマシなつもりよ?」


さよけ。


「それで、もう十分だと思うんだけど?」

「あ、はい。勉強になりました。店内に戻りましょう。お好きなものを選んでください」


僕達は店内に戻った。


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