コーヒー・アンド・ストッキング11

 凜と纏の関係は実に奇怪なものだった。

 友達でもなければ恋人でもない。孤独を癒すためにただ添い寝をするという純然たる関係だ。

 男女が同じ部屋で犯す過ちが起こることはなかった。二人は互いに恋愛感情を抱くこともなかった。ただ、特別な関係というニヒルな認識があるのみであった。

 あの夜以来、凜は纏の部屋に泊まることが多くなった。彼女の部屋にノートパソコンを持参して執筆することもあった。彼女と一緒にいると、不思議と執筆が捗るのだ。

 纏との関係は、両親には秘密にしている。凜が家にいなくても、恐らく両親は気付かないだろう。もしばれたら、漫画喫茶にはまっているということにすればいい。

 コンビニには一緒に行く。纏の部屋に泊まっていれば連れ立って、家にいれば連絡を取り合って合流する。そして、缶コーヒーとストッキングを買う。

 纏の部屋にいることが日常になりつつあるが、まだ惰性にはなっていない。幸せは長くは続かない。それでもいい。短い幸せを享受できることもまた幸せだ。

 この秘密の関係がいつまで続くのかはわからない。先のことなんて何もわからないのだから。

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