第03話 変わるよ
「そうだ! 」
マドがいきなり大きな声を上げた後
「よかったらSNS使ってる? 使ってるなら交換しておこうよ。せっかくの縁だし。なにかあれば話聞いてあげるよ? そのかわり私の愚痴とかも聞いてもらう時あるかもしれないけれどね」
と言ってくるわけだけど
「というかいいの? 今日初めて会ってお互い良くも知らないのに? 」
と俺は尋ねた。
「優なら問題ないでしょ? それとも嫌? 」
と上目使いで聞いてくるマド。うーん、それはズルいというものだよ。
「わかったよ。でも僕あまり送らないと思うよ。こういうのほとんど使わないし。連絡くらいにしか使ってないからさ」
「いいのいいの。なんにも残らず別れるのってもったいなくない? 」
確かにそう言われればそうかも知れないとは思う。だから言われるとおり交換をしてしまうのだった。
お昼は駅前に小さな駄菓子屋さん? のようなお店でパンと飲み物を買った。電車の中で食べるために。時間も掛かるしサボった手前家にも早く着いたほうが良いだろうと考えて。
だから僕は「そろそろ帰るよ」とマドに話して駅へと向かう。マドは顔見知りっぽい駅員さんに「見送りするから入るよ」と改札口を一緒に抜けてきた。駅員さんはしょうがないなと言う顔をしながらも何も言わず通してくれた。これってやっぱり田舎ならではなのかなあなんて思ってしまった。
電車は発車まで5分程度、もう現在は止まって発車するのを待っている状態だ。
「ひとり落ち込んでここまで来てしまったけれど良かったのかもしれない。マドに会えて全部吐き出したからか結構スッキリしているかも」
「そうかそうか。それなら良かった。でさ、私気になってたんだけどちょっといい? 」
マドはそう言うと俺の顔から眼鏡を取り上げた。
「うん、そこまで度は入ってないね。ならコンタクトでも行けそう。うん、思ったとおり優って眼鏡外すと印象全然違うね」
いきなりの発言に俺は戸惑ってしまう。
「コンタクトなんて考えたことなかったな。外見とか僕が何かしらしたって対して変わらないとも思ってたしね」
「ねえ? 今度からコンタクトにしてみない? 」
どうもマドは眼鏡なしに執着してしまったようだ。
「わかったから……考えとくよ」
と俺はそう答えるしかなかった。もし変えようと思っても親にコンタクト買ってもらえるかもわからないんだから。
「優、もしかするとさ。眼鏡を外して見るだけでも世界が変わるかもしれないよ。心機一転にも良いんじゃない? 」
とマドは俺にそう告げた。それを聞いた僕は確かに心機一転には良いのかもしれないなと少しだけ思った。いじけてばかりでは居られないんだもんなと。
「ほらほら、もうすぐ出発するよ。じゃまた会えると良いね」
マドは僕に眼鏡を返してそう言ってくれた。
「うん、また会えると良いね。そうそうずっとタメ口でごめんね。よくよく考えたらマドが年上だったよ。今更だけど」
「ううん、このままが良いよ。このままでいて」
そうマドが言うと笛の音がなり電車の扉が閉まる。そして走り出す電車、見えなくなるまで手を振り合うふたり。
僕はマドが見えなくなると席へと座った。ここまで来たときと違い少しは元気になれた僕。出会いって不思議なものだよなと僕はマドと過ごした時間を思い出しながらも疲れていたのか眠ってしまうのだった。
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