第11話

入院している間に

ツアーは終わってしまった


これで良かった!

自分に言い聞かせる


彼に呼び出される前の私は、

彼との一夜限りの関係を胸に

この上なく幸せだったんだから、

その時に戻ればいいだけ


何のために

呼び出されたのか

わからないから

変にモヤモヤしてしまった


何で呼び出したの!?


なんて、

彼に苛立ちを覚えたりもした


幸せで終わるはずだったのに、

今はテレビで彼を見るのも

モヤモヤした感情が湧いてきて

避けてしまう


リアルタイムも録画も

譲れないほど好きだったのに…


もしかして、

私ってもうファンじゃない?




そんな頃だった…


「失礼します」


今日は事務所に所属する

他のアーティストのライブ会場に

直行する予定だったのに

事務所に呼ばれて

今、上司の前に…


「座って。

最近仕事はどう?順調?」


「?…はい…

至らない点もありますが、

先輩方に助けていただきながら

やっています」


たぶん

私の答えなんて

どうでもよかったんだと思う


そんな話をしていると、

トントンとドアをノックして

男性が入ってきた


「失礼します。おつかれ様です」


と入って来た男性に

見覚えがある


そしてその後に

続いて入って来たのは

オーラたっぷりに

輝いて見える…彼…だ


コの字に配置された

応接セットの椅子


私の向かい側に、

先に入ってきた

彼のマネージャーと彼が

座った


微かに彼の香りが

漂った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る