二人の興味
「・・・」
き、気まずい。
サチに三階から追い出されたのでミレットとツユツキのいた二階のバルコニーに行くと二人がいたので同席させて貰った。
そこまではよかったのだが、ミレットもツユツキも一切言葉を発さないので非常に困っている。
ミレットはニコニコしながら両手で頬杖しながらこっちの顔を見てるだけ。
ツユツキは逆に一切こっちに目を向けず、テーブルの上に置いてある複数のカップのお茶の飲み比べを黙ってしている。
特にツユツキの持ってる雰囲気がこの場を静かにさせているように感じる。
どうやらツユツキはここのお茶に興味を示したようで飲み比べてる様子は真剣そのものだ。
俺が口を開いて何か言葉を発しようとしても一瞬動きを止めて鋭い視線を向けてくるので言葉が喉元で止まってしまう。
はぁ、仕方ない、一段落するまでこのまま静かにしていよう。
「・・・ふぅ」
「終わった?」
ツユツキの飲み比べがひとまず終わったようだ。
「ん。どれも美味しい」
「よかったわね」
「ソウ様、待って頂いてありがとう御座いました」
ミレットが一瞬こっちに目をやるとツユツキは深々と頭を下げて礼を言ってくる。
「あぁ、いや、こっちがお邪魔させて貰った身だしな。ツユツキはお茶が好きなのか?」
「はい」
「そうか。早々に好きなものが見つかってよかった」
そう言うとツユツキは小さく頷き、目を細める。
ツユツキは眼光こそ鋭いが所作の一つ一つに気品があってお淑やかさがある。
今は露出の少ないロングワンピースを着ているが、和服を着せたらきっと似合いそうだ。
「・・・ミレットは何か気になるものは見つかったか?」
さっきから俺を舐め回すような視線をしていたミレットにも聞く。ちょっと回答が怖いけど。
「んー・・・体、かしら?」
「か、体?」
大丈夫か?この後に続く内容次第で合否が問われるギリギリの答えだぞそれ。
「特に殿方の体が気になります。私達とは違う部分が多くて気になりますねー。殿方の服を近くでじっくり見たことありませんので」
「あぁ、そういうことね」
俺じゃなくて男の服装に興味があったわけか。視線の理由がわかってよかった。
そうか、ミレットは衣類に興味があるのか。
ミレット達の前の神は男だったがじっくり見られるような環境でもなかったから今の状況は新鮮なんだな。
しかし、そうなると一つ懸念があるな。
「興味あるのはいいことだが、それならもう少し自分の服装にも気を使って欲しいとこだな」
「あら。これではダメですか?」
自分の服装を見回すが正直服装による魅了能力は上がってると思う。
特にミレットは他の五人より肌が若干褐色気味なので似合ってはいるのだが、刺激が強い方だと俺は思う。
「俺はそれなりに耐性あるから大丈夫だが、露出の多い服装やそもそも女性に対して耐性が無い男もいるからそういう人は今みたいにされると落ち着かなくなるぞ」
「あら、そうなんですか?」
「うん、たぶん。それに逆に近寄ってくる悪い輩もいる。・・・はず。こっちの世界にいるかな?まぁトラブル回避のために用心をするに越した事はない」
「わかりました。では一応自分の服装にも気を使ってみますね」
「そうしてくれ。サチが服のデータを沢山持ってるので必要なようなら貰ってくれ」
「はぁい」
「ツユツキもその辺り遠慮せずにどんどん頼ってくれ。出来る限り協力するから」
「・・・はい」
前の世界じゃボロ着だったからなぁ。
出来ればこっちの世界で着飾る、お洒落する楽しみというのを知って貰いたいところだ。
「他の四人も何か興味あるもの見つけたのかな。何か知ってる?」
「それは本人の口から聞いたほうが良いかと」
「ふむ、確かにそうだな。後で聞いてみるとするよ」
「・・・」
「なんだ?」
指摘してくれたツユツキがちょっと驚いた顔をしている。
「いえ、意見したのにあっさりと受け入れられたので」
「ん?何か変だったか?」
「い、いえ・・・」
ツユツキの反応がよくわからず首をかしげているとミレットがフォローしてくれた。
「私達の前の神様は意見を許さない方だったんですよ」
「あぁ・・・」
まったく、聞けば聞くほどロクでもねぇな。アイツ。
「ツユツキはそれでも皆の話を汲み取って伝えようとしてよく罰を・・・」
「・・・そうか、大変だったな。とりあえず俺は意見されたぐらいで怒ったりしないから安心して今みたいに指摘してくれ。そのほうが助かる」
「わかりました。ありがとうございます」
丁寧にお礼を言うツユツキから少し警戒の視線が薄れた気がする。よかった。
「あの、それでは早速なのですが・・・」
「え?」
「頭に埃が付いてます」
「なぬ!?」
慌てて立ち上がって二人に背を向け屈んで頭をバサバサする。
あーもー恥ずかしい。
頭に埃つけたまま話してたのか。
二人とも何か視線が上の方にあるなと思ったらそう言うことだったのかよー。
「・・・取れた?」
「いえ、まだですねー。ふふふっ」
仕方なく大人しく二人に取って貰う事にした。
はぁ、しまらないなぁ。
まぁいいか。二人が気を使わなくていい存在というのがわかってくれたらならそれが一番だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます