-天界の人達-
-ドリスとジル-
「邪魔するよ」
「お、ジル婆じゃないか。よく来た」
「そろそろ茶葉が切れる頃だと思ってね。イル、湯と水を用意しとくれ」
「はっ」
「そういえばこの前うちのとこに主神補佐官が来たよ」
「サチナリアがか?」
「うむ。私があんたに分けた茶葉を持ってね。それともう一人」
「ソウ様か!」
「・・・やはりあの人はそうなのかい?」
「サチナリアと一緒に行動してる人と言ったらあの方ぐらいだろう」
「はぁ、あの人がねぇ。ただの兄ちゃんにしか見えなかったんだが」
「あぁ、そうだな。ソウ様はそういうお方だ」
「結構失礼な対応しちまったが、大丈夫かね」
「ん?ははは、ソウ様は器の大きいお方だ!我の方がもっと失礼な事してるからな!」
「威張るとこじゃないだろう。ま、それならいいんだけどね」
「なんだ、ジル婆ともあろう人が随分と弱気じゃないか」
「うるさいね。私だって気にする事はあるんだよ」
「らしくない。何があった?我に言うてみい」
「ガキの成りして偉そうな口叩くんじゃないよ」
「ほー。良かったじゃないか、褒めてもらえて」
「そうなんだけどね。それだけにあんな対応でよかったかと後になってね」
「だからと言って今更対応態度変える気もないんだろう?」
「うむ」
「じゃあ気にするだけ無駄だろうに。まったく、いい年した婆が乙女のような悩みごとしよって」
「ガキの成りした私より年上がキャッキャはしゃぐ方が見てて痛々しいと思うが」
「おう、それは誰の事を言っておるのだ?」
「さぁて、誰のことかの」
「はいはい。お湯と水の用意ができましたよ」
「遅いぞイル。で、今日は何を持ってきたのだ」
「うむ。面白い注文を受けてな・・・」
神竜と茶師の話は尽きない。
-工場の職員達の会話-
「はー・・・可愛かった・・・」
「ねー、あれは反則だよぉ」
「気持ちはわからなくもないけど、貴女達気抜けすぎじゃない?」
「そんなこと言ったって、可愛いものは可愛いんだもの」
「わかるわかる」
「はぁ。今はいいけどちゃんと仕事の時は工場長って呼びなさいよ」
「わかってるわよ。エルマリエちゃんとでも呼ぼうものなら次は来ないもの」
「うんうん」
「わかっているならいいけど。それで、次に皆で休みが取れそうな日はいつ?」
「うーん、結構先になるかなぁ」
「休めるように直訴してみる?」
「でも、この予定作ったのエルマリエちゃんでしょ?それはそれでやだなぁ」
「すごいよね、無駄がまったくないもの」
「私としてはもうちょっと余裕が欲しいかなぁ」
「その辺りも彼女に余裕が出て来たら変化していくんじゃないかしら?」
「そうね、私達でもっと良い子にしましょう!」
「おー!」
本人の知らぬところで謎の計画が密かに進行している。
-農園の人達の悩み-
「これは!」
「それもダメね、醤油が使われてる」
「こっちは!」
「そっちもダメ。お酒が使われてるもの」
「お酒ならあるじゃない」
「でも湧酒場のお酒って直ぐ気化しちゃって使い物にならないわよ」
「ソウ様は持ってたよ?」
「え、嘘、どうやって?」
「なんか特殊な容器から出していたような。開けるときにポンって良い音するの」
「それって私達じゃ手に入らない物じゃないの?」
「・・・そうかも」
「じゃあやっぱりダメじゃない」
「でもさー、そうなるとこの表のほとんどがダメにならない?」
「なる」
「えぇ!?いいの?それで」
「あんたルミナテース様がこれを渡すときなんて言ってたか忘れたの?」
「・・・なんだっけ?」
「あのねぇ・・・。いい?これはあくまで参考にするだけで作れる物が書いてあるとは限らないの。私達はその中から出来そうなものを選ぶのが今日の仕事。わかった?」
「わかったー」
「よろしい。じゃあ続きやるわよ」
「あいあいー」
最近農園では日替わりで料理レシピの抜き出し作業が二人一組で行われている。
貰ったレシピ表の量は膨大で、まだまだ時間がかかりそうだ。
-情報館の謎の列-
「なんですかこれは」
「あ、アリスさん。お疲れ様です」
「はい、お疲れ様。それで、これは何の列ですか?」
「えっと、ちびアリスちゃんを抱っこする列です」
「えぇ・・・何をしているのですかあの子は」
「本日の作業をミス無く終えた者への労い方法を模索しているらしいです」
「その結果これですか」
「はい。改善の余地はありますが、おかげで以前から一割ほど効率が向上しているようです」
「それは本当ですか?」
「こちらにその調査結果があります」
「・・・」
「アリスさん?」
「なんとも複雑な気分になります」
「心中お察しします」
「察してくれるのに列から離れようとはしないのですね」
「えぇ、それとこれとは話が別です」
「はぁ。とりあえずこんなところに長い列を作られては困ります。並んだままで結構ですので列の最適化に協力してください」
「はい。わかりました」
今日も妹に振り回されつつ、それが少し楽しい姉だった。
-とある少年の苦悩-
「おのれ、アンのやつ、また目立つようなことしやがって・・・」
「目立つってお前も十分目立ってたじゃないか」
「道具ありとなしじゃ大きな差があるんだよ。一応僕も出来るけど」
「できるのか。やっぱ凄いなお前」
「それを試験のときやったというのが気に入らない」
「はいはい。お前ホントアンの事しか見てないな」
「はぁ!?」
「自覚無いみたいだけど、ここ最近念の話になると必ずアンの名前が出るぞ」
「仕方ないじゃないか。今この学校で一番念の成績がいいのはあいつなんだし」
「そこは認めてるんだ」
「む・・・まぁな。相手を認めた上で更に向上を目指せって学校長も言ってたし」
「そうだな。前より丸くなったしな、お前」
「そうか?」
「うん。前はもっと人を寄せ付けない感じだった」
「そうだったか」
「くくく、よかったな。溺れて」
「その話題を出すのはやめろ!」
「ははははは!」
少年達の成長は早い。
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