-サチナリアとエルマリエ-
「おい、あの方の情報をよこせ」
「あの方?誰の事でしょうか」
「あの方はあの方だ。主神補佐官にもなって自分の仕える人の事もわからないのか」
「エルマリエ工場長様は人の名前も覚えられなくなりましたか?」
「そんなわけ無いだろう!」
「では最初から仰ってください」
「そんなことはわかってる!でもあの方の名前をどう呼んでいいのか、うぅ、なんなんだ、もぅ・・・」
「普通に他の方と同じでいいではないですか」
「そ、そうだな。うん。ボクもそう呼ばせてもらおう。そ、そそそソウ、さま・・・」
「はぁ。それで、何の用ですか?」
「そ、ソウ様の情報を出せ」
「嫌です」
「なっ!サチナリア!貴様!」
「別に情報を渡す事を断っているのではありません。人に物を頼む相応の言い方が出来ていないから嫌なのです」
「く・・・サチナリアの分際で・・・」
「大体一応今では私の方が貴女より立場は上です」
「ボクは工場長だぞ!」
「存じています。しかし今と昔では工場長という地位も私と貴女の関係も変わってきています」
「・・・どういうことだ」
「確かに以前まで工場と言えば完全食を作る重要な施設でした。ですが最近農業や料理という技術がもたらされた事により、以前ほどの絶対的な権力は無くなったと主神補佐官として判断しています」
「料理?」
「ソウがこちらに来てからしている事です。農園で得た作物を美味しく頂く方法です」
「サチナリアは料理というのを知っているのか?」
「えぇ、もちろん。毎日ソウと一緒に食べていますので。美味しいですよ?」
「なっ!」
「そういう意味では工場長の立場も農園長であるルミナテースと同等まで下げてもいいのではと思いますね。少なくとも今の貴女の態度では私はそう判断します」
「う・・・」
「ソウも言っていましたが、私も貴女の能力は高く評価しています。ですので今までその態度に目を瞑っていましたが、状況が変わってきたのでそろそろ改めようと思っていました」
「そう、なのか」
「はい。どうしますか?」
「どうしますかって言われても」
「私はどちらでも構いません。今まで通りの態度で接していただいても、改めていただいても」
「・・・うぅ・・・」
「言っておきますが、今まで通りであればソウの情報はお渡しできませんのであしからず」
「選択肢が無いじゃないか」
「そうですね。その昔貴女が私にした勝負と同じ手法です」
「・・・う・・・だ、だって・・・」
「だって?」
「だってサチナリアは優秀じゃないか!ボクはああでもしないと勝てないと思ったんだもん!わかれよバカ!うええぇぇ」
「・・・そうだったのですか」
「そうだよ!ひっく、いつも冷静で、ひっく、かっこよくて、ひっく、バカー!」
「落ち着きましたか?」
「・・・うん」
「貴女が私をそこまで評価していたなんて初めて知りました」
「・・・そうだよ、悪かったな」
「いえ、光栄です。ふぅ、どうやら私も貴女もお互い歩み寄りが足りなかったのかもしれませんね」
「そうかも」
「ソウが言っていました。私と貴女は少し似ていると」
「そうなの?」
「えぇ。ですので、今までの事も、今の関係も一度無しにしてお友達という関係からやり直しませんか?」
「お友達・・・サチナリアはそれでいいの?」
「えぇ、いいですよ。貴女が呼び捨てで呼ぶなら私も呼び捨てで呼ばせてもらいますけど」
「うん、うん!いいよ!」
「では改めてよろしく、エルマリエ」
「うん、よろしく、サチナリア!」
「では手始めにソウの情報をそちらに送りますね」
「やった!」
「あとソウが作った料理がいくつか空間収納にありますので、今度そちらに行ったときに何品かあげますね」
「本当!?ふおおお!」
「とっても美味しいですよ」
「いいなぁサチナリアは、ソウ様と一緒にいれて」
「そうですね。今の貴女からするとそう思われても仕方ないかもしれません」
「・・・そっか、うん。そうか、これが人を好きになるって事なんだね」
「すみません」
「ううん、いい。ボクが勝手に好きになっただけだもん。それよりサチナリアと友達になれた方がボクは嬉しい」
「そうなのですか?」
「うん。ボクが一番縁遠いもので諦めてたものだったから」
「そうでしたか。では末永くこの関係が続けられるようにしましょう」
「うん!」
「あ、このソウの情報共有は本人には言ってないので二人だけの秘密ですよ」
「秘密!それも友達っぽいね!」
「ふふ、そうですね」
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