大収穫祭開始


「えー、それではこれより大収穫祭をはじめまーす!」


「まーす」


響き渡る天機人の二人の声に集まった人達が沸き立つ。


あれってこの前情報館で名前を付けた二人だよな。こっちに来てるのか。


「それではルールのおさらいです!今回は造島師さん達を含めた男女混合の特別ルールとなっております!」


「おります」


「これまで同様念と収納の使用は禁止で最も多く収穫した組が勝利となります!」


「なります」


「また、今回私達天機人の能力により作物の傷なども確認しますので、場合によっては加点減点がありますので注意してくださいね!」


「丁寧大事」


・・・あの妹の方は説明楽してないか?姉の方が気にしてないようだからいいけどさ。


「それでは各組のご紹介です!」


姉と妹の息のあった紹介で各組の紹介がされていく。聞いてるだけで面白いな。


「そして最後に飛び入り参加の組のご紹介!我らが神様ソウ様!その補佐官のサチナリア様!そして当農園園長のルミナテース様の組でーす!」


「さいきょー」


天機人の二人の紹介に一瞬静になり。


「えええええ!?」


一斉に驚きの声が上がった。




俺達が参加する経緯はサチの一言から始まった。


「面白くないですね」


「サチナリアちゃん?」


「ルミナテースだけ参加しないというのは面白くありません」


開会より少し前、不服といった感じでサチが不満を吐露する。


「え、でも、もうみんな造島師さん達と組んじゃってるし」


「男性ならいるじゃないですか、ここに」


ぐいっと腕を引かれる。


「・・・?え!?俺!?」


「え?サチナリアちゃんどういうこと!?」


状況が理解できずに困惑するルミナ。俺も驚いている。


「だから、ソウを入れて出ればいいじゃないですか。あ、もちろんその場合は私も一緒に出ます」


「でもどうして?」


「確かに今回の企画は面白いです。ですが、張り合いのある存在がなければ盛り上がりに欠けます」


「あー確かにそうかもな」


言われて見れば確かにそうだ。


元々この大収穫祭はルミナ対農園の子達という構図が出来上がっているので、わかりやすい倒すべき敵が居る方が盛り上がる。


「そうでしょうか・・・」


「そうなのです。それに基本的に頑張るのは貴女一人です。いわばハンデですね。ソウもそれならいいですよね?」


「あぁ、うん」


サチの提案に賛成なので頷く。


ただ、確かに俺じゃあの作物をどうにかするのは難しいが、面と向かってハンデ扱いされると傷つくぞ。


後で慰めてもらおう、うん。


「さて、ソウの了承も得られましたが、どうしますか?ルミナテース」


「サチナリアちゃん・・・うん!私出る!」


こうして俺達三人の参加が決まった。




突然の発表に参加者に動揺が走る。


「どうしよ、全く予定に入れてなかった」


「ルミナテース様は強いのか?」


「ソウ様とサチナリア様まで入ってるなんて・・・」


ざわざわとした中からそういった声が聞こえてくる。


「えー、みなさん!この発表に大変驚かれていると思われますが、更に追加でお知らせがあります!」


「いい知らせ」


「今回ルミナテース様の組より上位になった組にはソウ様のご厚意により料理が振舞われます!」


「ぼーなす」


「おおおおおお!!」


この発表によって沈みかけた雰囲気が一気に戻ってきた。


こうなる事は予想できたからやる気を取り戻させるものを用意させてもらった。


正直俺の料理なんかでよかったのかと思ったが、ルミナがそれがいいと言うのでそういう事になった。


実際参加者達のやる気も戻ってきたので一安心だ。


ちなみにうちの組が一位になった場合は参加者全員に簡単な料理が一品出ることになっているが、今は秘密だ。


「開始は十分後となります!皆さん怪我の無いようしっかり準備体操しておいてくださいね!」


「作戦時間」


天機人の二人が告知を終えると各組それぞれ相談を始めたり、体をほぐし始めたりしだした。


いよいよか。


さて、どうなるか楽しみだ。




「それでは大収穫祭開始しまーす!」


「まーす」


天機人の二人の開始の言葉と共に各組一斉に散らばって行く。


「それではソウ様、私も行ってきますねー」


「あぁ、がんばれよ」


ルミナは軽く礼をすると上に飛んだ後、各組が向かわなかった方へ向かっていった。


うちらの作戦は至ってシンプルで、ひたすらルミナが頑張るだけである。


ただ、さすがにルミナだけ頑張らせるのも悪いので俺達も後から合流する事になっている。


「さて、それじゃ俺達もやる事をやってしまおうか」


「はい、そうですね」


合流する前にやる事をすべく俺とサチは調理室へ向かった。




調理室で既に粒にしたトウモロコシを出してもらう。


「不出来な方でいいのですよね?」


「うん」


サチが出してくれたのはトウモロコシでも規格外なもの。


どうもトウモロコシの中を見ると一割ぐらいの率で普通のと違うのが混ざっている。


普通のより甘いのが多いが、今回使うのはその中でも粒の皮が硬いものだ。


サチが不出来と言うように普通に茹でても皮が硬いので食感が良くない。


だが、これはこれで使い道があるのであらかじめ粒だけにして保管しておいたのである。


鍋の底一面に薄く行き渡るぐらいに油を入れて、その中に粒を入れて蓋をする。


後はひたすら左右に振るだけ。


最初はザラザラと粒が動く音がしているが、次第に油に熱せられてパチパチと音が変わってくる。そろそろかな?


そのまま振っているとポンッと中で弾け飛ぶ音が聞こえる。


「な、なんですか!?」


外の様子を見ていたサチが音に驚いてこっちに来る。


俺は気にせずそのまま振るとポンポンと次々に弾け飛ぶ音がして、しばらくすると落ち着く。


「よし、できた」


余り長くやっていると先に弾けたのが焦げるので早々に取り出して皿に盛り、塩を振りかけて完成。


「ソウ、これは?」


「ポップコーンだ。味見したら直ぐ収納に入れてくれ」


既に二、三粒口に入れてポリポリと食べているサチが頷く。


鍋の底には弾け損ねたのが数粒あるが、そのまま油と粒を足して次のに取り掛かる。


「あの、ソウ。それ私もやってみてもいいですか?」


「ん?いいぞ」


サチが興味あるようなので代わってやる。


しばらく鍋を振っていると再び弾ける音がしてくる。


「こ、これは楽しいですね!」


すごくわかる。


こうして交代で結構な量のポップコーンを用意できた。


これで参加賞が行き渡るぐらいにはなるかな?

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