強制休養日

翌日の仕事。


今日も下界を眺める。


そして考える。


昨日の話だと下界にも天界があって天使もいる。


そう考えると人間以外の種族の存在の可能性を考える。


実際魔族という存在がいるのは話に聞いているが、それ以外にも種族が居るという事を想定して物事を考えるべきだろう。


「・・・」


「どうしました?」


「あ、いや、下界の種族はどの程度いるのかなと」


渋い顔して考えてたようでサチに気付かれた。


「程度ですか。では一覧出します」


下界画面の隣に別の画面が現れる。ゲームのステータスウィンドウみたいだ。


「え、ちょ、多くないか?」


上から下までずらりと白文字と灰文字で書かれた一覧が表示される。大半が灰文字だ。


「白文字は現在確認できている族名。灰文字は過去に確認された族名です」


そうか、今は信仰範囲が狭くなってるから灰文字が多いのはそのせいか。


「んー・・・ん?あれ?人間が見当たらないんだが」


上から眺めてると全て末尾に族が付いているが人間族が見当たらない。


「人間は種名ですね。種族表記に変えます」


サチがパネルを操作すると一覧の文字と量が更に増える。


先ほどは和人族としか表示されてなかったのが人間種和人族になっている。


天使は天使種天使族で灰表示。


魔族が一杯あるな。人間種魔族、獣人種魔族、亜人種魔族など魔族に属する種族の多さを感じる。


「簡単に説明すると、種名は生態系、族名は勢力と思ってください」


「なるほど」


「現在の信仰状況はこの通りです」


一覧の灰文字が消え、今度は白文字と水色文字に代わり、その横に割合らしき数値が出る。


「数値は信仰量の割合で、族内で最も信仰を集めていると水色になります」


ふむふむ、最初の集落らしき種族名だけ水色になった数字が六割を占めている。


「ただ、視野範囲が広がると増減しますので注意してください」


「わかった。目安程度にしとく」


仮とはいえ信仰度が目に見えるというのは嬉しいものだ。


目標はこの水色を増やすことかな。


正直数値は五割を満たなくてもいいと思っている。


逆に高いとそれは依存してしまっている証だからな。それは俺の目指すところじゃない。


今見てる街を遠巻きに見ても色んな種族が行き来してるのがわかる。


そうなれば相応の文化や慣習があるはずだ。


出来ればそれは尊重したいと思う。余り他種族に迷惑かけるのはよくないとは思うが。


となると今後は種族の観察もした方がいいな。何をすると好まれるか研究せねば。


「ソウ、時間です」


「ん。わかった」


今日は数点気付かれない程度に願いを叶えて後は下界を眺めて考えてるだけになってしまった。


いいのかなーこんなんで。




「さて、今日はどうしよう」


「今日は直帰します」


「え?あ、ちょっと?」


有無も言わさず腕をがっしり掴まれたと思ったら家の前に転移してた。


そしてそのまま家に入り布団に座らされる。


え、何この展開。


サチさん今日は積極的?と思ったらどう見ても不機嫌顔してる。


「どうしたんよ?」


「今日は休養日にします」


「なんでまた?」


「働きすぎです」


「え?いや、ちゃんと一時間しか仕事してないだろ?」


「そうではなく、その後も頭を働かせすぎです」


そうかな?そんなつもりはないんだが。


「いいから今日は休む日なんです」


そう言いながら俺の眉間にサチの人差し指と中指がトンと当てられる。


ん?おお?なんだ?急に力が抜ける。


「何、した?」


前のめりに上半身が倒れそうになるとサチが抱きとめてくれる。


うん、いい匂い、いい感触。


ダメだ、力が入らん。


「やっぱり。張ってる気を強制的に解除させてもらいました」


サチの足を枕に仰向けに寝かせられる。


あーダメだ、意識が遠のいて行く。


「ゆっくり休んでください。ソウ」


抵抗しようと伸ばした手がサチの尻を撫でたところで意識が無くなった。

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