天機人
「では天機人について」
休憩を挟んで再開。
「うん、よろしく」
「私達天機人はこの空間で生活する方々をサポートするために作られました」
「作られた?」
「はい。私達は天使補助機構という施設で製造されます」
「他にもそこでメンテナンス、カスタマイズ、後継機への移行なども行っています」
総合病院みたいなものかな。
「ここの地下にも簡単な施設設備があります。製造は出来ませんがメンテナンスやカスタマイズはある程度できます」
確かにここにはあったほうがいいな。
「難しい内部構造などは省きますが、人との違いは生まれからこの姿で外見カスタマイズしない限りは皆同じ姿なのと他種族と子を成すのが難しいぐらいです」
「うん?え、てことはほぼ人と同じってこと?」
「そうなります。ご覧になりますか?」
長袖をまくって腕を見せてくれたが間接をはじめ、肌も人と変わりない。
前の世界の創作物で見た機械人とかのイメージが崩れる。
天界の技術凄いな。
「その気になればソウが私に夜してる事もできますよ?」
「ばっお前っ」
サチがとんでもない不意打ちをしてくる。
あーもーメイド三人が興味示してるし。
「そ、そういえばさっき指から光出してたがあれはなんだ?」
話を逸らそう。サチが勝ち誇った顔してやがる。
「これは天機人の機能の一つです。天使様ほど多様性はありませんが様々な機能が搭載されてます」
「飛んだりもできるの?」
「勿論できますよ」
ユーミがそういうと背中から天使とは違う機械羽を出してふわっと浮く。
これ凄くないか?俺飛べないんだけど。
「これは服に搭載している機能です。我々天機人は体を基本に服を変える事で機能変更することができます」
便利だな。
「服の色はそういう違い?」
「いえ、これは個人の趣味です」
あ、そうなんだ。
「体が弄れないから服だけでも変化を出したい感じ?」
「はい。現在上位権限所持者からカスタマイズの許可が出ていないのでこれが限界なのです」
ユーミとシンディが残念そうにする辺り彼女らは変化させたい派か。
上位権限所持者ってサチか?
「私のところにはそういう話は来ていません。ソウが良いなら良いのではないでしょうか」
目配せするとサチが答える。となると。
「じゃあアリス?」
「う・・・はい。統率力が落ちると思い私で止めてました」
うん、正直でよろしい。
「許可出してもいいんじゃないか?」
「し、しかし・・・」
渋るアリス。
彼女達は結構個性あるみたいだからそれをまとめるとなると大変なのかな。
「じゃあ最初のうちは階級別に解放したらどうかな。個人命名権もそういう感じで区切れば向上心にも繋がるんじゃないかな」
「なるほど。ではそのように致します」
礼をする後ろでユーミとシンディが手叩いて喜んでる。
今度来た時また名付けラッシュになりそうだが、成果報酬ならしょうがないな。
「ソウ、そろそろ・・・」
サチが袖を引っ張る。
「む、もう時間か。じゃあキリがいいし今日はこのぐらいで」
「わかりました」
「まだまだ知りたい事山ほどあるからまた来るわ」
「はい、お待ちしております」
今度来る時は見た目も変わってるのかな。
楽しみにしておこう。
「またのご来館お待ちしております」
来た時より多くのメイドに見送られて情報館を後にする。
思ったより捗らなかった気がする。
まぁいいか。少しずつ慣れて行こう。
情報館が見えなくなった辺りでサチが腕を組んでくる。
「どうした?」
「なんでもありません」
「そうか。何度も行く事になりそうだな」
「そうですね。定期的に行く必要があるので丁度良いと思います」
「うん。次行くのが楽しみだ」
「何が楽しみなんです?」
「そりゃ色々知る事が出来るからな」
「・・・それなら許してあげます」
ぎゅっと腕を強く掴んで身を寄せてきた。
あぁ、どうもサチがちょいちょい突っかかってきたのはそういうことか。なるほどね。
「・・・なんです?その眼差しはなんだか不快です」
むっとした顔で見上げてくる。
でもやめない。自然と出るものだからしょうがない。
「やー早く帰りたいなーって思ってな」
「そうですか。急いでもいいですが、もう少しで日が暮れるので見て頂きたいものがあります」
「なんだ?」
「ソウが言う風情というものが少しわかるかもしれませんので、少しの時間付き合ってください」
「おぉ、いいぞ。早速とは勉強家だな」
「どこかの誰かさんの影響でしょう」
「そっかー」
他愛も無い話をしながらゆったりを森を進む。
行きの木漏れ日のある温かみのある森とは違い、日が落ちて次第に薄暗さが増す姿に儚さを感じさせる。
ただ、これ以上暗くなると今度は怖くなってくるんだよな。
若干不安になってきたところで来る時降り立った場所に到着した。
「では見ていてください」
サチは来た道に振り返ると両手をパンッと大きく叩く。
するとサチを中心に周囲の地面や木々に沿って青緑の光の粒が一斉に広がる。
「おぉ!なんだこれ!」
「光の精の子供です」
「光の精?」
「家の光は彼らによるものですよ」
詳しく聞くと、光の精は小さいうちはこのように自然が豊富な場所で育ち、大きくなると人にくっついて家などに行くらしい。
音や振動に反応するので家人が活動してると光を放ち、静になると消えるというなんとも便利な生き物。
放つ光が弱くなると再び家人にくっついて自然の多い場所に戻り、分裂分散して再び子供となる。
彼らは座標認識力があるらしく、完全に静止状態じゃないと光を放たない上に目視できない。
大人子供の判断は光の強さと色で判別し、若いうちは青緑色の寒色系、全盛期が白、晩年は赤黄色の暖色系になる。
「判明しているのはこのぐらいで、本当に生物かどうかも謎です」
「確かに生物のような植物のような」
共通してるのはある程度生態サイクルがあるってところか。
だから子供という表現をしてるのか。なるほど。
「それでこれを見せた理由は?」
「はい。ソウはこれを見てどう思いましたか?」
「うーん。幻想的って感じかな」
俺の感性だと風情とはちょっと違う感じがする。
どちらかと言えば前の世界で冬に見るイルミネーション。
夕暮れの森の方の方が風情を感じた。
ただ、それはあくまで俺の感性での話。
自然に情緒を感じるという点ではこれはこれで風情の一種ではないかと思う。
「そうですか。少し違うのですね」
「うん。でもサチはこれ好きなんだろ?」
「・・・なぜわかりました?」
驚きと恥ずかしさが同居したような表情でこっちを見る。
「何となく」
細かく指摘するとむくれそうなので誤魔化す。
「変ですか?」
「いや、いいと思う。俺も好きだな、これ」
風情がどうのとかそんな事は二の次で直感的に良いと思ったならそれが最善だと思う。
「そうですか。ならいいです」
機嫌が良くなったのか全身を預けてくる。
しばらくそのまま光が落ち着くまで俺達はこの幻想的な光の空間を楽しむ事にした。
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