君の音を聞かせて

佐竹やのふ

第1話君の声を聞きたい

  四時間目が終わり、教室は活気を取り戻す。私はいつも通りトイレに行って、手を洗う。

そして、いつも通り机を動かして、いつものメンバーで会話を繰り返す。私は適当に相づちを打ちながら、うるさいクラスの中で1つのグループの会話を鮮明に聞いていた。


「お前ら彼女できたらなにしたい?」

「セックスしかないでしょ。デートも優しくするのもセックスのためだし。」


こういうやつは女子がいようが関係なく、いつでも言う。彼女ができない典型だ。盗み聞きしてる私は、密かに彼の発言を待つ。


  「つまらんやつらだ。セックスしかないじゃん。次!」


とうとう彼の番がきて、心臓が少し飛び跳ねる。


「僕は彼女の心臓の音を聞いていたいな。なにもしなくていいからずっと。」


彼の発言は意外だった。彼もセックスとか言うのではと思っていたから。


「ねー聞いてる?」


横から肩をトントンと叩かれてびっくりして変な声を出した。少し笑われてから、心配そうに声をかけられた。


「どうしたの。悩み事でもある?」


少し考えてから、


「あのさ、彼氏できたらなにしたい?」


さっき聞いていたグループの質問をしてみる。


「私はねー、2人でパンケーキ食べたいかなー!」

「あーそれ!わかる!でもさ、男って甘いの嫌いな人いるから結構難しいよね。」

「最近は甘党の男子もいるって聞いたことあるけど、やっぱり、一緒に甘いもの食べて幸せを感じたいよね!」

「私はねー!彼氏とは何か一緒に買い物したいよね。」

「服とか一緒に買ってさ、彼氏にかわいい!とか言われたいよねー!」

「それ!」


彼女たちの意見が一致していた。質問した私を置いてきぼりにされ勝手に盛り上がっていく。

それから、一段落して私が質問した内容が自分に返ってきた。きっと私は他にやりたいこともあったのだろうが、彼の発言が頭に残っていた。

なんとなく、彼と私は似ているのかなとか考えながら、私は彼と同じ言葉を言った。


「ずっと彼氏の心臓の音を聞いていたいかな」

「ロマンチストだねー。」「かわいいねー。」「私もそんな考えを身につけたいわー」


みんなニコニコ笑顔で私をみてくるので、ちょうど食べ終わった弁当を鞄にしまって目をそらす。

数分間ロマンチストと言われ続け、ようやく五時間目のチャイムが鳴った。そしていつもの席について、授業を聞いていた。

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