最後から二番目の真実

ゆゆゆ

第1話 佐藤優希

▪️


約五百万円。

これが、中学生である僕が一月で稼ぐ金額だ。


▪️


「優希、一緒に帰ろうぜ」

そう言って僕の自称友達、八坂景は肩を叩く。

そして顔を僕の耳に近づけ、小声で言う。

「今月さ、欲しいゲームの発売日なんだよ。俺ハードもないから、それも一緒に買わなきゃいけないんだよね。だから、とりあえず五万。な?」

当たり前かのように僕に金を要求してくる。こいつの要求する金額は、基本的に一万円から百万円という、中学生らしい馬鹿な金額だ。こいつの指定する金額を用意するにはそれ相応の覚悟が必要だ。なんといっても、中学生に用意できる常識的金額を超えている。

だが、それに慣れた僕は無言で五万円を渡し、そのまま帰ろうと下駄箱へ向かう。だが、景は僕にまだ用があるのか、帰らせようとしない。

「おいおいおい、ちょっと待てよ、一緒に帰ろうぜ?」

僕にはこいつと帰るメリットがない。

「な?俺たち友達だろ?」

景の友達の感覚は実に狂っている。僕を友達というのなら、こいつの友達は皆財布だ。

「…今日は用事があるんだ」

僕がそう言って帰ろうとすると、後ろから舌打ちの音が聞こえた。

「ああ、そうかよ。じゃあ、また明日な」

八坂景は、決してやり方が下手ではない。

一度教えこんだ恐怖を利用し、普段僕らに外傷を与えることなく支配していく、王道的なやり方だ。

彼はそうして教室の方に戻って行った。おそらく別のやつに同じことをやるのだろう。

そうして僕は、そいつのカモとなったやつに応援を思い、帰路についた。

「月五百万円か…」

僕は自分で言ったその金額に思わず涙と笑いがこみ上げてくる。

あと何回僕はこいつに屈しなければいけない。

なぜ僕が苦しまなければならない。

答えの決まった自問自答を何度してきただろうか。

「月五百万円」

僕はもう一度そのセリフを使い、疲れた気持ちでいつものスーパーに着く。ここは田舎にある分、設備がそこまで整っているわけではないが、なぜか金はたくさんある。

「…やるか」

僕はこの地域にしかないだろうスーパーに、今日も入店する。

監視カメラが届かない二番目のレジ。15時50分、このスーパーが混む前の時間。18時からセールを行うため、この時間帯は店員の休憩が多く、客も少ない。

二番目のレジには今日も人がいない。

設備がどうこう以前に、基本的にここのレジは鍵が差しっぱなしで、お店もお金のチェックを大ざっぱにおこなっている。

僕はここが田舎でよかったと思い、レジ周辺に人がいなくなるタイミングでレジへ行き、札を数枚残す程度にして盗み、何事もなかったかのように店を出る。

しばらく歩くと家に着く。

「ただいま」

僕は帰ってすぐに部屋に向かい、お金を数える。

家に僕しかいない時間はそう長くはない。

数えたお札を、机の鍵のかけられる引き出しにしまい、鍵をかける。

「ふぅ、二十四万七千円」

僕は鍵を筆箱にしまい、ベッドにダイブする。

いくら慣れたとはいえ、盗むのは精神的に疲れる。

そしてそのまま眠りにつく。

だが、完全な眠りにつく直前、あと十日、僕はその狂った心で復讐の結構日を決めた。

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