エロス

 彼が高校生になった時も、爆破の魅力は常に彼の背後に付いていた。


 爆破が嫌いになった訳ではないが、周りとのギャップに悩む事は多くなっていた。異質、異端、それが自分なのではないかと。



 ――だがある日、彼はなぜこんなにも爆破に取り憑かれたのか理解する事となった。


 それはある商業施設での爆破事故。原因はガス管の爆発、以前の一斉建て替えの際に基準に満たないガス管を使用した事だった。  


 さらに火災報知器も正常に作動しなかった為に、火の手は大きくなり、何人も巻き込む形となった。

   


 そして彼も事故に巻き込まれた1人であった。



 爆発現場近くにいたが、幸いにも大怪我を負う事なかった。それでも飛んできた瓦礫や火の粉により、火傷や切り傷はできた。


 痛みはあるはずだ。だがそんな痛みを感じないほどに、彼は目の前に広がる凄惨たる現場を夢中に見ていた。


 転がる人間は腕や顔が吹き飛び即死している者もいた。だがほとんどは重症を負いながらも意識はあり呻いていた。


 一人の女性は腹部を抉られ血を流し、服は焼け焦げ、血を吐きながら息を荒くしていた。



 彼はそんな女性を見て、



 なんて扇情的だ、なんて美しいのだ。爆発という暴力により犯された彼女の肌は綺麗に裂け、見るに耐えない醜い物へと変化している。


 高温による火傷は元々の肌の色とのグラデーションで綺麗に輝いて見えた。



 そして理解したのだ、彼がどうして解体作業に惹かれたのか、どうして爆破に魅了されていた理由を。


 それは男子が猥本を欲しがるのと同じで、女子が男優に恋い焦がれるのと同じなのだ。


 つまり自分は周りとは違わない、むしろまったく同じだ。私も周りと同じでただ当然の性への関心だったのだ。


 私にとっての性興味は、爆破だったのだ!



 彼は燃える女をもっと見てみたかったが、すぐに来た消防士により外へと連れていかれた。


 だが問題ない、彼の興味はすでに向かっているのだから。

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