決断

 以前の戦争が終結してから三ヶ月が経った頃、彼の不安は現実のものとなった。


 民衆も政治家も、今度もまた勝つなどと根拠のない自信に浸っている。だが勝つには人が必要だ、金が必要だ。


 

 だから彼は窮地に立っていた。国はこの時代に考古学など必要に値しないと判断しだしたのだ。


 必要な学問を教えぬ教師になぜ金を与えねばならない。それなら教鞭を去り、一つでも多くの兵器を作って欲しいと思っているだろう。


 ユリウスは苦悩した、考古学を諦めたくなどない。その為には証明しないといけない、戦争にどう利益を与えるかを。


 彼は思った。他の学者ならいざ知らず、私には利益をもたらす事が出来る。それも確実に、誰にも考えられない方法で。


 そしてこれを使えば間違いなく勝てるだろう。


 だが……どうするこんな物を世間に、戦争慣れした奴らに知られるのは危険過ぎやしないか!?


 しかし私には後がない。この職を離れない様にするにも、人間を相手に使用するチャンスも、今このタイミングだけなのではないか!



 彼は苦悩した。今の為か、未来の為か、一体どちらを優先すべきかを。


 そして脳が疲弊しきった所で、彼は都合の良い言い訳を思い付いたのだ。




 




 ほどなくして、彼のいる国の囚人達にこんな御触れが出た。


『人体実験に参加した者はどんな罪状であっても必ず恩赦として必ず釈放される。無論、死刑だとしても』



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