空にコトリ。
卯野ましろ
最初は短編のつもりで書いていた、一期
第1話 始まってしまった恋
「よし、これで終わり!」
「コトリン本当にありがとう。助かった」
「どういたしまして~」
日直の仕事を一人でやることになった友だちを、わたしは絶対に放っておけない。もう一人の日直さんは病欠だった。
「『ネイビーレイン』の時間まで、まだまだだしね~♪ あっ、でも週刊チャンポン買わなきゃ」
「楽しそうで何よりだよ」
「えへへ」
わたしはオタクだ。アニメや漫画、ゲームなどが最高の心の栄養となっている。
「はぁ~、早くジュライ様に会いたいな~♪」
「……あのさ、コトリン」
「はいっ?」
我が友が真剣な顔になっている。
「コトリンって好きな人とか、いるの?」
「うん、いるよ?」
「アニメキャラとかじゃなくて」
「いるいる!」
「うわマジ? 誰? 誰!」
「えっとね……」
ちょっと恥ずかしいけど、わたしは好きな人の名前を言うことにした。
「……ソラきゅん」
「へっ?」
今度は大きな声で。
「……ソラきゅん! うちのクラスの、
「……うっそーっ!」
声を出して驚く彼女を見て、わたしは顔が熱くなった。でも心はスッキリしている。
今まで心に秘めていた思いを、やっと吐き出せて気持ち良かった。
「何で! 何で大木くん?」
「そっ、それは……」
「っと、ごめんコトリン! とりあえず先生に日誌を渡しに行ってくる! 続きは後でね!」
「えっ、ちょっと!」
語ろうとした途端、話の聞き手はパタパタと教室から出てしまった。残されたわたしはガッカリした。あーあ、せっかくの……。
萌えを吐き出す、素晴らしい機会が!
「はー……」
ため息が出た。
ここ最近、わたしはソラきゅんが好き過ぎて苦しい。つらい。
……ハアハアする!
ソラきゅんかわいい! マジでかわいい!
あの低身長、何なのっ? わたしとそんなに変わらないよね!
チビってバカにされた後、必ず怒り出すの最高!
口を開けたら登場する八重歯たまらんっ!
童顔ナイス! おめめパッチリくりっくり!
てかソラきゅんって絶対BLなら受けだよね?
間違いなく総受けでしょ!
ああっ、尊い!
わたし初めて!
クラスメートの男子に萌えるの!
もう本当に幸せ!
おかげで学校が毎日楽しい!
皆勤賞、超余裕!
てか生きているの、楽しい!
ソラきゅんがいるから人生楽しい!
ソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんソラきゅんっ!
「はぁ~……」
わたしは今、独りぼっちでキラキラしている。神様に祈るかのように、胸の前で手を組みながら。
するとそのとき、ガラガラッと戸が開く音がした。
キター!
言っちゃおう!
もうこの思い、抑えられない!
「ねぇっ! 聞いて聞いて! ……あのね」
今、任務を完全に終えた友はわたしの背中をじっと見つめているのだろう。返事がないのは、何も言わずに聞いてくれるということ。
じゃあっ、言うね!
くるんっと振り返りながら、わたしは叫んだ。
「わたし、ソラきゅんが好き!」
「え!」
言い切った後、わたしはすぐに固まった。
なぜなら今まで、わたしの背後で話を聞いてくれていたのは……。
「おっ……俺なんかで良ければ、よろしくお願いします!」
ソラきゅん御本人だったのだ。
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