貝殻アート

合宿ニ日目、朝早くに海の家に集合すると、莉子先生は全員にビニール袋を渡した。


「今日は、人が集まる前に貝殻を拾って近くの公民館に移動します!」


すると、真菜さんがビニール袋を広げながら先生に聞いた。


「今日は働かなくていいんですか?」

「うん! 今日はね、前に言ってた施設に贈る貝殻アートみたいな物を作ります!」

「働かなくていいとか最高!」


美波さんらしいテンションの上がり方だ。


「なに言ってるの? 大人になったら毎日働くのよ?」


すぐに現実を教えられちゃったけど。


「輝久君は大人になっても働かなくて大丈夫ですよ!私が養ってあげます!」

「そ、それは悪いよ」


すると、鈴さんと莉子先生以外の全員が頭を下げて、結菜さんに手を差し出した。


「結婚してください!!」

「一樹君!! 貴様は許さんぞ!!」


それを見た莉子先生は、呆れた様子で言った。


「はいはい皆んな、一時間で貝殻集めてね? 一時間後、海の家集合!」





全員がそれぞれ貝殻を拾い、一時間後に海の家に集合すると、剛さんは去年のように、全員にジュースのラムネをくれた。


「今年は一日だけだったけど助かったぜ! ありがとうよ! 来年から来ないと思うと少し寂しいけどな」


「ゲプッ」

「おい沙里! ゲップで返事すんなよ!」

「違うよ、今のは結菜」

「わ、わ、私じゃないです! 芽衣さんです!」

「私がするわけないじゃん! 鈴だよ! 鈴!」

「違う! 真菜ちゃんだよ!」

「私そんなことしない! するなら絶対お姉ちゃんだもん!」

「わ、私がそんな下品なことするはずないでしょ! したのは柚木だよ!」

「あ、バレた?」

「いや、お前かい!!」


結菜さんの顔が真っ赤だし、隣にいたから結菜さんだって分かるけど、黙っておいてあげよう。

美少女も人間だから仕方ない!


それから剛さんに別れを告げて、全員で公民館へやってきた。


公民館には、莉子先生が用意した接着剤やボンド、ハンマーや皿が並べてあった。


「説明するから聞いてねー。この白いお皿に貝殻を自由に貼り付けて、自由に作品を作ってください! 貝殻をそのまま貼ってもいいし、ハンマーで割って貼ってもいいです! 全員早く作り終われば海に戻って自由時間です! 皆んな分かった?」

「はーい」

「あっ! その前にマジックペンでお皿の裏に名前書いといてね!」

「はーい」


さっそく沙里さんがハンマーを持って、めちゃくちゃ貝殻叩いてるけど、ちょっと怖い。

でも、沙里さんは張り切ってたからな。誰とも喋らずに必死に作業をしてる。

結菜さんは皿の真ん中に貼る小さな貝殻を選んでいるみたいだ、柚木さんは大きめの貝殻を豪快に貼っている。

僕も頑張って作ろう。


それから一時間半ぐらい経った時、結菜さんがとっても素敵な笑顔で話しかけてきた。


「輝久君、見てください! できました!」


次の瞬間、莉子先生は、貝殻がついた皿を持ちながら笑顔で僕に話しかける結菜さんの写真を撮った。


「結菜さんの笑顔の写真! レア!」

「いきなり撮らないでください」

「いいの! 思い出なんだから!」


「‥‥‥それで輝久君! どうですか?」

「すごい綺麗!」


真ん中に小さな貝殻が貼られ、その他は隙間ができないように、割った貝殻の裏側、キラキラしている方を上向きにして貼られていた。


「なんで真ん中だけ普通に貼ったの?」

「この真ん中の貝殻は自分なんです。一人で寂しくても、勇気を出して周りを見れば、こんなに輝いてるよって意味です!」

「すごい! きっと子供達も喜ぶね!」

「はい!」


それから全員作品を作り終え、皆んなで自分が作った作品を持って集合写真を撮った。

すると、莉子先生がいきなり服を脱いで水着姿になった。


「さぁ! 泳ぐわよ!」


昨日、宮川さん以外に肌見せないとか言ってたのに‥‥‥。


僕と一樹くんは水着に着替えて、先に海水浴をして皆んなを待つことにした。



***



その頃結菜達は、女子更衣室でのんびり水着に着替えていた。


「あ! 結菜、新しい水着買ったの!?」


結菜を見た柚木は、目をキラキラさせて聞いた。


「はい、今回は輝久君にサプライズで買いました‥‥‥変じゃないですか?」


結菜は、谷間が強調された黒くてセクシーな水着を着ている。


「似合う、似合うんだけどね‥‥‥ちょっとエロすぎかな‥‥‥その点、沙里は可愛いな〜! 私の理想を裏切らないスク水!」

「これしかサイズ無かった」

「あぁ‥‥‥うん、元気出して」

「気にしてないし、それより柚木、はみ出てるよ」

「えっ!?」

「嘘」

「ビックリさせないでよ!!」


その横では、芽衣が鈴に声をかけていた。


「ちょっと腕貸してごらん!」

「なにするの?」

「こうやって水に強いファンデーションを塗ると、ほら! 傷が目立たなくなった!」

「すごい! ありがとう! それより芽衣、その水着攻めすぎじゃない?」

「そうかな?」

「だって、お尻の割れ目、上の方少し見えてるよ?」


芽衣は腰を反らした、セクシーなポーズを取った。


「この水着で輝久を悩殺だ!」

「あら、輝久君はお尻より胸が好きなんですよ?」

「結菜!!」

「お尻の割れ目もファンデーションで消したらどうですか?」

「いやだし! てか、黒い水着被っちゃったね」

「問題ないです。輝久君は私しか見ませんから」

「くっ、何も言い返せない‥‥‥」


そして真菜は、美波を冷めた目で見ていた。


「お姉ちゃん、さっきから水着にティッシュ詰めて、胸大きく見せようとしてるけど、海に入ったらティッシュ溶けるよ」

「はっ!!」

「私のお姉ちゃんはアホである」

「心の声漏れてますけど!?」


そんなこんなで、女性陣も全員水着に着替え終わり、輝久と一樹の元へ向かった。



***



「お待たせ!」


柚木さんの声が聞こえて振り向くと、一樹君は皆んなの水着姿を見て、鼻血を出して倒れてしまった,


「一樹君!?」

「て‥‥‥輝久君、俺、合宿に来てよかったよ」

「一樹くーん!!!! はほっといてっと。結菜さん、水着似合ってます!」

「ほ、本当ですか?」

「本当だよ! 皆んなも凄いにあ‥‥‥にあ‥‥‥」


やばい、結菜さんの表情がいきなり変わった!!


「にあ‥‥‥にゃ〜」


全員、ポカンとした表情で僕を見てるけど、なんとか死なずに済みそうだ‥‥‥って、芽衣さんお尻!!


「輝久君♡ 何見てるんですか?」


砂浜に座る僕に、結菜さんが前かがみになって聞いてきた。


「今は結菜さんの胸しか見えません」

「今は? もしかしてですけど、芽衣さんの汚いお尻なんか見てませんよね? あんなブツブツだらけな汚いお尻」

「えっ!? 私のお尻ブツブツ!?」

「はい、フジツボみたいになっていますよ」

「ちょっとズボン履いてくるー!!」


結菜さんの嘘にまんまと騙された芽衣さんは、更衣室に走って行ってしまった。


その後、倒れている一樹君の体を砂に埋めて、沙里さんが一樹君の顔にカニを乗せているのを見守り、僕達は夕方まで遊びつくした。





そこに、ほんのり日焼けした莉子先生が、全員分の懐中電灯を持ってやって来た。


「さーて! お待ちかねの肝試しの時間よ!」


それを聞いた全員のテンションが下がりに下がって、僕達は泣く泣く廃墟の病院に向かった。


病院の目の前に着いた時には、完全に真っ暗で、病院の雰囲気だけで失神するかと思うぐらい怖い。


「さーて! 今回のチーム分けは、公平にクジ引きで決めます! 割り箸の先端の色が同じ人とペアになってもらいます! さぁ、引いた引いた!」

「青の人いますか?」


一樹君は青だったみたいだ。


「私、青引いた」

「沙里さんとペアですか! 怖いのって平気ですか?」

「‥‥‥」

「なんか言ってくださいよ!!」

「ピンクの人は誰ですか?」

「あ! 私ピンク!」


結菜さんと芽衣さんがペアか。


「紫は?」

「お姉ちゃん! 一緒だ!」

「やった!!」


美波さんと真菜さんは、姉妹コンビでペアだ。

次は僕!


「赤の人は?」

「あ‥‥‥私」

「よろしくね! 鈴さん! 今結菜さんの方を見たら、お化けより怖い可能性あるから見ちゃダメですよ!」

「う‥‥‥うん」

「先生、私レインボーなんだけど」

「レインボーは、好きなとこに入っていいわよ!」

「じゃ、輝久のとこ!」

「三人だと心強いですね!」


柚木さんが僕達のチームに入ると、芽衣さんが結菜さんを指差して言った。


「結菜の顔見てみ?」


結菜さんは鬼の形相で僕達三人を見ていた‥‥‥。


「あ、やっぱり結菜と芽衣チーム入ろっかな」


結局柚木さんは結菜さんの圧力に負けて、結菜さん達と行動することになってしまった。

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