quAliA

21子

第1話

パッと目を開くと、薄暗い部屋の中心に置かれたベッドの上に僕はいた。

動こうとすると体が動かない。

ベッドに固定されているようだった。


何故ここに僕はいるのか。

何故ベッドに固定されているのか。

そもそも僕は誰だっけな…思い出せない。


あれこれ考えていると、部屋の左にある冷たい金属質のドアから医者のような白衣を纏った40過ぎの男が入ってきた。

どうやらこの白衣の男によると

〝僕は記憶を喪失した〟らしい。

ベッドに固定されているのは、パニックを起こした時に危険だからだそうだ。


やっぱりな、と僕は思った。

しかし、何故か不安という感情が湧いてこない。

不安が何かすらもわからなかった。


すると、その男は僕の妻を呼んでくると言って部屋から出ていった。


それから15分。ドアが開いた。

僕の妻と名乗る20代前半の女性が泣き叫びながら僕の元へと駆け寄ってきた。

そして、僕の名前らしき言葉を頻りに叫んでいる。

名前を呼ばれても、何も反応しない僕をみて彼女は項垂れたように座り込んだ。

僕は頭も固定されているから、その姿は見えなかったが。


だがしかし、本当に僕は〝記憶を喪失した〟のだ。

僕の名前らしき言葉を叫んだ彼女は僕の妻だし、白衣の男は医者なのだろう。しっかりと確信することが出来た。


そうしていると、だんだんと意識が遠のいていった。

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quAliA 21子 @ultraviolet_rays2

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