第三話 協力
まえがき
貴賓室で情報を共有した結果分かった事は
外面は違えども全員同じ介護施設から召喚されたという事実だった。
だがこの世界の事が何一つ分からない八人。
逃げるにしても情報も地理も分からない。
東郷の提案により、ひとまずはこの動物の国に協力して様子を見るという事で意見はまとまった。
「待たせてしまい、すまなかった」
最初ここに呼ばれた時は色んな動物の奴らがいたが今はえるふと国王らしき老犬、後は腰に剣を差した数名の犬人兵士だけだ。
話合って出した結論だが、当面はこの国に協力しつつ色々な情報を集めた上でどう動くかをまた皆で話し合う事になった。
「いえ、救世主様もこちらに来たばかりで色々と迷われる事もありましょう」
「お
「おぉ……」
「それでは早速国王陛下の
色よい返答を聞いて肩の荷が下りたのか、えるふの足取りは心なしか軽いように見える。
俺達を奥の玉座に座っている老いた犬人の前まで連れていくと、自分は国王の隣まで移動してこちらへ振り返った。
「ご挨拶が遅くなりました。私はこの
「亜人?」
リオンの言葉に
「亜人というのは、人間に似た姿ではあるが体の一部または全身に動物の特徴が見られる人種の事を言います」
「なるほどねぇ」
「すると、今の我々は
「いえ……、皆様全員亜人です」
「え、そうなんか?」
「ただの背が低い人間じゃと思っとったわ」
「あなた様はドワーフと言う洞穴に住む種族です。人間とは異なる種族ですね」
「ほぉー……。そうなんじゃのぉ」
貴賓室で自分の事が気になってたもんなぁ。
リオンが申し訳なさそうな顔で俺達に深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、本来であればここにおわしますガルトウルム国王陛下からお言葉があるのですが……陛下はご高齢で大病を患っておられまして話すこともままならぬ状態でございまして…」
「高齢で大病を
俺はつい、思った事を口にしてしまった。
「陛下にご無理をさせているのは重々承知なのです…。本来この度の救世主様召喚の儀において、居て頂くべきであった陛下のご子息……トルビス王子が行方不明という事態でして…。我が国の方からお呼びしたにも関わらず国の長がいないとなれば皆様を軽んじているとも取られかねないと思い
「貴国の事情は分かりました。なのでリオン殿、一刻も早く陛下を休ませて上げて頂きたい」
「救世主様の寛大なお言葉、有り難く……」
「今の話からすると、アタシらは国王の大病を治すとか行方不明の王子を探すために呼ばれたのかい?」
国王が謁見の間からいなくなった後、
国王が大病で王子が行方不明なら最初にリオンが言ってた国家滅亡の危機にもなる気がしなくもねぇが…。
「いえ…それはそれで国の一大事ではあるのですが、お越しいただいた真の理由が他にありまして……」
「なんなんだい?」
「実はこの国は、他国からの侵略を受けつつあります」
「…国家間の戦争か」
「せ、戦争……」
「………」
戦争と聞き、青ざめる
多分俺も似たような顔になっているんだろうが無理もない。
俺らは過去に戦争を経験している。
それも小さくて物量も乏しい島国が全く真逆の大国に戦争を仕掛けるような悲惨な戦争を、だ。
「そして、敵国に
「はぁ? 敵が攻めてくるってぇのに仲間割れかよ!」
「事態の収拾と沈静化には努めておりますが……」
呆れたもんだ。
他国との戦争もだが、自国内でも争っているとはな。
はっきり言って最悪な状況だ。
こりゃあ下手したら敗戦はもちろん、本当に滅亡しちまうな。
さてさて
お手並拝見といきますか。
「情報の精度が低いな。この世界の地図とこの国の兵力や武具、戦術や戦略、戦争形態を知りたい」
「わ、分かりました。しばらくお待ちを…」
リオンが扉の向こうにいた兵士に声をかけ、何かを持って来るように手配する。
兵士が慌てて走っていくのを確認してから、再びリオンが戻ってきた。
「ご説明をさせて頂く為の資料が揃うまでしばらく時間がかかるかと思いますので、先に皆様の適性をお教え頂いても宜しいでしょうか…?」
「適性…とは?」
さすがの
「この世界には個人個人に適性がありまして、その適性によって得意な技術や使える魔法があるのです」
そう言って、丸められて紐で縛られた古くさい紙を複数取り出す。
魔法? 本当に
「どうぞ、一人一つお取り下さい」
「へぇ、面白そうだねぇ。どれを取っても同じかい?」
興味津々に
「ええ。このスクロール自体は個々のステータスを見るための魔法具なのでどれも同じです」
「ふぅん。ほんじゃ貰うよ」
物怖じせずに
「なんじゃかおみくじみたいで楽しみじゃの」
そんないいもんかねぇ。
「うわっっ! なんだいこりゃあ!」
声を上げたのは一番に紐をほどいた
文字は…何じゃありゃあ。日本語じゃねえぞ?
なんつぅか、ミミズがのたうち回っているようなぐねぐねした文字だ。
だが驚いた事に、書いてある文字の意味は分かる。
気味が悪ぃ。
ええと、内容は……
名前 :
種族 :
属性 : 火・水
適性 :
技能 :
みてぇだな。
「なぁーんか、意味はあんまり分かんないけど
「メカニック…ですか。初めて耳にする適性ですね…」
手に持った紙に、浮かび上がった文字のメモを取るリオン。
「まぁ、車とか機械とかの調子を見て、修理する仕事だねぇ」
「クルマ? キカイ? 初めて耳にします…」
「そうかい? うーん、アタシは説明が上手くないからねぇ…」
リオンと
他の奴らはこんな感じだった。
名前 :
種族 : ドワーフ
属性 : 火
適性 :
技能 :
名前 :
種族 :
属性 : 水
適性 :
技能 :
名前 :
種族 : エルフ
属性 : 風・地
適性 :
技能 :
名前 :
種族 :
属性 : 風
適性 :
技能 :
名前 :
種族 :
属性 : 地
適性 :
技能 :
名前 :
種族 :
属性 : 水・風
適性 :
技能 :
名前 :
種族 :
属性 : 地・火
適性 :
技能 :
俺と
しかし大砲創造とかよ、技能が穏やかじゃねぇな。
「ふむ、ふむ。皆様の適性は概ね分かるものばかりでしたが、カイグンとリクグンとは?」
「私と
「おお! 兵士の適性でございましたか!!」
嬉々としてリオンの目が輝く。
「これで敵国恐るるに足らずです!!」
「おいおい待ってくれよ! 協力はすると言ったが最前線でドンパチ戦争する気はねぇよ」
俺の言葉に
「それに関しては
やや怒気をはらんだ東郷の言葉にリオンが慌てて何度も頷く。
「もちろんそのつもりではございます! ただ…事態が事態なので戦場後方本陣にて将軍付きの司令官としてお知恵を頂ければと思います。」
「うむ。それならば海軍と陸軍に適性がある二人が力を貸そう。構わんかね?
畜生。俺まで巻き込みやがったこいつ。
だがここで俺だけ断るのも俺だけがビビっちまってるように思われて癪だ。
「いいぜ。海での戦いの時は期待しとくぜ、
と最大限の皮肉を込めて返事してやった。
「善処しよう」
そんなことを言い合っていると謁見の間の扉が開き、複数の兵士達が資料を抱えて入室してきた。
さて、いよいよこの世界の事が分かるチャンスが来たってとこか。
あとがき
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
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