フレデリック・サイデリカ
寿魔都
第1話プロローグ 本屋の息子と美女
プロローグ
彼は言った
「こんの…!詐欺師がぁ……!!」
彼女は言った
「私にはボスが必要なの!」
これは詐欺師と一人の平凡な少年の物語
「暫く出掛けてくるから店番よろしくね~」
いつものように軽やかにそう言って店をあとにした母。頼まれた身こと倉本健は手馴れた様子でカウンターに向かい店番をする。
僕の実家は古本屋である。
常連客が多いため 馴染みの顔ばかりが
今日も勢揃い。とても落ち着く。
「…何事もなく終わりそうだな」
カウンターで呑気に独り言をぼやいてると
一人の美女が入店してきた。
「は…?なんだあの子、初めて見るな…」
美女はロングヘアーの茶髪、全身黒コーデ、スラッとした腰つき。背も女性にしては
高く、誰もが一目奪われる存在感を
放っていた。
ちなみに僕は癖っ毛の猫背気味。身長は低いが顔はそれなりに良い方だと思う。
美女は店内をまわり 色んな本を見始めた。
常に可愛らしい笑顔をしていたが暫くすると
困った顔になり店内をウロウロしだした。
「何かお探しでしょうか?」
急にレジに並び出す程 お客さんが居なかったので声をかけた。美女は一瞬 驚いた顔をしたが、すぐに表情を取り戻し こう言った
「文学系の本って何処に ありますか?」
邪魔な物がない透き通った声の持ち主だった
「あぁ…こちらです」
「ここにあったんですね!ご丁寧に
ありがとうございます」
そう言って文学コーナーを眺め始めた美女
用がすんだのでカウンターに戻る
少し経つとお会計をしに来た。お目当ての品が見つかったのだろう
「お会計1980円になります」
「はい」
スムーズにお会計を済ませた上そそくさと
帰って行った。雑談も無かったので 心が
冷えていくのを感じながら自室に戻る準備を始める
今日の店番はこれで終わりだ
そう思い始めた時 後ろから声をかけられた。今度は聞きなれている声だった。
「なんだ、せいか。店番は ちゃんとしてたぞ?」
我が妹 倉本せいかがやってきた
「お兄ちゃん、 あの見慣れない美女に
デレデレしてた!なんなの!?
鼻の下伸ばしちゃってさ!」
「いきなり来て そんなん言われても困るんですが。そっちこそ宿題は ちゃんとやったのか?分からない所があればおしえてやるぞ?」
「いらない、お兄ちゃんに教えて貰える程 バカじゃないから。それより夕飯できたってお母さんが。」
「あぁ、呼びに来てくれたのか。助かった 今行く」
「うん。先にリビングに向かってるわ」
そうありきたりの会話をするのが兄妹の日課である
自室に戻るという予定が変更されたので
おとなしくリビングに向かった。
せいかとお母さんが食卓に着いていたので
急いで椅子に座る。明日、あんな事が起こる
とは知らずに夕御飯を黙々と食べ始めた
平凡な僕が居た。
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