俺と魔王さまと勇者さん

第1話 前書き…… （１）

「死ぬ前にあんたの子を……。孫を抱きたかったね……」

　ふぅ～と俺は、嘆息を漏らしながら今日にかぎり何故かしら、過去の出来事を走馬灯のように思い出してしまったよ。これまた不思議なことに……。

　そう、この思い出はね、俺の三年も前に起きた出来事なのだよ。それもある人が死ぬ間際に、俺に漏らした台詞なのだが。それが何故かしら今日にかぎり、ふと、俺の脳裏をかすめ走馬燈のように思い出してしまった訳なのだ。

　でッ、実はね、この台詞を俺に述べてきたのは死んだお袋なのだよ。

　とにかく死ぬ際の最後まで、独り身の俺のことを案じてくれてね。とにかく、一人息子の俺をおいて、『死ぬに死ねない……』と、でも述べたいような鬼気迫る感じの様子だったのを今でも目を瞑れば思い出すのだよ。

　だから俺自身もお袋が生きている間に、出来ればお嫁さんをもらい、安堵させてやりたい気持ちはあった。

　でも俺自身は、俗に言うオタクと言う奴でね……。あの当時は、オンラインゲームばかりをしていたから、女性との縁が全くと言って良いほどなかった。

　特にあの頃の俺自身は今の容姿とは違い、若さと活力に溢れてキラキラと光り輝いていたはずだから、

　多分……。

　まあ、そう言う訳だから外に出て働き、人に触れ合い、彼女を作り結婚とまでいけば良かったのだが。

　う～ん、中々ね……。そうはいかなかったのだよ。ついつい俺自身もあの頃は、引きこもり生活の繰り返しだから、今でも独身生活を続けているのだよ。

　う～ん、でも、そんな俺の引きこもり生活も、余り長くは続かなかった。

　だって急に俺のお袋の体の調子の方が悪くなってしまってね。俺は慌てふためいて、引きこもり生活を辞めた。そして直ぐにお袋がしていた商いの仕事……。販売の手伝いを始めたのだよ。

　特に親父を早くから亡くした俺とお袋だから。お袋が俺を育てる為にと必死になって。我が家の商いの仕事である販売をしながら、ろくでなしの俺を育ててくれた。自分自身の身を粉にしてお袋は、無理しながら働いてくれたのだよ。

　でッ、今迄お袋が大事に守ってきた販売業の商いを、お袋が他界した後は、俺がお袋の代わりに後を継いで、今は商いをさせてもらっているのだよ。