第四章 あなたに出逢えて良かった
プロローグ
真夜中の住宅街を走るはひとつの影―――。
その影は余りにも美しく、そして儚い。
止まることを知らない涙は陶磁器の様な肌を濡らし、そして首へと伝う。
穢れを知らない少女は走り疲れたのかその場でへたりこみ、焦点の失った目で固いコンクリートを見つめた。
「なん、で・・・」
大粒の涙は地面を濡らし、地に付いた手にポタポタと落ちていった。
「おかあ、さんっ・・・」
全部、嘘だったんですか?
私に向けられた笑顔は、全部―――。
「う”ぅ・・・」
こみ上げる声は、涙によって堰き止められてしまう。
少女には滂沱となって溢れ出る涙を留める術が無かった。
いや―――知らなった。
泣いたことなんて初めてのことで。少女には今の感情のをどう表現するべきかも、分からなかった。
「おとうさんっ・・・」
だったらなんで!なんで私に優しくしたんですか!
私が疎ましいなら、里奈だけを愛していたのならば、最初から私は希望なんて持ちませんでした!お母さんもお父さんも愛しませんでした!
―――里奈だって!!!
「っ・・・」
少女は瞬間、大好きな妹の顔を思い出した。
あぁ、私はなんて――。
少女は噛み締める。
血の滲むほどに。
とその時――。
「あら、こんな暗い時間にどうしたの?」
頭上から聞こえてくる女性の声に、少女は慌てて目元の涙をぬぐった。
「な、何でもないです・・・」
「なんでも無いようには見えないのだけれど・・・」
少女はある程度涙をぬぐい終わり、早々と立ち去ろうとしたが――。
――コテっ。
足に力が入らず、可愛らしくこけてしまった。
「あらあら、大丈夫?」
赤みがかったショートボブの女性は、倒れた少女の腕をそっととり立たせた。
「あ、ありがとうございます」
「あらあらあらあら・・・なんて可愛らしい子」
ショートボブの女性は少女の顔を見て心底驚いた。
―――ここまで綺麗な瞳は、私は知らないわね・・・。
「は、はあ、私はもう行くので、ありがとうございました」
再び少女は立ち去ろうとするが、それはショートボブの女性の声によって踏みとどまった。
「行く当て、無いんでしょ?」
「っ!?」
「はぁ・・・私はこう見えてあなたの様な子何人も見たことあるのよ。私の目は誤魔化せないわよ」
「そ、そんなことありません!」
少女は図星だったが慌てて否定する。
だが―――。
「真っ赤に腫れた目、ヨレヨレな所々破けた服、外なのに靴下のまま、そして――真夜中。これだけの条件が揃ってて、まだ否定するのかしら?」
「っ・・・」
「私はあなたを責めたいわけじゃないのよ。ただ、こんな時間にあなたみたいな子がうろついて居たら、どうしても危ないのよ」
「・・・」
少女は余りに美しすぎた。
年齢に見合ったまだ幼い顔立ちだが、その段階ですら画一された美があった。
―――こんな可愛らしい子が真夜中にほっつき歩いてたら、簡単に欲の腐った男共の餌食になるわね・・・。はぁ、仕方ないわ。
「―――私の家に、来ないかしら?」
「ぇ・・・?」
「こう見えても私、結構なお金持ちなのよ?財政面は任せなさい。部屋も沢山余ってたから、丁度いいわ」
「そ、そのような事して貰う訳には――」
「いいのいいの。下手な見栄は張らなくていいわ。ここは優しい優しいお姉さんを信じてくれないかしら?」
少女には何故か目の前の女性に”悪意”を感じなかった。
「・・・」
あぁ綺麗な女性・・・。
「どうかしら?」
「・・・お願い、します」
少女は罪悪感に苛まれたが、どうしても断る気にはなれなかった。
「ふふっ、それでいいのよ」
ショートボブの女性は慈愛に満ちた表情で微笑んだ。
「私の名前は神垣アナ。町裏でカフェを営んでいるわ。どうぞよろしくね?」
アナさん、って言うんですね。
うん、覚えました。
「私の名前は―――」
スッと息を吸う。
「―――古瀬麻衣と、申します」
~あとがき~
新章入ります。麻衣ちゃん編です。
幕間の槻谷君は別に気にしなくていいです。かませです。
私のお気に入りが槻谷君なだけです。はい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます