第三章 これから、変わる

プロローグ

 外灯に照らされ、日中の盛り上がった活気に反して物寂しさを感じさせる公園。


 そして、真夜中の公園に似ても似つかない幼い容姿をした2人の少年少女が夜の空を見上げていた。

 


 ◇



「でも、良かったのかな?こんな暗い時間にきても?」


「大丈夫だって!今日は食事会の日じゃん」


「それもそうだねっ」


 少年少女――小学生と呼ばれるに相応しい容姿をした2人は、手を繋ぎながら会話をしていた。


「あっ、えりな!上っ」


 なんの突拍子もなくいきなり少年が声を上げ、びっくりする少女。

 声を掛けられた少女はゆっくりその方向へと首を傾ける。

 

 

 そして、その指差す方向にあるのは・・・



「きれい・・・」


 

 空一面の


 山奥の公園。決して深夜に小学生の子供が保護者なしに来ていい場所ではない。だが、そんな知る人ぞ知る穴場な公園に2人は深夜、訪れたのだ。

 

 

「・・・なっ、だからすごいっていったろ?」


 少年はやってやったと言わんばかりに人中を人差し指で擦り、照れくさそうにはにかんだ。


「うん・・・こんな綺麗な場所があったんだね・・・」


「俺もこのまえ知ったんだけどな、お父さんに教えてもらったんだ」


「うん・・・きれい・・・」


 話半分といった様子で少年の言葉を聞き流す少女。

 空の星々に余程感銘を受けたのか、先程から顔が上を向いて下がらない。


「・・・」


「・・・」


 2人は顔を上げたまましばらく沈黙を保ち、宇宙の荘厳さに見惚れていた。


 その間もずっと、2人は手を離すことはなかった。まるでこの手を絶対に離すもんか、と言う風に・・・。


「・・・ずっと、一緒だな」


「・・・うん、ずっと、一緒」


 唐突に声を掛けた少年。

 だがその発言に驚きもせずそれがまるで当たり前であるように、少女は少年の言葉をゆっくりと反芻した。

 その抽象的な言葉ですら説明せずとも通じ合えるような、そんな強い糸が彼らには確かに繋がっていた。


「・・・また、一緒に見に来ようね。ゆうき」


「ああ、いつだっていいさ。えりなとなら」


「わたしもゆうきとならっ!」



 握り合った手を一秒も離すことなく、彼らは語り合った。


 挫折や矛盾、後悔や怒り。そんなものを抱えていない時代。夢や希望しかない彼らには想像すらできない世界だったはずだ。



 絶対に変わらない。絶対に変えさせない。


 

 彼らは今、そのステージから・・・・・・・飛び降りた。 






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