第16話 似たもの同士

 同盟締結後、小説や漫画の事について少し談笑し、カフェを出て若山さんとは別れた。やはり同じ趣味を持っているのは話が続くね。楽しい。


 家に着き、早速買った小説を読もうと思うが少しお腹が減った。現在11時。お昼には少し早いが昼食を食べよう。

 俺は基本的に何でも食べれるので、冷蔵庫に入っていた具材で料理を作る。生姜焼きが食べたい。滅茶苦茶簡単なので早速作ろう。


 

「ごちそうさまでした」


 昼食を食べ終わる。ショウガ入れるだけでこんなに美味しくなるんだから、すごい。千恵も余計な物を入れずにショウガぶっこめば、少しは美味しくなると思う。

 一応千恵が帰ってくるかもしれないので、千恵の分も作っておいた。まぁ夕方まで帰ってこないと思うけど。しっかりとタッパーへ移動だ。


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「あ”ぁ~読み終わった~」


 ずっと同じ体勢で本を読んでいたせいか体中が凝り固まっていた。ベッドから体を起こし、体を捻りポキポキ鳴らす。ふぅー気持ちいぃ・・


「正直表紙で選んだけど、めっちゃ面白かったな」


 昼食を食べ終わり2階の自部屋へ駆け込み、ベッドへ寝転がりながら小説を読み始めたのだが、この小説めっちゃ良かった。表紙のイラストが気に入ったから買ったんだけどね。


 現在夕方の5時。ふと窓の外を覗けば、橙色に染り始めた住宅街が瞳に映る。

 さて、そろそろ千恵が帰って来てもおかしくないんだが・・・


「たっだいまー!」


 朝出掛けた時と、なんら遜色ない声が一階から聞こえてくる。

 帰ってきたか。なんでそんな元気なんですかね、普通もっと疲れない?終日遊んでたら。


「おかえり」


「いやー楽しかったー!」


「そうか」


 手に提げていたバッグを放り投げ、リビングのソファーにドカッと座り、次いでダラーと体を横に倒す千恵。手洗いうがいもせずにこの子はほんと・・・


「手洗いうがいしてから座りなさい」


「ぅんーめんどくさーい。なんか眠くなってきちゃった・・」


 散らばったバッグを拾いながら千恵に諫言をする。


「いいから早く。汚いでしょうが」


「もうー神経質だなー兄ちゃんは」


 やっと立ち上がり洗面所へ向かう妹。

 手洗いうがいは基本でしょ。神経質はもっと面倒くさい性格してるよ。俺の知人に実際いるけど。


「ただいま」


 玄関が開いた音がすると思うと母が帰ってきた。疲れた顔してんなー、千恵とは大違いだ。若さとは驚くべきものである。


「あっお帰りお母さん」


「おかえり」


「はぁ~疲れたわー」


 バッグをソファーに放り投げ、ドカッと座り込む母。余程疲れたのか、目を瞑り顔を天井に向けたまま、ため息を吐いている。

 壮絶な既視感。子は親に似るというが・・・千恵の場合は母に似たんだな。


「母さん。手洗いうがいしな」


「あぁ、忘れてた」


 ゆっくりと体を起こし、洗面所に向かってゆく。俺はバッグ拾い係かなんかですかね。帰ってすぐ放り投げないでほしい。


「兄ちゃん」


「うん?」


 洗面所から帰って来て、テーブルの上にあったアメタマを口に咥えたまま喋る千恵。


「結局今日も一日中本読んでたの?」


「もちろん」


「はぁーほんと飽きないねそれ。高2にもなってずっとじゃん。もっとこう、若者らしく青春したら?そうっ私みたくね」


 ドヤ顔を決めながら俺を煽ってくる。できるならうにやっている、と言いたいが行動に移さない俺に言う資格はない。まぁ別に行動しようとは思わないが。


「そうか」


「そうか、って返事になってないしっ。私これでも兄ちゃんの事心配してるんだよ?いつもボッチだし小説ばっかよんで・・・いじめとかじゃないんでしょ?」


 俺の周囲にいる人間を徹底的に調べ上げるやつが何を言う、とは喉元まで登ってきたがどうにか抑える。それよりまたボッチて言われた。悲しい。


「あぁ、全くそういうのではない。心配無用」


「・・・・・ならいいけど」


 俺の人間関係はまさしく浅く、狭い。クラスメイトと話す時も必要最低限の会話しかしない。――「プリント提出しといてよ」  「分かった」――的な。深い関係には至らない。最も、なろうとも思わないが。

 ただ、一方でも俺にはある。誠に遺憾であるが。

 と、そこへ


「ご飯作るから宿題でも済ませなさい」


 エプロンを着けてキッチンへ立った母。当たり前かもしれないが、母が作る料理は非常に美味しい。何年か前に調理師免許を頑張って取得したらしい。実際、小学校で給食栄養士の仕事をしている。


「お母さん今日はなにー?」


「そうね。ひき肉余ってたし、ハンバーグでも作ろうかな」


「やったっ!」


 あぁ、楽しみだ。 

   

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 ピコンッ


 美味しい夕食を食べ終わり、風呂にも入り終わってアニメでも見ようかと思いイヤホンを付けようと思った時、スマホから着信音が鳴った。


「あぁ、若山さんか」


 彼女とはカフェで別れる前に、連絡先を交換しておいたのだ。彼女のボッチ卒業の為の、作戦を練るために連絡先を交換した方がいいのでは?と言われ交換した。

 俺の連絡先が一つ増えた。その事実がちょっと嬉しくて、声が上ずったのは彼女に気がつかれてないはずだ。


 メールには今日の件に対して、改めてお礼の文が並べられていた。そんな畏まらなくていいと思うのだが・・・


《本日は私の為に手伝って下さると仰って頂き、本当に有り難うございます。

 芦田君は自身のことを弱いと仰りましたが、私はそうは思いません。一緒に同じ 委員会を務めてきた私には、分かります。なので、そう自分を卑下しないでください。少なくとも私は芦田君の事、とても素晴らしい方だと思います。ボッチの私に言われても説得力がないと思いますが・・

 話は変わりますが、こうしたメールのやり取りで話し合うのは少し大変だと思うのです。ですから、出来るだけ用事などが無いときは電話でのやり取りにしませんか?

 返信、待っています。》


 あの子真面目だからか知らないが、メールでもこういう感じなのか。

 それにしても電話か。別にいいけど今からだろうか?まぁ一応掛けてみよう。


「あっ、もしもし芦田です。」


 すぐ出た。


「っ、は、は、はい。わ、若山ですっ」


「・・・大丈夫?」


「は、はいっ全然平気ですっ。そ、それよりメール見て頂いてありがとうございます。だ、だけど、すぐ電話してくるとは思いませんでした・・」


「あー今お取込み中?」


「い、いえっ、そ、その心の準備というか、なんというか・・」


「・・・・そう」


 電話に心の準備が居るのか。


「それじゃあボッチ卒業会議はじめようか」


「は、はいっ」


 仰々しい感じで言っているが、実際言ってること凄く妙ちきりんである。今、俺達がやっていることを客観的に見て少し戸惑ったが、彼女の為だ。頑張ろう。


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 あの後、数10分に渡る会議を終え電話は終了した。その後はいつも通りの平凡な休日だった。日曜日もアニメ漬けの一日でした。【いもコレ】の最新話もあったがこのアニメは俺にダメージを与えてくるので却下にした。


 そして、週明けの今日。教室に到着した時、クラスメイトから異様な視線を感じた。違和感を全身に感じながらも聞き身を立てる。【クラスの話声聞き取り検定1級】の力は伊達じゃない。


 

 曰く、――ぼっち君と三つ編みちゃん付き合ってるらしいよ――と






~あとがき~


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