海が太陽のきらり

まえがき 第1話

『まえがき』

　毎度（まいど）お騒（さわ）がせ致（いた）しております。ちり紙交換車（がみこうかんしゃ）でございます……じゃなかった。

　カクヨム界（かい）屈指（くっし）のアイデアメーカーにして叙述（じょじゅつ）トリックの名手（めいしゅ）、魔女（まじょ）っ子（こ）★ゆきでございます。

　誰（だれ）も言（い）ってくれないから、自分（じぶん）で言（い）っちゃったよ。まあ、言（い）うだけならタダだし、言（い）ったもん勝（が）ちですからね。

　最初（さいしょ）に言（い）っておきます。

　本作（ほんさく）は死（し）にます、人（ひと）です、２人（ふたり）です、溺死（できし）です。

　本作（ほんさく）は登場人物（とうじょうじんぶつ）は２人（ふたり）。陽子（ようこ）ちゃんと海斗君（かいとくん）だけです。溺（おぼ）れるのは海斗君（かいとくん）です。という事（こと）は……？

　にも関（かか）わらず本作（ほんさく）はどういうわけか、ハッピーエンドで終（お）わります。

　魔法（まほう）は登場（とうじょう）しません。超能力（ちょうのうりょく）も登場（とうじょう）しません。奇跡（きせき）も起（お）こりません。

　たまたま、そばを通（とお）りかかった人魚（にんぎょ）が助（たす）けてくれたり、イルカやクジラが助（たす）けてくれたり、100羽（わ）のうみねこがいっせいに助（たす）けに来（き）てくれたりなんかもしません。そんな事（こと）あってたまるか、です。

　助（たす）けられる可能性（かのうせい）があるのは、陽子（ようこ）ちゃん１人（ひとり）だけです。なのですが、彼女（かのじょ）は小学校（しょうがっこう）低学年（ていがくねん）の女（おんな）の子（こ）なのです🎒　もちろん、すんげえ怪力（かいりき）の持（も）ち主（ぬし）であるとか、えら呼吸（こきゅう）が出来（でき）るとか、幽波紋（スタンド）能力（のうりょく）があるとか、未来（みらい）からきたネコ型（がた）ロボットのひみつ道具（どうぐ）を保持（ほじ）しているとか、ロデム・ロプロス・ポセイドンなどのしもべが守（まも）ってくれてるとかもありません。

　陽子（ようこ）ちゃんは、多少（たしょう）泳（およ）ぐのが得意（とくい）で、海（うみ）に関（かん）する知識（ちしき）も多少（たしょう）身（み）につけてる程度（ていど）の小学生女子（しょうがくせいじょし）に過（す）ぎません。

　状況的（じょうきょうてき）には、２人（ふたり）がドザえもん、ドザミちゃんになるコースが確定（かくてい）っぽいのですが？

　『２人（ふたり）は天（てん）に召（め）され、お星様（ほしさま）になりました』って結末（けつまつ）でもありません。

　ってか、それバッドエンドだからっ！

　そこだけに着目（ちゃくもく）せず、背景描写（はいけいびょうしゃ）にも是非（ぜひ）ご注目（ちゅうもく）下（くだ）さい。カクヨム界（かい）ワーストナンバーワンの実力（じつりょく）を、いかんなく見（み）せつけてやるですよ。

『おおっ、素晴らしい（スンバラスウィー）。そのような手法（しゅほう）があったのか』

と称賛（しょうさん）されるのか、はたまた、

『ちくしょー、騙（だま）された、金返（かねかえ）せ、バカヤロー！』

と、大絶賛（だいぜっさん）の嵐（あらし）が吹（ふ）き荒（あ）れるのか？　その目（め）でお確（たし）かめ下（くだ）さいませませ。

『第（だい）１話（わ）』

　僕（ぼく）は海（うみ）に来（き）ていた。が、陽（ひ）のあたる場所（ばしょ）を避（さ）け、スマートフォンのアプリゲームの『ラブラブライブ！　高校（こうこう）アイドルフェスティバル』、通称（つうしょう）『ココフェス』をプレイしていた。

　本当（ほんとう）は冷房（れいぼう）の効（き）いた室内（しつない）でプレイしてたいのだけれど、お母（かあ）さんに海（かい）パン一式（いっしき）渡（わた）されて、

「海（うみ）へでも行（い）って来（き）なさい」

と、追（お）い出（だ）されたのだった。

　毎年（まいとし）の事（こと）とはいえ、あんな追（お）い出（だ）し方（かた）をするなんて。こうなったら、意地（いじ）でも泳（およ）いでやるもんか！

　しかし、30分（さんじゅっぷん）もプレイしていると、ライフポイントが尽（つ）き、プレイが出来（でき）なくなった。ライフポイントは原則（げんそく）、時間（じかん）によって回復（かいふく）する。つまり僕（ぼく）は、数時間（すうじかん）することがなくなってしまった。

「あ〜、ヌンテンドーＤＳとかプレイエアポートポータブルも持（も）ってくるんだったな」

　暇（ひま）だー。顔（かお）を上（あ）げ前方（ぜんぽう）を見（み）た。海（うみ）がある。感想（かんそう）、以上（いじょう）。

　そもそも、海（うみ）嫌（きら）いなんだよな〜。『ラブラブライブ！』の海田園子（うみだそのこ）ちゃんは好（す）きだけれどさ。

　仕方（しかた）ないから寝（ね）る事（こと）にした。こんなところで寝（ね）るなんて、とちょっと思（おも）ったけれど、どうせ閑古鳥（かんこどり）が全力（ぜんりょく）で大合唱（だいがっしょう）してるようなところだ。誰（だれ）も来（き）やしないだろ？

「……下（くだ）さい。生（い）きてるなら返事（へんじ）して下（くだ）さい。死（し）んでるなら、そうおっしゃって下（くだ）さい……」

　誰（だれ）かに声（こえ）を掛（か）けられ、薄目（うすめ）を開（あ）ける。小（ちい）さな女（おんな）の子（こ）だ。

「へんじがない　ただの　ふらんしたいの　ようだ」

　返事（へんじ）をすると、

「生（い）きているじゃないですか？　プータローですか？　ルンペンですか？　行（い）き倒（だお）れですか？　腐（くさ）っているのは心（こころ）だけですよね？」

と質問攻（しつもんぜ）めされた。あ〜、もうっ！

「通（とお）りすがりのイケメン男子高校生（だんしこうこうせい）ですよ。こんな男前（おとこまえ）な行（い）き倒（だお）れがいると思（おも）う？」

「あー、鏡（かがみ）見（み）た事（こと）ないんですか？　どう贔屓目（ひいきめ）に見（み）ても、顔面偏差値（がんめんへんさち）35くらいですよ？」

「顔面偏差値（がんめんへんさち）低（ひく）っ！　僕（ぼく）、そこまで酷（ひど）くないよね？　返答次第（へんとうしだい）では、盛大（せいだい）に泣（な）くよ？」

「あー、はいはい。じゃあ、顔面偏差値（がんめんへんさち）80って事（こと）にしといてやるですよ。こんなところで何（なに）してるんですか？」

「『ココフェス』してて、ライフポイントなくなったから、寝（ね）ながら回復（かいふく）待（ま）ってた」

「はあーっ！　何（なに）をしてやがりますか？　近頃（ちかごろ）の若（わか）い者（もん）は……」

「いや、キミの方（ほう）が若（わか）いよね？　それとも見（み）た目（め）に反（はん）して10万（まん）ウン十歳（じゅっさい）とか？」

「レディに歳訊（としき）くなんて、デリカシーに欠（か）けますよ？　それに人（ひと）に訊（たず）ねる前（まえ）に、自分（じぶん）から言（い）うべきではありませんか？」

「16歳（さい）、花（はな）も恥（は）じらうピチビチの高校（こうこう）２年生（ねんせい）男子（だんし）です、キャハ♡」

「気持（きも）ち悪（わる）いです。ゲロゲロです。で、名前（なまえ）は？」

「人（ひと）に訊（たず）ねる前（まえ）に、自分（じぶん）から言（い）うべきではありませんか？」

「むうぅ〜っ！」

　ふぐのように顔（かお）を膨（ふく）らませる女（おんな）の子（こ）だが、一瞬（いっしゅん）の間（ま）をおいて。

「陽子（ようこ）ですよ。小学（しょうがく）３年生（ねんせい）。趣味（しゅみ）は将棋（しょうぎ）と盆栽（ぼんさい）。好（す）きな歌手（かしゅ）は美空（みそら）ひばりとテレサ・テンです」

　ぽかーん。空（あ）いた口（くち）が塞（ふさ）がらない。

「盆栽（ぼんさい）以下（いか）は冗談（じょうだん）ですよ？　本気（ほんき）にしないで下（くだ）さいね！」

「なんだ、びっくりした。ところでキミは何（なに）しにここへ？」

「そ、そうでした。こうしちゃいられません。プータロー、行（い）きますよ！」

　小学生女子（しょうがくせいじょし）の陽子（ようこ）ちゃんが僕（ぼく）の手（て）を取（と）りながら立（た）ち上（あ）がる。

「プータローちゃう！　海斗（かいと）だからっ！　それで、どこ行（い）くの？」

「海（うみ）に来（き）て、昆虫採集（こんちゅうさいしゅう）する莫迦（ばか）はいませんよね？　海（うみ）でゲームしてる莫迦（ばか）は見（み）かけましたが」

「ぐっ！」

「泳（およ）ぐんですよ？　ほらっ、早（はや）く、着替（きが）えて、着替（きが）えて！」

　そう言（い）うと陽子（ようこ）ちゃん、なんと目（め）の前（まえ）で服（ふく）を脱（ぬ）ぎだした。慌（あわ）てて、背（せ）を向（む）ける。

「なんでそっち向（む）くんですか？　話（はな）しするときは、相手（あいて）の顔（かお）を……」

「そっちこそ、なんで僕（ぼく）がいるのに、服脱（ふくぬ）ぎだすんだよ？」

「脱（ぬ）がないと着替（きが）えられないじゃないですか？　クラスの男子（だんし）だって、気（き）にしませんよ、そんな事（こと）……って、はっ！」

　陽子（ようこ）ちゃんが僕（ぼく）の腕（うで）を取（と）って振（ふ）り向（む）かせる。既（すで）に、スクール水着（みずぎ）に着替（きが）えた後（あと）だった。胸（むね）のゼッケンには、ひらがなで『みなみ』と書（か）かれていた。思（おも）わず、

「みなみ……ようこ……」

と口（くち）に出（だ）してしまう。

「『吐息（といき）でネット』と『はいからさんが通（とお）る』と『話（はな）しかけたかった』だったら歌（うた）えますよ？」

「いや、意味（いみ）わかんないんですけれど？」

「そんな事（こと）よりですね！　海斗（かいと）はロリコンなんですか？　ロリコンなんですね。海（うみ）で見（み）かけた超絶美少女（ちょうぜつびしょうじょ）に声（こえ）を掛（か）け、上手（うま）い事（こと）たぶらかし、お持（も）ち帰（かえ）りしていたずらして殺（ころ）して山（やま）に埋（う）めようって魂胆（こんたん）だったのですね？　ちくしょう、騙（だま）された、このロリペド野郎（やろう）っ！　お父（とう）さん、お母（かあ）さん、先立（さきだ）つ不幸（ふこう）をお許（ゆる）し下（くだ）さい。私（わたし）はあなた方（がた）の娘（むすめ）に生（う）まれて幸（しあわ）せでした。そうだ、ダイイングメッセージを残（のこ）しておかないと。『犯人（はんにん）はヤス……じゃなくて、かいと！　早（はや）く捕（つか）まえて』。えーと、それから……。何（なに）してるんですか？」

　陽子（ようこ）ちゃんがジト目（め）で睨（にら）みつけてくる。

「な、何（なに）って？」

「早（はや）く止（と）めて下（くだ）さいよ？　いつまで、１人（ひとり）コント続（つづ）けさせるおつもりですか？　放置（ほうち）プレイですか？　あ〜、やだやだ、これだから変態（へんたい）さんは……」

　面白（おもしろ）いから見（み）ていただけなのに、この言（い）われようはなんだろう？

「ほら、水着（みずぎ）持（も）っているじゃないですか？　早（はや）く着替（きが）えて下（くだ）さい」

「泳（およ）ぎたくない……」

「泳（およ）げないんですか？　私（わたし）がオリンピックに出（で）られるくらいに、しごきあげて差（さ）し上（あ）げます」

「いや、泳（およ）げるけれど、泳（およ）ぎたくない」

「キャー、ロリコン　ヘンタイ　ペドヤローニ　サラワレルー(棒読（ぼうよ）み)。今（いま）のセリフ叫（さけ）んでやりましょうか？」

「あー、なんだか急（きゅう）に泳（およ）ぎたくなってきたなー。おっ、奇遇（きぐう）にも右手（みぎて）に海（かい）パンがっ！　よーし、着替（きが）えるぞー、キョロキョロ」

「ここで着替（きが）えて下（くだ）さい。今（いま）すぐ、直（ただ）ちにっ！」

「えっ、いやーん。婿入（むこい）り前（まえ）の肌（はだ）をレディには見（み）せられませんわ！」

「うっせーですよ、このキモオカマヤロー！　さっさと脱（ぬ）ぎやがれです。それとも、叫（さけ）びましょうか？」

　どうやら僕（ぼく）に勝算（しょうさん）はなさそうだ。おとなしく着替（きが）える事（こと）にする。

「こっち向（む）いて着替（きが）えて下（くだ）さいよー！　粗末（そまつ）なモノでも、笑（わら）ったりしませんから。その辺（へん）のデリカシーはわきまえているんですよ、私（わたし）」

　えっへん、とばかりに無（な）い胸（むね）を反（そ）らせる陽子（ようこ）ちゃん。

　僕（ぼく）は男（おとこ）の子（こ）の大切（たいせつ）なところが、なるべく外気（がいき）に触（ふ）れないよう、素早（すばや）く海（かい）パンに履（は）き替（か）えた。

「ふむふむ。そうですか。さすがに高校生（こうこうせい）ともなると違（ちが）いますね〜♪」

　見（み）られた。ばっちり。もう、お婿（むこ）に行（い）けない……★

　作者（さくしゃ）コメント

　如何（いかが）でしたでしょうか？　きっと皆様（みなさま）、私（わたし）の描写（びょうしゃ）に驚（おどろ）かれた事（こと）と存（ぞん）じます。

　むっふっふ。伊達（だて）にカクヨム界（かい）ワーストナンバーワンを名乗（なの）っていないのですよ？

　他（ほか）の作品（さくひん）で皆様（みなさま）が、競（きそ）って自慢（じまん）の素晴（すば）らしい描写（びょうしゃ）を『まだか、もっとか、これでもか』とばかりに投入（とうにゅう）されて食傷気味（しょくしょうぎみ）でしょうから、箸休（はしやす）めに私（わたし）のあっさりとした小説（しょうせつ）でお楽（たの）しみ下（くだ）さいませ♡