6章 ハロウィンイベント
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10月1日、世間は日曜日なので休みですが、今日は文化祭のため学校へ行っていました。私のクラスは展示系でしたが、片付けで疲れたので、ログインはなしです。アップデートもあったようですが、確認も含めて明日にしましょう。
日付が変わり日も高くなったので、そろそろアップデートとその確認をしましょう。えーと、バグ修正の一覧はもう出来ないことなので気にする必要はなさそうですね。今月から始まったハロウィンイベント以外に興味を引くものはないので、早速特設ページを見てみましょう。
えーと。
センファストの街の日常を壊す悲鳴が聞こえた
カボチャ頭のモンスターが街へ侵入してきたからだ
けれど、その悲鳴はすぐに困惑へと変わる
戦える人達が駆けつけると、街へ侵入したモンスターが
ボロボロの状態で倒れ伏していた
そんな状態にも関わらず何かを必死に伝えようとしている姿を見た人々は
そのモンスターの声に耳を傾けることにした。
「僕はジャックランタン、この街は狙われている」
それは、街に迫った危機を知らせるものだった
ふむふむ、流石にストーリーだけでは詳細はわかりませんが、今回は夏イベの様に専用の街に行くわけではなさそうですね。
えーと、何々、カボチャ頭にマントを身に着け宙に浮いた手を持つジャックランタンによると、カボチャの軍勢がカボチャ界から出てこようとしているらしいです。今はまだ準備の段階らしいのですが、軍勢が出てくるための門は既に出来上がっているので、門の拡大阻止と防衛の準備をして欲しいそうです。
その方法は……、カボチャ理論でよくわからないそうですが、ボスなどの一部のMOB以外のドロップに【ランダム仮装袋】というジャックランタンの力の欠片という設定のカボチャのような袋が追加されるらしく、それを集めてジャックランタンに渡すことで門の拡大阻止や、防衛の準備に使えるポイントが貰えるそうです。
ちなみに、ランダム仮装袋の納品時にはポイントと同じだけの防衛戦の総大将への投票券が貰えるらしく、一番票を集めたプレイヤーが総大将となり、28日の夜に行われる防衛戦の指揮を執ったり、集められたポイントを使って防衛設備を整えたりするそうです。
そのアイテムを納品せずに街中で使うと、一時的に装備がランダムで選ばれた仮装へと変化するそうです。他にも、ランダム仮装袋10個で仮装装備袋1個と交換出来るそうで、これは出た仮装装備がそのまま貰えるのですが、基本的には中身がわからないので、ギャンブル性が高そうです。ああ、出た装備は取引可能というのは大事な点でしょう。
プレイヤー全体で獲得したポイントで防衛戦の難易度が変化するというのは、門の拡大に関わる部分でしょうね。
後は、個人で貯めたポイントが最後に発表される報酬と交換できるようです。仮装装備袋と交換してしまうとその分はポイントにはならないようですが、何個かは入手してみてもいいかもしれませんね。
ランダム仮装袋を全部使うわけでもないので、何個か用意して遊んだら残りは納品すれば大丈夫でしょう。
えーと、イベントに関してはこれくらいですかね。後は、恒例の新PVです。
まず最初に4体のボスらしきMOBの出現シーンからです。水の多いフィールドにはサハギンサージェントが、洞窟らしき場所にはゴーレムサージェントが、草原らしき場所にはオークサージェントが、ピラミッドの内部らしき場所にはマミーサージェントが出現しました。
それからはそれぞれの戦闘シーンの名場面集になっています。ちなみに、オークサージェントと戦っているのは葵達なので、私は映っていません。流石に場面転換が激しいので情報収集には向きませんね。ただ、どのボスにも発狂モードがあるようなので、要注意です。
最後に4枚のメダルが出てきてPVが終わりました。ボスのドロップは謎のメダルでしたが、4枚集めて何かに使うのでしょう。
アップデートも終わっているので、早速ログインです。
ログイン画面には毎度お馴染み私のアバターが表示されています。少し前に装備を一部更新しましたが、この先の折れた三角帽は気に入っています。茜色の布が巻いてあったり、八咫烏と狸のデフォルメされたワッペンがあったりと、私のための帽子とも言うべき点があります。
使うことのないフードが付いているローブの内側の布も茜色なのは大事なポイントです。茶色の編み上げブーツや白いニーソとブラウス以外は外側が黒いので魔女っぽさがありますよね。
そして何より、茶色の長い両手杖、これが大事なんですよ。内部に8色の光が漂っている透明の宝玉が杖の上の方に取り込まれるかのように付いており、木材が表面を網目のように覆っています。私はこれを表現するのにマスクメロンとしか言えませんが、気に入っていることに間違いはありません。
腰まである白に近い銀色の髪や、きついツリ目気味で翠色の瞳は魔女ならこうだという私のこだわりです。
さて、アバター鑑賞もこれくらいにしてゲームを始めましょう。
「こんー」
クランハウスのポータルがログイン地点に設定してあり、ログインして誰かがいたらこれを言うのが定番です。
テロン!
――――フレンドメッセージが一通届きました。――――
「遅かったな」
「昨日は眠そうだったけど、アップデートもしてなかったの?」
「目が垂れそうだったから、やらなかったよ」
風があればたなびきそうなマフラーで口元を隠した忍者装備のハヅチと、炎の色だという瞳と長い髪に巫女服の胸部がかなり盛り上がっている時雨の二人しかいませんでした。私達は振替休日ですが、他のみんなにとっては普通の月曜日なのでしかたありませんね。
「何そのカボチャの袋」
聞くまでもありませんが、一応は確認するべきでしょう。
「イベントのランダム仮装袋だよ。仮装装備袋とポイント、どっちにしようか迷ってて」
「あー、さっき読んだよ。仮装装備袋の中って、決める方法あるのかな?」
「そのへんは情報屋クランが検証して公表するだろ。俺達はその結果を見てから動けばいいさ。総獲得ポイントは最前線のクランが大半を集めるだろうし」
まぁ、エンジョイ勢ですから、その辺りは人任せですよね。
それではザインさんからのメッセージを確認しましょうかね。
ふむふむ。
「西側を攻略したのって情報屋クランなんだね」
「あー、ロジスト秋生って【フィールドワーカー】のサブマスだよな」
おや、そんな名前だったんですね。ザインさんからのメッセージに情報屋クランと書いてあるのは、クラン名を書いても私がわからないと判断したからなのでしょう。実際、クラン名を書かれてもわからないので良い判断です。
「ザインさんから?」
「そうそう。西側のデータの交渉は上手く行ったらしいんだけど、向こう側が私と会ってみたいって言ってるみたい」
私の答えに関わらず、データの交換は出来るそうなので、興味本位なのでしょう。私としては、日課を終えたらマギスト探検をしたいので、優先も拒否もしないと返しておきました。
そわそわしながら日課を終え、ようやく、ようやくです。ようやくマギストを隅から隅まで探検出来る時間になりました。
早速マギストのポータルに移動し、ヤタと信楽を召喚してから周囲を見渡しました。ここは魔法都市ですから、従魔を出すべきです。
街の北側には時計塔があり、南側には先端がドーム状になっている正体不明の塔があります。ここは魔法都市で、ここには魔法学院があるので、あの時計塔は魔法に関わる何かの施設があるはずです。時計塔と魔法系のものは必ず関わりがあると紀元前から決まっているのですから。
そして、南側の塔ですが、魔法に関係する塔となると、何でしょうかね。いろいろとあるので断定は出来ませんが、先端がドーム状になっているのが関係しているはずです。ここでこうして考えているのも楽しいですが、探検出来るのですから、探検してしまいましょう。
そんなわけで私は北へと向かうことにしました。理由は簡単です。好きなものをいつ食べるのかは決めていませんが、どこを探検しても魔法関連のはずなので、順番を気にする必要がありません。なら、目立つものから行けばいいんですよ。
まだ数人ですが、プレイヤーを見かけます。流石に開放してから数日経っているので不思議ではありませんね。ボス自体、簡単ではありませんでしたが、初見で突破しましたし。
よくいる町人風NPCの他に、魔法使いのようなNPCがいます。前にも見かけた記憶はありますが、北に行けば行くにつれ増えるので、あの時計塔は魔法学院に関係しているのかもしれません。それを踏まえた上でよく見てみると、ローブや帽子や服など、付いている場所はバラバラですが、同じような紋章を付けている人が多いですね。あれが魔法学院の校章の可能性があります。あの紋章が付いている建物があったら、近付けばいいわけなので、良い目印です。
今度は杖や本を売っている店が増えましたね。流石は魔法都市です。ちょっと覗いてみたところ、ヤタや信楽に眉をひそめることはなく、慣れた対応をしています。やはり、従魔を連れて来る客が多いのでしょう。特にいたずらをしなければ問題ないそうです。ちなみに、並んでいる杖ですが、店売りらしい性能です。けれど、種類が凄いです。杖らしい杖以外にも、花だったり箒だったり、メイスだったりと、自分にあった武器種を改めて探すことも出来そうですね。ちなみに、本に関してですが、手にとったり流し見出来る物に関しては図書館で見ることが出来る範囲の物でした。高そうな本などの明らかになにかあるような本には触れることすら出来なかったので、あれが買えれば凄い何かが手に入ったりしそうですね。もしも、HTOがジョブ制だったら特殊ジョブの条件だったりしそうですが、スキルやアーツの開放条件というのがいいところでしょう。
とうとう時計塔の麓が見えそうな位置までやってきました。まぁ、建物が多いので根本は見えませんが、目の前にある門から塀の向こうへ行ければ時計塔まで行くことは簡単でしょう。
「たのもー」
「何だ君は?」
守衛さんに声をかけてみましたが、さて、どうしましょう。
「えーと、観光です」
「そうか。ここは関係者以外立ち入り禁止だ。南の天文台へ行った方がいいぞ」
……あの塔は天文台でしたか。まぁ、星も魔法と関係が深いと紀元前から決まっていますからね。
「えーと、間違えました。見学です。主に入学を視野に入れてます」
「そうか、入学希望者か。なら、これに手を当ててくれ」
そう言いながら守衛さんが取り出したのは謎の丸い水晶です。うーむ、前に魔術ギルドで見た気がしますね。触れた結果、様々な色の円が現れました。前と同じような結果だと思いますが、少し豪華になっているのはスキルが増えているからでしょう。
「……ほう、そうかそうか。それじゃあこれを事務局まで持っていってくれ」
守衛さんが水晶に羊皮紙を当てるとよくわからない紋章が焼き付けられました。識別しても何も出てこないので、魔法陣ではないようです。羊皮紙をもらって中に入るとミニマップに学園内が詳しく表示されるようになったので、道に迷うことはなさそうです。
多くの個性あふれる魔法使いを見ながら事務局へと向かいました。いろいろと気になることはありますが、まずは入学手続きを済ませなければいけません。ええ、これが最優先です。
「たのもー」
「こちらでは騒がないようお願いします」
「あ、すみません」
怒られてしまいました。まぁ、道場ではないので、しかたないことですね。大人しく事務員さんの元へ向かい、羊皮紙を渡しました。
「これなんですけど」
「はい、確認します」
受付の向こう側で何かしているようですが、色とりどりに光っていることしかわかりません。そして、謎の作業が終わると、1枚のカードのようなものを手渡されました。
「おめでとうございます。入学が認められました。更に、所持しているスキルから基本クラスと下級クラスの単位は取得済みとして扱われます」
ちなみに、もらったカードはポリゴンとなり消えました。メニューのステータスのところに記述が増えたので、冒険者ギルドやら図書館やらと同じ仕組みですね。
「あくまでも単位を取得したという扱いなので、場合によっては別途修了試験を受ける必要があります」
なるほど。出来るとは思うけど確認するよ、ということですね。
「こちらは当校の校章です。好きな場所に何度でも転写出来るので、お好きな場所に付けてください」
どこにしましょうかね。ローブに大きく付けるのもいいですし、スカートの端に小さくつけるのもありです。あとは、ブラウスの胸のあたりも定番ですね。
「よし、ここにします」
アクセサリである小さなネクタイの下の方に付けることにしました。ちなみにこれ、単位を取得したクラスに応じて多少の変化があるそうです。基本形が校章なので、見比べればわかりそうですが、小さくなってしまったので、そのうちでいいでしょう。
「それでは、学院内の施設の利用方法について説明します」
説明を聞いたところ、魔法使い同士の腕試しや魔法の確認が出来る訓練場、学院関連のクエストが受けられる事務局、対価を支払うことで学生を傭兵として雇える戦技科、師事することが出来る魔法使いのいる職員寮などがあるそうです。
学生を傭兵として雇った場合、帰還用の特殊装備をもたせるという理由で大金を支払い、NPCのHPが全損すると学院の医務室に転送されるという設定があるそうです。ちなみに、その大金は対価とは別なので、私が雇うことはないでしょう。魔法使いへの師事は興味がありますが、慎重に選ぶ必要があるので、様子見です。
そして、あの時計塔ですが、な、なんと、ダンジョンになっているとのことです。入るのにはある程度クエストを行う必要があるそうですが、基本クラスの単位を持っていれば1階に入ることが出来るそうです。それ以降は別途クエストを受ける必要があるらしいので、それを受けましょう。
ピコン!
――――クエスト【魔導の深淵・入門編】――――
時計塔1Fに出現するモンスター討伐 【0/100】
―――――――――――――――――――――
なんともわかりやすいクエストですね。簡単に話を聞いたところ、1階には1種類のMOBしか出ないそうなので、さくっと進められそうな気がします。
一応、ダンジョンへ行く前に出来る限り歩きまわって情報収集をしたところ、何をするにしてもこの入門編をクリアしなければいけないようです。何度か、「あの程度のモンスター、楽に倒せるよな」といったことを言われたので、実力を証明しなければいけないようです。ちなみに、単位だけでは頭でっかちと思われるそうです。
やってきました時計塔ダンジョンの入り口です。大きな木製と思われる扉の前にも守衛さんがいますね。どうやら立ち入り許可の確認をしているようです。
「奥の方には2階へ行く階段があるけど、その校章じゃ扉が開かないから気をつけてくれよ」
ふむ、きっと魔法的な仕掛けがあるんですね。校章に追加される図柄で取得単位やダンジョンの立ち入り許可がわかるとは、中々に味がある真似をしますねぇ。
ダンジョンに行く前の準備としてヤタと信楽を送還しました。流石に、初見の場所に連れて行く気はありませんから。最後に、クエストの討伐カウンターを表示し、足を踏み入れました。
時計塔の中は何というか、埃っぽいですね。外見と同じ様に石を積み上げて作ったように見えますが、所々に木材も見えます。まぁ、建築にも詳しくないのでそういうものだと思っておきましょう。
壁にランプらしきものの残骸しかないのに少し薄暗い程度で済んでいるのは梟の目のお陰なのでしょうね。
「【光源】」
薄暗い程度と言っても暗ければ見落としがありますから、明かりは必要です。出番が少ないので忘れがちな探索魔法ですが、これはとても便利なので必須と言っても過言ではありませんね。頭の上に光の玉が出るので、手もふさがりませんし。
入ってすぐの場所は小部屋になっており、机というかカウンターというか、そんなかんじだった物の残骸が転がっています。入り口の反対側にある扉は片方だけ閉まっていますが、私のSTRでも蹴り飛ばせば壊せそうな壊れ具合です。
今後通りやすくするために壊しておきましょうかね。
『GIGIGI』
そんなことを考えていると、明かりが漏れているため、何かが寄ってきたようです。音のような声ですが、半分だけ空いているとはいえ、壊れかけの扉が邪魔になっており、何が近付いてきているのかはわかりません。
こちらから出てって先手を取られるのもあれなので、こちらへ来るまで待ってみましょう。
謎の音のような声が次第に大きくなり、木目のある手が扉を掴みました。そのまま壊れかけの扉を破壊したので、近付いてきたものがよく見えます。
……棚、ですかね。背面にボロボロの板があり、何冊か本が入っているので、本棚なのでしょう。識別してみると【シェルファー】という名前のMOBでした。棚に太い手足が生えており、顔らしき位置に表情の書かれた開いたページがくっついています。移動速度はゆっくりで、属性もないので魔法使いがソロでも簡単に倒せそうですね。
「【フレイムランス】」
物は試しと炎の槍を1発放ちました。すると、それだけでMOBがポリゴンとなり散りました。情報収集した時に明らかに雑魚MOBと取れる表現が使われていたので、もしかしてと思いましたが、ここまで弱いとは……。
ちなみに、ドロップは魔石(小)が1つです。
それでは気を取り直して進みましょう。シェルファーが来た方は大広間となっており、椅子や机の残骸が散らばっており、奥には2階へ続く枝分かれした階段があります。ただ、閉ざされてはいないので、1階の上部下部とかそういう区分けなのかもしれません。
『GIGIGIGI』
やはり目を背けるわけにはいきませんね。ええ、大広間なのでそうは感じませんが、ここはある意味モンスターハウスですね。まったく、入ってすぐの小部屋の先がこれとは、先が思いやられますね。
「【マジックランス】」
正面にいる5体へ無色なのに光る槍を放ちました。マルチロックは練習したかいもあって視界内のMOBになら当てられます。流石に別個体の違う部位への指定や振り向きながら複数のMOBに対しては無理ですが。おや、リザルトに魔石(小)とは違うアイテムも……、詳細は後にしましょう。ゆっくりしていては他のシェルファーに近付かれてしまいます。
ちょうどいいので近付かせてしまいましょう。その上で、何かの残骸を足場に立体機動や虚空移動を使い、なるべく多くのMOBを1ヵ所にまとめます。
「【フレアボム】」
そしてこれを準備しなければいけません。流石に杖で片手がふさがっているので何個も持って飛び回ることは出来ません。そのため、ボムは1個が限界です。はぐれている個体にはランス系を使って倒すので、全てをまとめるようなことはしません。
いい感じにMOBが集まったのでフレアボムを投げましょう。てい。
シェルファーの軍団にフレアボムがぶつかり、爆炎が広がりました。中級魔法のスキルレベル上げの方法に悩んでいましたが、ここはいい場所ですね。ボム系が出現した段階でディレイとクールタイムのカウントが始まるので、用意しておけば発動出来ずにこまることはありません。
ああ、MOBが1種類なので熟知のスキルレベル上げにも持ってこいですね。
………………
…………
……
大広間が綺麗になったのでドロップを確認しましょう。えーと、討伐のカウントが48で、魔石(小)が35個、ページの欠片という謎の収集品が40個、ランダム仮装袋が44個ですか。MOBを探す必要がなかったので効率はいいのかもしれませんが、動き回るだけの広さとMOBが溜まっていたから出来たことなので、そう何度もは出来そうにありませんね。次回からはボム系の用意だけしておいて小部屋にMOBが溜まっていたら投げ込むことにしましょう。
私はたいていフィールドをうろついているので気が付きませんでしたが、ボム系はダンジョン向きの魔法ですね。
さて、続きをしたいところですが、そろそろログアウトの時間です。
夜のログイン時間です。
テロン!
――――フレンドメッセージが一通届きました。――――
……ザインさんですか。まぁ、情報の受け渡しについてなので、ログインしていればいつでもいいと返信しましょう。明日からは学校があるので、詳しい理由は書きませんでしたが、夜に数時間しかログインしないはずですし。
いろいろとやりたいことはありますが、何にせよやることは一つ、クエストの続きです。あれを終わらせないと他のクエストを受けられそうにありませんから。
時計塔1階へとやってきました。
最初の小部屋の先にある扉は壊れたままなので、同じダンジョンなのでしょうか。まぁ、まだ人も少なそうなので、気にしなくてもいいでしょう。
「【マジックランス】」
最初の広間で復活していたシェルファーを倒し、探索を進めます。
時計塔1階の下部と思われる場所は最初の小部屋と次の大広間、そこから扉や廊下で大小様々な部屋へと繋がっています。
ボム系を使い玉一つ用意し、部屋の中の様子を伺ってから玉を投げ込むという方法で着実にカウントを稼ぎます。本棚の残骸に擬態していたら大変ですが、そんなことはないので安心して進めます。カウントが80になったので、上部にも行ってみましょうかね。これで2階への立ち入り許可を貰っても行き方がわからないとなっては意味がありませんから。
見て回った範囲では上部へ行く階段は大広間にしかありませんでした。非常階段の一つや二つあってもいいと思うのですが、窓も見当たらないのでそういうものなのでしょう。
上部へ移動するための階段の途中にいるのですが、ここから見る限り上部には部屋がないようです。学校の観客席のない体育館の2階部分の通路がかなり広がった感じですね。そして、階段の反対側、大広間の入り口の上に2階へと続く階段があります。閉ざされてはいますが、そう書いてあるので間違いないはずです。
私の頭上には光源があるのでよく目立つため、シェルファーがゆっくりと向かってきます。私の歩く速度以下の速さなので、近付かれる前に倒せますし、ボム系の玉を狙って投げつけることも出来ます。余裕を持って2階へ続く階段にある扉までやってきました。まぁ、押してもうんともすんとも言わないので、許可が必要なわけですね。
ここに来るまでに100体の討伐が終わったので、事務局へ行って報告しましょう。
ちなみに、ページの欠片が122個あるので、討伐数はそれ以上ですね。
「たの……、クエストの報告に来ました」
流石に事務局で大声を出すわけにはいきませんね。アイコンの出ているNPCのところで報告を済ませましょう。
「はい、確かに。それでは2階への立ち入り許可を書き加えるので校章を出してください」
「お願いします」
これ、場所によっては大変なことになりますよね。まぁ、私は小さいネクタイの先を出すだけなので困りませんけど。
NPCが羊皮紙を取り出し何かをすると校章の模様がほんの少し変わった気がします。
「2階にはシェルファーとは違うモンスターも住み着いています。そちらを倒して貰えれば、学院内に対して最低限の実力を持っていると示すことが出来ます。引き受けますか?」
「はい、もちろんです」
ピコン!
――――クエスト【魔導の深淵・入門編】――――
時計塔2Fに出現する特定のモンスター討伐 【0/100】
―――――――――――――――――――――
せめて特定のモンスターの名前くらいは出して欲しいのですが、シェルファーとは違うと言っているので、行けばわかるでしょう。ちょっと情報収集しようかと思ったのですが、あれくらいそんなことをしなくても倒せるような実力が必要とか言われてしまいましたよ。どうせまたランス系1発で倒せるようなMOBなのでしょう。それならさっさと……、うーん、微妙な時間ですね。まぁ、考えている時間があるのなら、その時間をクエストに使うべきですね。
時計塔1階の大広間へとやってきました。本来であれば、ここから奥にある階段を登り、戻るような位置にある扉へと向かうのですが、そんなことをする必要はないんですよ。なにせ、2階へ行くための扉は大広間の入り口の真上にあるのですから。
まずは準備にロックウォールを壁から3枚生やします。後は、助走距離を確保し、勢いを付けて飛び上がります。後は立体機動などの跳躍系スキルの恩恵を受けて壁を蹴り、最後に虚空移動を使って空中ジャンプです。これで上部の手すりに――
「ぐぇ」
手すりを掴むなり飛び越えるなり華麗に着地するなりするはずが、お腹の辺りをぶつける形になってしまいました。まぁ、勢い余ってそのまま上部の床へと転がり込んだので、成功したという事実は変わりません。
近くのシェルファーが寄ってくる前に例の扉へと触れると、2階へ移動しますか、というウィンドウが出てきたので、【はい】を押したところ、視界が暗転しました。
どうやら扉が開くのではなく、転移式のようです。2階の最初の部屋も1階同様小部屋ですね。【光源】は維持出来ているので、暗くて見えないということはありません。小部屋の作りも1階と同じような気がします。ええ、一応は閉まっている壊れかけの扉もあるので、隙間から覗いてみましょう。
じーーーー
ふむ、隙間から覗くと、頭の上にある光源が意味を成さないので何も見えませんね。しかたありません、扉を開け放ちましょう。
えい。
行儀悪く壊れかけの扉を蹴り飛ばしました。すると、扉が倒れ、大きな音と埃を立てて倒れました。小部屋の次は大広間で、これも1階と同じようですね。奥には螺旋階段があり、そのまま3階へ続く扉へと繋がっています。今度は二層式ではないようですね。
えーと、MOBは……、シェルファーはいるのですが、今度の討伐対象は別のMOBなので……、おや?
『GIGIGI』
『HUWAAA』
あー、あれですね。影はありませんが、識別の対象に取れるので、位置を把握することが出来るのはありがたいことです。
「【フレイムランス】」
近付いてくるシェルファーと新しいMOB、【ダストクラウド】という埃の塊のようなMOBに炎の槍を放ちました。何せ、ダストクラウドは風属性の極小なので、火属性の効きが少しだけいいんですよ。まぁ、耐性のある属性でもない限りはどの属性でも倒せそうですが。
クエストのカウントも進んだので対象のMOBはダストクラウドで間違いありませんね。えーと、ドロップは……おや、魔力の欠片ですか。初めて見るアイテムですね。使い道がよくわからないので、とりあえず保留のまま放置ですね。
1階と同じ様に狩りをしようと思ったのですが、このダストクラウド、足が速いんですよ。ええ、足はありませんが、移動速度がシェルファーよりも速いので面倒ですね。まぁ、シェルファーはまとめてボム系で倒して、ダストクラウドには個別でランス系を使うことにしましょう。小部屋にまとまって出現していた場合は逃げられる前にボム系を投げ込めばいいので、苦労はしませんし。
ダストクラウドを20体倒したところで、そろそろ時間なのでログアウトしましょう。
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