4-23
26日土曜日、今日は土の姫巫女の護衛クエストがあります。流石に今日明日のクエストで魔法の下級スキルをカンストさせることは無理だと思うので、出来る限りスキルレベルを上げる予定です。
ハヅチに預けていた装備を返してもらったので、浴衣から装備を戻しましょう。
午後の護衛クエストは移動を護衛するものなので、私達守り人の里陣営のプレイヤーはあちらこちらに分布して影から護衛するのですが、せっかくなので昨日覚えた魔法を片っ端から使ってみることにしました。
炎魔法のエクスプロージョンは大きい爆発が起こり、氷魔法のダイアモンドダストは氷の竜巻が、嵐魔法のテンペストは名前の通り嵐で、雷魔法のサンダーは範囲内にいくつもの雷が落ちますが、中心に近い場所ほど太い雷が落ちます。さらに、雷が落ちた場所から放電するようです。聖魔法のホーリーや冥魔法のダークネスは光や闇が広がる魔法なので、やはりこちらも名前の通りですね。
範囲もかなり広いので雑魚MOBを一掃するときには便利そうです。
今回はプレイヤーキラーによる襲撃はなかったので、無事に護衛しきることが出来ました。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――
【付与魔法】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【強化付与】 SP5
【弱体付与】 SP5
これらのスキルが取得出来ます。
――――――――――――――――――――――――――――――
複数の付与を絶やさないように使っていたため今週で一番上ったスキルかもしれませんね。詳細を確認したいのですが、忍者さんが何やら不穏なことを口走り始めました。
「我々に協力してくれている皆の衆に報告があるでござる。既に知っている者もいるかも知れないでござるが、龍の封印解放を狙っていた者達の正体を掴んだでござる」
長い話を聞き流すと、どうやらこの城の敷地内の中心にある城、あれが無常城で、城主が闇落ちしてしまったそうです。詳しくは更新されたメニューにあるイベントの項目のストーリーを見ればいいそうです。それによると、封龍の儀式に細工をしてあったそうで、このまま全ての封龍の儀式が成功しても、終わった瞬間に悪しき龍が復活してしまうそうです。ただ、儀式をしなくても復活してしまうので、こうなったら全ての儀式を行い、弱体化した状態で復活させ、再度封印しなければいけないとか。つまり、明日の夜のクエスト後に、ボス戦が確定しました。これは消耗品の準備に忙しくなりそうです。
それではスキルの確認をしましょう。
まず強化付与ですが、これはバフ系の付与魔法を範囲魔法にすることが出来るそうです。範囲魔法にすると、魔法の名前の最後に【エリア】が付くそうなので、声に出す時は注意しましょう。
次に弱体付与ですが、これはデバフ系の付与魔法を範囲魔法にすることが出来るそうです。どうせなら一つにまとめて欲しいものです。
そして、両方とも敵味方などの対象を選別出来るそうなので、レイドの時には便利そうですね。
早速両方とも取ってしまいましょう。
ポチッとな。
バフの方は時雨達と一緒に行動する時に使うと思いますが、デバフはあまり使わないんですよね。まぁ、あるに越したことはないですが。
「リーゼロッテ、ちょっといいかしら?」
時雨達はそれぞれの用事を済ませに行ったので、今ここにはいません。そのため、声をかけてくる人に心当たりがなかったので、声の主を確認すると、ユリアさんでした。
「どうしました? ボス戦の要請なら受けたはずですけど」
声をかけてくる人に心当たりはありませんでしたし、声をかけてくる用事にも心当たりがありません。一体何のようでしょうか。
「答えたくなければ答えなくてもいいのだけれど、無魔法のスキルレベルを教えて貰えないかしら?」
無魔法ですか。まぁ、持っていることは知られていますから、教えない理由も教える理由もありませんね。
「えーと、今のクエストで41になりました」
「そう。結構高いのね。もしよければ、一つ協力してもらえないかしら?」
「内容と対価によります」
私とユリアさんは安請け合いをする仲ではないので、しっかりと交渉しないといけません。
「内容は【封龍の印籠】の作成よ。私も協力するのだけれど、対価は最後のクエストの難易度の低下かしら」
「なるほど、それがボス戦でプレイヤーを有利にする何か、ですか」
「そういうことよ」
「そうですか。それで、必要な物は何ですか?」
無魔法が何か関係しているようですが、流石にスキルを捧げるわけではないでしょうし、予想が付きませんね。
「多少の時間とMPよ。手伝ってくれるのなら、ついて来てちょうだい」
ユリアさんに連れられナツエドの街を歩いています。どこへ向かっているのかわからないので、大人しくしようか迷っています。
「ここよ」
そう言って案内された場所は冒険者ギルドですね。ナツエドでは和風の造りとなっていますが、機能面では何もかわりません。今のナツエドで数少ないお祭りに浮かれていない場所ですが、会議室でも借りるのでしょうか。
ユリアさんが赤を基調とした鎧の人と何かを話していますね。その後は会議室へと連れて行かれると思ったのですが、他では見たことのない地下へと連れ込まれました。最後にたどり着いた部屋は、何というか、不気味ですね。陰陽師物に出てきそうな文字と人形で壁や床、天井までもが埋め尽くされています。
その部屋には赤を基調とした鎧の一団と、ザインさん達がいました。ユリアさんだけが私を連れて行くために別行動をしていたようです。
「初めまして、リーゼロッテさん、私はフィーネと申します。……えっと、初めましてで大丈夫ですか? 何だか見たことある気がするのですが」
リーダーだと思わしき人が挨拶してきましたが、私の記憶にはないので初めましてのはずです。
「初めましてだと思いますよ。どうも、リーゼロッテです」
「この度はご協力ありがとうございます」
「印籠を作るって話は聞いてるんですけど、何やるんですか?」
私だけ完全な部外者な気がするので、出来ればさっさと終わらせたいですね。
「この部屋には印籠を作るための特殊な魔法を掛けてあります。そして、所定の位置に素材と各属性の魔法を持ったプレイヤーを配置することで印籠が完成します」
ちょっと気になったので魔力視で見てみると凄いことになっており、目が痛くなりそうです。
「そうですか。ではちゃっちゃと始めますか?」
「ええ。ではお願いします」
印籠を作るのに使う属性と同じだけのプレイヤーが必要らしく、対応する魔法のスキルレベルが高いほうが、より効果の高い印籠を作ることが出来るそうです。無魔法はなくても作れるそうですが、どうせならいいものをということで声をかけることにしたらしいです。
巻物を持ったフィーネさんと一緒に中心に立ち、その前後には光と闇の担当の人が、左右には雷と鉄の担当の人が、そして、その更に外側には4属性を担当している人が立ちました。立ち位置は大きな円が書いてあるのでわかりやすいですね。そして、フィーネさんが何かを操作すると、周囲の文字や人形が動き始めました。
光の玉に包まれた素材がフィーネさんから出てきたので、これが必要素材なのでしょう。後はそれぞれのプレイヤーから担当した魔法と同じ色の光が出てきました。私はもちろん無色なのに光る謎の光です。決して一部を隠す白い光の線ではありません。
それぞれがフィーネさんの手元に集まり、一際強く輝き視界を埋め尽くしました。
光が収まると部屋中に配置されていた文字や人形がなくなり、フィーネさんが龍の描かれた印籠を手にしていました。
「出来ました。みなさん、ありがとうございます」
出来てしまうとあっけないものですね。後はボスの情報が見つかれば事前に対策を取れますが、その辺りはザインさん達が調べるでしょう。前に里の偉い人が教えてくれた情報もあるので、探せば見つかりそうですし。
「それじゃ、私は用済みですよね」
「少し待っていただけますか? 前にうちの育成部門がお世話になったので、お礼をしたいのですが」
「?」
はて、何のことでしょうか。そもそも最前線のクランとの関わりはザインさん達くらいしかないのですが。うーむ。
「第二陣歓迎会の時に、育成部門の隊長の弟とその友達がPKに襲われたのですが。……確か、アルフレッドという名前です」
「まったく記憶にないです」
何かそのようなこともあった気もしなくもありませんが、その名前に覚えはないですね。そのプレイヤーの名前を覚えていないのであれば、その出来事はなかったも同然です。興味を抱かなかった相手ですから、関わることもありません。
「そ、そうですか」
話もここまでのようなので、装備を浴衣に切り替え、お祭りを回りましょうかね。ヤタと信楽も召喚し、準備完了です。
「リーゼロッテ、その浴衣似合ってるな」
「ありがとうございます」
そう声を掛けてきたのは部屋の外にいたザインさんでした。女の子が着替えたらすぐに褒めるなんて、こういうのが精神的イケメンというやつなのでしょうか。
「ちなみに、褒めても何も出ませんよ」
「そうだろうな。ちなみに、それはハヅチ君が作ったのか?」
「そうですよ。よくわかりましたね」
ナツエドではステータス補正のない浴衣が売っているので、そちらで買ったという可能性もありましたが、何か違いを見抜いたようです。流石は最前線のプレイヤーですね。
「理由は秘密さ」
「そうですか。では私は……調べ物をしてきます」
昨日は遅い時間までお祭りを回っていました。そこで、今回は別のことをしましょう。ちょうど守り人の里の書庫に入れるようになっているので、今知ったことについて調べてみると面白いかもしれません。
「ナツエドに図書館でもあったのか?」
「いえ、守り人の里に書庫があったので、そこに行きます」
その瞬間、ザインさんの目つきが変わりました。ふむ、どうやら書庫の存在を知らなかったようですね。
「リーゼロッテ、すまないが書庫へ立ち入る条件を教えてもらえないだろうか」
「聞いたら案内してくれたので、知りません」
流石に聞いていないということもなさそうですし、何かしらの条件があるのでしょう。既に条件をみたしているらしい私は、それを調べることは出来ません。ザインさんには自分達で何とかしてもらいましょう。
守り人の里の書庫へとやって来ました。一度目はお地蔵様のところにある隠し通路を使いましたが、二度目からは守り人の里でメニューを操作すれば一瞬で移動できます。こういう点は楽でいいですよね。フルダイブだからって何をするにも体を動かさなければいけないという決まりはないのですよ。
では、検索機能を使い【封龍の印籠】について調べてみました。その結果、フレーバー以上のことはわかりませんでした。効果がわかればと思ったのですが、それはボス戦が始まってからですね。
次はボスについて調べようと思ったのですが、まだ名前を知らないんですよね。【悪しき龍】をキーワードにしても最初のストーリー以外出てきませんし。あ、これを入れてみましょう。
さて、結果はどうでしょうか。
………………
…………
……
ほうほう、基本的には姫巫女の儀式についてでしたが、最後の方に出てきましたよ。【封龍の儀】で調べた結果、封印された龍の名前がわかりました。それは――。
「本当にあったんだな」
声がしたので入口の方を見てみるとザインさんがやってきました。どうやら一人でやって来たようなので、浴衣の合わせを掴みながら体の前で手を交差し、怯えた雰囲気を醸し出してみました。
「ザ……ザイン……さん」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。べ、別に何もしないから」
うーむ、これをするにはユリアさんとか他の人も一緒でないと意味がないですね。
「ザインさんは何を調べに来たんですか? 私は【ナツエオロチ】について調べるつもりですけど」
「【ナツエオロチ】?」
「ええ、今わかったんですけど、封印された龍の名前です」
ちょうどザインさんが来る直前にわかったことです。まぁ、ザインさんの目的もそれだとは思いますが、ここは出鼻をくじいておきましょう。
「そうか。それがこのイベントのボスか。ありがとう教えてくれて。手間が省けたよ」
「どういたしまして。それでは詳細を調べるのはお任せしますね。私よりも慣れてそうですし」
私はあくまでも言語学のスキルレベルを上げに来たのであって、ボスについて調べるのはおまけでしかありません。なら、それを目的としている人に任せるのが一番です。
「そうか、がくぶる、探すぞ」
「拙者に任せるでござる」
ほへ? 今の今まで気が付きませんでした。まさか、ザインさんの他にもう一人いるとは……。
ちなみに、この人、【
二人がボスについて調べ始めたようなので、私は私のために探しものをします。
まずは【召喚】について調べましょう。【サモナーズー】も知らないとのことなので、調べておいて損はありません。
何冊か引っかかりましたが、従魔も召喚するものなので、従魔関連の本も引っかかってしまいますね。とりえず順番に目を通しますが、本のタイトルと目次からしても召喚スキルに関係している雰囲気はありません。
何冊目かの手に取った本は、MOBに関する本のようですね。センファスト周辺で従えることの出来る通常MOBが載っていますから。ただ、何を食べさせればいいとか、そういった情報は載っていません。
……おや? 最後には別のことが書いてありますね。召喚獣を従える方法の一つとして、力で従えるというものがあり、単独で勝つ必要があるとか。まぁよくある条件ですが、単独というのに従魔は含まれるんですかね。まぁ、あくまでも一つなので、他にもあるんでしょうけど。流石に召喚獣のいる場所までは載っていませんが、その召喚獣と関連している場所に縛り付けられていると書かれているので、何か妙なものがある場所にいるのでしょう。
さて、多少の成果があったことにして、ログアウトします。
夜のログインの時間です。今日は土の姫巫女の護衛なので、襲ってくる忍者型MOBは風属性です。そのため、主に炎魔法を使うことになりますね。付与の割り振りは対象別ではなく、効果別にすることになりました。具体的に言うと、私が範囲付与が出来るようになったせいだと思っていました。ただ、グリモアはよく付与を使っていたとかで、最初の護衛クエストの後に取得していたそうです。それならそうと言ってくれればよかったのですが、別の対象に同じ魔法を使ったり、別々の魔法を使ったり、いろいろ行っていたため、言うに言えなかったそうです。
グリモアに詳しく聞いてみると、範囲付与の広さはスキルレベルが上がる毎に広げることが出来るのですが、あくまでも広さの最大値が増えるだけで、意図的に狭い範囲にすることに問題はないそうです。そのため、グリモアは範囲を狭め、一人に対してのみ範囲付与を使っていたとか。何気に器用なことをしていますよね。それを言ったらマルチロックも十分に器用だと独自の世界観で言われましたが、プレイスタイル魔女には必須技能ですよ。練習もしましたし。
クエスト中に打ち漏らしたMOBに関しては範囲デバフを使い中央付近にいる姫巫女の陣営のプレイヤーに任せることにしました。
今回もプレイヤーキラーが襲ってきましたが、あれも無常城の陣営なのでしょうか。とりあえず、中途半端なプレイヤーキラーだったので手こずることはありませんでしたけど。
クエストの後でザインさんからナツエオロチの現時点で判明している情報が各クランリーダーに公開されました。情報の共有は各自でやって欲しいとのことだったのですが、判明といっても属性の話以外は、どの情報も憶測の域を出ないそうです。完全体として復活すると倒しても延々と再生するとか、何なんでしょうね。倒させる気があるのか、はなはだ疑問ですよ。
情報の共有も終わったので、新しく覚えた治癒魔法の確認をします。LV40で覚えた治癒魔法はリジェネです。効果時間中、HPが回復し続けるそうで、時間と回復量は使用者のINTが関わるそうです。ここまで来て蘇生魔法を覚えないということは中級魔法で覚えるのか心配ですよ。まぁ、事前に使える自動蘇生じゃないと私には意味がありませんが。
「リーゼロッテ、ちょっといいか?」
「ん? どしたの?」
ハヅチが何かを確認しながら声をかけてきました。
「悪いんだが、ポーション多めに作ってくれねーか? 今回のイベントで地味に消費したし、ボスのことを考えると、用意しときたいんだ」
「いいけど、素材ある?」
「それは大丈夫だ」
まぁ日課の延長ですし、クランハウスへ引きこもりましょうかね。
装備の耐久値は回復したばかりなので、今回は大丈夫でしょう。杖の方は、覚えるレベルの高い魔法の方が消耗が激しいようで、まだ大丈夫だとは思いますが、イベント後には回復が必要になりそうなくらいです。
念の為シェリスさんに連絡してみると、ボス戦があるものとして準備しているプレイヤーが多く、依頼が殺到しているようです。ですが、明日の午後の護衛クエストには間に合いそうということです。対価はいつもの通りでいいそうですが、ハイヒールのスクロールなんてそんなに使うんですかね。
杖の修理を依頼しながらレシピ再現で一気にポーションを作ります。そのため、ハヅチが用意した材料を使い切るのにそこまでの時間は必要ありません。
まぁ、せっかくの機会ということで、みんなが新しい食材を持ち込んで来たので、いろいろ作ってみることにしたため、少し長引きましたが特にやることもなかったので問題ないでしょう。
ナツエドではお米や味噌や醤油が見つかったようで、作れるものに和食が増えました。ですが、イベント中にしか手に入らないので、和風の街を見つけないことには再入荷は期待出来ません。さらにいえば、持ち運びの問題から人気があるのはおにぎりです。
「……誰か、梅干し持ってる?」
私のその問に対する答えは沈黙でした。どうやら見つかっていないようです。残念なので銀シャリを量産しておきました。
「そうそうリーゼロッテさん、この米とか大豆製品ですけど、農業系のプレイヤーが栽培手段確立しようとしてるので、手に入らないことはないと思いますよ。」
「へー、農業出来るんだ」
「そうなんですよ。でも、伝はないのでNPCが売ってる街を見つけた方が早いとは思いますけど」
ブレイクは白米好きなのでしょうか。私はこだわりがないので、あまり気にしてはいません。
「なるほどね。さーて、他にリクエストある?」
「我は……大地の肉を業火で……、味噌焼きおにぎりをお願いします」
これはまた美味しそうな物をリクエストしますね。グリモアの納得が行くように作ってみた結果、いい感じに出来ましたよ。その後はすぐに量産することになりましたけど、なかなかの人気ですね。
最後に不滅の水を小分けにして渡したので、取り急ぎ補充しに行きました。
不滅の水を補充した後、時間があまったので守り人の里の書庫を訪れました。もちろん浴衣に着替えてです。来るのが遅かったため、先客が二名いたので簡単な挨拶をしてから調べ物を始めました。
「うーん、ナツエドには召喚獣はいないのかな」
前回の続きをしていますが、イベント限定召喚獣とかはいないようですね。今の所表示されているイベント報酬にもないので、今回はいないのでしょう。
「リーゼロッテは召喚獣を探しているのか?」
そう声をかけてきたのは先客の一人であるザインさんです。まさか独り言を聞かれていたとは。
「そうですよ。まぁ、影も形も見つかっていませんけど」
「サモナー系のクランも確定情報を持っていないらしいな」
お互いに何の情報もないようで、話が続くこともなく、会話は終了しました。さて、検索に引っかかった本は読み終えたので、次は何を調べましょうかね。ここは薄暗いので、ここにいるだけで梟の目のスキルレベルを上げることは出来ますが、流石に何かをしていないと飽きるので、何かはしたいです。
特にこれといったものがなかったので、次の4つの街について検索してみましたが、イベントで発表されたこと以上のことは何もわかりませんでした。
それではそろそろログアウトです。
日曜日の午後、今日はイベント最終日であり、ボス戦がある日です。
ログインすると無事に杖の修理が終わっていたので、安心して鉄の姫巫女の移動を護衛することが出来ます。
今日の夜の忍者型MOBは雷属性になるはずなので、時雨達は大変そうですね。
まずは午後の護衛クエストですが、何の問題もなく終了しました。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――
【鷹の目】がLV30MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【遠望視】 SP3
【鷹の目】【火魔法】がLV30MAXになったため、関連スキルが開放されました。
【魔眼】 SP3
これらのスキルが取得出来ます。
――――――――――――――――――――――――――――――
イベント中はあっという間にスキルレベルが上がりますね。まぁ、パッシブ系だというのも理由の一つでしょう。まず、この遠望視というのは、簡単に言えばズームが出来るスキルのようです。一部のスキルを併用することが出来るそうなので、遠距離からの識別が出来ます。
次に魔眼ですが、何とかの目スキルと魔眼のアーツを開放する条件のスキル一つをカンストさせれば取得できるようです。効果としてはアーツを選択して、判定に成功すればその効果が発揮されるので、片目ずつとか出来ない限り、複数同時に使うことは出来なそうですね。
両方共取得して魔眼のアーツ確認をしましょう。
まず、火魔法で開放されたアーツは発火眼で、火属性の継続ダメージを与えるアーツです。水魔法で開放されたアーツは水幕眼と言って、相手の視界に水の幕をかけて見えずらくするそうです。風魔法では風鎖眼と言って、風の鎖に縛られているかのように、動きに制限を加えるそうです。そして、土魔法では石化眼でした。これは説明不要ですが、成功率が低いと念押しされていますし、成功しても徐々に石化するそうで、そこまで強いわけではないようです。
恐らくですが、状態異常耐性系のスキルでもアーツが開放されそうですね。
さて、これは目が疼きます。
魔眼は条件的にグリモアも取得していそうですが、こんなにも面白そうなスキル、教えてくれてもよかったのに。まぁ、攻略サイトに載っていそうな条件ですが。
一度全員でクランハウスへと戻り、消耗品の確認をしました。私は前のレイドの時に渡された消耗品がほぼ残っており、MPポーションだけ多めに受け取りました。不滅の水も結構な数が戻ってきましたが、これは瓶さえあればいくらでも作れます。
さて、まだ補充は続いていますが、……ふむ、終わっていますね。
それでは開いた手で顔を覆い、視界を確保した上で少し苦しそうにしながらグリモアへと迫ります。
「グ、グリモア」
「汝、……何が?」
グリモアはソファーに座っているので、もう片方の手を肩に置いて少し力を入れます。
「目が疼く」
そう呟きながら魔眼のアーツ【風鎖眼】を発動します。魔眼の成否はINT参照でいいんですかね。これは拘束系なのでSTRとかも参照しそうですし。まぁ、成功したところでここではエフェクトが入るだけで拘束することは出来ません。クランハウスなので設定次第では出来るそうですが、戦えるような設定はしてありませんしね。
けれど、グリモアは独自の世界観を持っているため、この雰囲気をぶち壊す気はないようで、器用に押し倒され、緑がかった黒髪がいい具合に広がりました。
「な、汝、その瞳は……」
どうやら魔眼の発動中は何かしらの変化があるようですね。どう変化しているのか後で聞いてみましょう。
「魔眼だよ。グリモアも知ってるんじゃない?」
「汝もその力を手に入れたのか。だが、力に呑まれては……」
少し怯えた表情をしてくれるとは、とてもいいですよ。
顔を覆っていた手でグリモアの頬へと触れながら舌なめずりを――。
「あいた」
誰ですか、私の後頭部を叩いたのは。いくらゲームで痛みがないとはいえ、衝撃はあるんですよ。それにしても、痛みとか触覚とか衝撃とか痺れとか、どうやって線引してるんでしょうかね。
「はいはい、悪巫山戯はそこまでね。何かに目覚めそうな人が何人かいるし」
おのれ、時雨め。
リッカと影子にはこれ以上すると刺激が強いかも知れないので、しかたありませんね。
「いやー、せっかく取得したんだからやってみたいじゃん。ところでさ、魔眼ってどんな変化するの?」
「う、うむ。魔眼はその属性の色へと変化を遂げる。……この様に」
グリモアは片手で顔を覆い、もう片方の手を前へと突き出しながら風鎖眼を発動しました。すると、グリモアの瞳が怪しく光りながらも緑色へと変化しました。私の瞳は翠色なのであまり変わらないように見えますが、怪しく光るので魔眼の発動がよくわかりますね。それでは。
「う……動けない」
グリモアも乗ってくれたのですからここは乗っておくべきでしょう。ここからどう展開するのか楽しみです。
「我は力に呑まれぬ」
それだけ言うと魔眼を解除し、元の金と赤のオッドアイへと戻りました。
私の記憶が正しければ前は金色の瞳だけだったと思うのですが、課金してオッドアイにしたのでしょう。最初のキャラメイクではオッドアイに出来なかったはずですし。
それでは本題ではありませんが、ついでの話をしましょう。
「やっぱ麻痺とか睡眠の魔眼も欲しいよね。鱗粉使って耐性スキルのレベル上げする?」
残念ながらレベル上げに使えるほどに所持している鱗粉は毒しかないのでシルクガを倒す必要があります。簡単に出来る手段が欲しいものですね。
「状態異常系の装備はあると便利なんだが、見つかってないから、鱗粉もポーションもたけーぞ」
消耗品の配布が終わったハヅチが話に入ってきました。その後ろでロウとブレイクが居辛そうな雰囲気を醸し出していますが、何かあったのでしょうか。
「そりゃ残念。でも状態異常系のポーションってあるんだ」
「鱗粉以外にも状態異常系の素材はあるからな」
「リーゼロッテは【採取】持ってないから見えないんでしょ」
何でも採取スキルを持っているとフィールドにある採集ポイントが見えるとかで、様々な素材が手に入るようです。これは豆知識らしいのですが、このゲームには【雑草】という名の何にも使えそうにない草があるそうです。これは今更でも採取を取るべきですかね。そもそも調合は大鍋をかき混ぜる魔女プレイがしたいだけなので、自力で素材を取るためのスキルが必要なのか悩みます。
「あれはモーションが長いから持ってないプレイヤー多いしな」
ハヅチが簡単に再現してくれましたが、左右を見て安全確認をし、薬草を掴んでから丁寧に引き抜き、最後に手にした薬草を天高く掲げています。……とったどー?
まぁ、いろいろ問題があったようで、短くはなったようですが、それでも不人気だそうです。
「我は我で技能の練度を上げるための手段を探そう」
どうやら時間のかかる採取や鱗粉は嫌なようです。まぁ、いくつ必要になるかわかりませんし、もっと簡単な方法を探したいですよね。
消耗品の配布は終わっているので、今は自由行動の時間です。スキルを使って遊んでいましたが、梟の目を上げるために書庫へ行きましょう。
書庫には誰もおらず、薄暗い中で一人本を読むことにしました。ナツエドのフィールドにいるMOBについての本があったので読んでいますが、【クリプトメランコリー】の花粉は本体から離れると効果が消えてしまうそうで、集めても意味がないそうです。まぁ、相手が病耐性を持っていないと効果が薄いので、集めて何かをする利点もあまりないですね。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました―――――――
【梟の目】がLV30MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【霊視】 SP3
【鷹の目】【梟の目】がLV30MAXになったため、複合スキルが開放されました。
【天之眼】 SP3
【鷹の目】【梟の目】【調教】がLV30MAXになったため、複合スキルが開放されました。
【憑依眼】 SP3
これらのスキルが取得出来ます。
――――――――――――――――――――――――――――――――
時間がかかりましたが何とか間に合いましたね。部屋の明かりを消すことが出来なかったので、脱いだ外套を頭から被って暗い中で本を読んだかいがありました。
梟からいきなり幽霊に行く理由がわかりませんが、霊視は実体を持たないMOBをしっかりと視認でき、隠れている者を見ることができるそうです。風属性のエレメント系でも見ずらいとは思わなかったのですが、霊体系のMOBは見ずらいのでしょうか。そのうち遭遇することもあると思うので、その時に確認しましょう。
次に
そして最後の憑依眼、これは他者の視点を借りることが出来るそうです。調教スキルが条件に入っているのでわかりやすいのですが、従魔の目からものを見ることが出来ます。これはヤタに翔んでもらって上空から観察出来ますね。他のプレイヤーの視点も許可が貰えれば借りれるそうで、使い道は多そうです。
そんなわけで、霊視と憑依眼だけを取得してログアウトしました。
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